牝馬の引退レースは買いと言うが
時季的にも今月あたりで「年齢に達した馬から順次引退です」というクラブ所有馬がたくさん出てくる。
すると古いファンなら「牝馬なら引退レースは買い」という格言が頭をよぎる。
これはちょっとムシのいい格言で、引退する牝馬なら3月は何でも買いかと言えばそんなことはない。
どちらかといえば、誰もが知る活躍牝馬がこの時期最後の花を咲かせた印象が強いため、自然と発生した「イメージ戦略」みたいなものだろう。
条件戦、そのまた下の未勝利戦でも、この時季の牝馬たちはいつ引退になるか「明日をも知れない」サバイバルを続けているのである。
OP牝馬の引退戦としてはあまりに時期最適?の重賞
最近の中山牝馬Sが、OP牝馬の引退花道として機能したかと言われれば、全くそんなことはない。
ここ10年だとわずかに09年キストゥヘヴン、07年マイネサマンサがここを勝って引退しているくらい。
近年の競馬はそんな感傷的では到底やっていけないらしい。
よって、馬券の狙いは「引退時期」がちらつく過去の実績馬より、春はヴィクトリアマイル、秋はエリザベス女王杯と今年1年の飛躍を誓う若い世代を買うのがよい。
ただし、ヴィクトリアマイルを狙うマイラー系よりも、エリザベス女王杯でも走れる中距離馬の成績が良いことには留意しておきたい。
さあ基礎体力表をみておこう
中山牝馬S2018有力馬の基礎体力は、順に
カワキタエンカ 81
ワンブレスアウェイ 69
ゲッカコウ 50〜75
トーセンビクトリー 56
エテルナミノル 50(平均)
フロンテアクイーン 44
マキシマムドパリ 28
エンジェルフェイス 25
となった。
いつも言うとおり、基礎体力はイコールスピードでも実力でもないのであしからず。
逆にマキシマムドパリのような牝馬が開花した裏には「厩舎力」ともいえる管理調教力の高さを感じる。
彼女は確かに3歳時から順調に使えた馬ではなかったはずだが、この長持ち具合、そしてついに重賞勝ちまで資質を引き出す厩舎スタッフの力には、素直に脱帽だ。
さて今回基礎体力上位の馬たちは、週末が良馬場でこそ狙える馬のようだ。
良馬場がかなえば絶対おもしろいカワキタエンカ
もし当日の芝が良ならば、大きく狙いたいのがカワキタエンカ(牝4・浜田厩舎)。
父ディープ、母父クロフネの個性派逃げ馬だが、ディープの影響は小さく、優先祖先は母父クロフネか4代前のマルゼンスキー。
毛色を見るにつけ、この馬の優先祖先はマルゼンスキーであるといえそうだ。
「仮想大外ダービー」伝説も今のファンにはただの昔話になってしまったマルゼンスキーだが、古い生産者の間では「世界で一番ニジンスキーの姿を受け継いだ種牡馬」として名高い。
もちろん血統表からもニジンスキーが優先祖先であるとハッキリ言え、種牡馬としても大変優秀な馬だった。
カワキタエンカの前肢がその先祖譲りの「外向」かどうかまではわからないが、スピードとその持続力、ちょっと個性的な逃げっぷりは、明らかに現代競馬から一歩枠を踏み出した感があり、見ていて微笑ましい。
マルゼンスキーだよといえば「ははぁ、なるほど」といってもらえる数少ない子孫の一頭である。
ワンブレスアウェイはOPでまだ全力を出せていない
人気的にはワンブレスアウェイ(牝5・古賀厩舎)の方が上位に来るのだろうか。
2代母ローミンレイチェル、母ストレイキャットともに大変優秀な繁殖で、とくに母が祖母から満点の体力を受け継いでいるのが大きい。
母の産駒がクズを出さず、軒並み走っているのはそのためである。
優先祖先は母系の2代前Storm Catもしくは4代前のClever Trickで、この馬の本質的な適性距離は、どのみちもう少し短めにあることは疑いない。
もしStorm Catがより優先だとすれば、Storm Catは父Storm Birdの影響が強い馬だから、デューハーストSなど芝のG1を勝ったStorm Bird同様、彼女の本質はマイラーだろうと思う。
また弥生賞のオブセッションとは違い、血統表上に唯一生じているNorthern Dancerのクロスは、父系のノーザンテーストがかなり薄めており、影響は最小限。
よって精神的な安定感が、距離の融通性につながっている。
ただ重馬場のマイル以上は心配の種。そんなスタミナ決着ならその下のゲッカコウ(牝5・高橋義博厩舎)あたりにもチャンスが巡ってくるかもしれない。