YouTubeの原稿以外では久しぶりの記事となるが、今回は少し前に寄せられたEQ指数に関するご質問にお答えしていく。とはいってもこの件に関しては私も現在試行錯誤中で明確な正解にはたどり着いていない。今のEQ指数が抱える課題と思っていただければ幸いだ。
距離千二と千四以上で初速設定が異なるのはなぜなのか
さてそのご質問とは見出しの通りで、私が開発したEQ指数において
○芝の距離千四以上のレースでは初速12.0を基準として12.4未満は0.2ずつ調整する
○芝千二のレースは初速11.4を基準として11.8未満は0.2ずつ調整する
というように現在初速の基準が2通りに分かれている。これはどういうことなのか、というのが今回のお問い合わせだ。
もうおわかりだろうが、初速の基準が2通りあるということは、出てくる指数をこのままでは単純比較できないということ。つまり現在は千四のスピード指数をもって千二のレースを予想すること、千四と千二の専門馬とのスピードを比較する、そのどちらも困難になっているのだ。
こう言うと賢い方は「いや基準が0.6秒ほどズレているのだから、あとで指数のどちらかを0.6増減すればいいんじゃね?」と思われるかもしれないが、実際その結果がなかなかに芳しくないw
というかなぜなのか私にもわからないが、千二と千四の指数を一通りの補正方法で比較しようとするのが間違いなのではないか、最近はそう考えるほどこの2条件が全くの別物であるということだけは再確認できた。
もう一度言うがサラブレッドは千二を走ったからと言って千四が走れるわけではなく、逆に千四が走れるからといって千二に対応できるわけではないらしい。名馬は除くとして、ね。
芝の千四は非常に特異なレース性をもつ
自分の作った指数などイジっていると時に面白いことに気がついたりするが、今回の千二と千四のレース性の違いもまさにそう。ひとことで言うなら「千四のレース性が多様すぎる」ことに尽きる。
EQ指数を作るにあたっては、その初期段階から異なる距離間においても指数が比較できることを目指してきた。
現代においてはグランアレグリアのような名馬によるチャレンジは少なくなったが、繁殖価値の向上を目指して条件違いのサーフェイスや距離の延長&短縮を試すことはよくある。その成否を以前の実績にプラスマイナスして指数で知ることができれば、予想にも大いに役立つだろう。
しかしそれが「想定内のレースラップ」で動くような条件のうちはまだいいのだが、極端な条件に近づくにつれあまりにラップが上下に揺れるようになると、その次の条件のレースの見通しまで大きく揺れ動いて、台風の予報円のように収拾がつかなくなる。
すでに長距離戦ではEQ指数をただ速い順に並べるのではダメ、とお話ししたとおり、短距離戦においても千四のラップの揺れ幅が広すぎて千二と直結しない現象が起きているのかもしれない。
私が覚えているものでも例えば昨年
2024 信越S 12.1 10.1 …持続
2024 京王杯SC 12.7 11.1 …持続
この2レースは距離と回りこそ同じだが、信越Sは2ハロン目に10.1という驚異的なラップを踏みながらも持続戦に踏みとどまり、かたや京王杯SCは初速12.7の次にも11.1というスローを刻む持続戦だった。
ではこの一戦が次の千二戦の予想に役立つのかといえば、まず京王杯SCのラップはほぼ何も役に立たない。こんなスローで出る千二戦は日本のどこを探してもないし、むしろマイラー性の要素が強すぎる。
しかし信越Sの方を見ても勝ったレイベリングは千二だと明らかにスピード負けする馬。2着のシュヴァルツカイザーこそ千二の追い込み馬だが、3着にはこれまたマイラーのキタウイングが入り、こうなってしまうと1周回ってこの信越Sはスタミナ戦なのでは?という気がしてくる。
しかし実際これが起こるのが千四というカテゴリーであり、昔から「千四専用機」がたくさんいるように、千四には千二にもマイルにもない走るコツがあるのかもしれない。
千二は千二として考えると光明が見えてくる
よってあくまでも千二は千二の指数を参考に、千四から参戦する新参スプリンターはいったんおいといて、どれくらいのスプリント力があるのか見定めてからでも買うのは遅くない、というのが私のEQ指数の現在地となっている。馬券もそれでうまくいくことがある。
ただしスーパーG2の阪神Cや今週行われる阪急杯など、一流どころの千二スプリンターが押し寄せるような千四重賞ではこの「千二専門説」を吹き飛ばすようなスプリンターが必ずいるので、私としても非常に手が出しにくいw そういうときはレースが千二の性質に寄るのかもしれない。
千四戦がマイルから距離短縮する組がいいことは指数からもわかっているが、ときにスプリンターの力で押し切られたりするとがっかりしているのは私も一緒なのだ。この辺はもう少し研究が必要だろうと思う。
以上ご質問に対するお答えにはなっていないかもしれないが、今の私の悩みどころをお伝えした。よかったら皆さんの手でも少しずつEQ指数を改良しながらかわいがってほしい。