▼クールモアの新種牡馬たち26年春編 エース亡き後の帝国 12.8

※これは12月7日YouTube動画の台本原稿です。

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こんにちは、ドルメロチャンネルです。
さて今回は海外競馬の話題として、来年26年春から繋養されるクールモアの新種牡馬たちについてお話ししていきます。

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クールモアといえば世界有数のサラブレッド生産者であり、レースでも、セールでも、競走馬も、そして繁殖牝馬も、すべての馬たちの動向が注目される、まさに世界競馬の中心にいる巨大組織のひとつです。

そのクールモアから先日、26年春のスタリオン種付け料が発表されました。

日本では高額種牡馬たちの種付け料が来年も相変わらず高いね〜みたいな視点で記事がまとめられているのですが、かくいう日本の競馬界においてもその影響は小さくありません。

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なぜなら今は日本にもクラブ、セールを通じてマル外が毎年一定数導入されますし、個人も積極的に海外セールで産駒を手に入れている時代。

その一部は日本で大活躍して種牡馬になるなど、なかなか夢のある話へと発展しています。
これがもしフランケル直仔を欧州から種牡馬で導入しようと思ったら、一体いくらかかるかわかりませんからね。

それら産駒の評価に使われる指標のひとつが種付け料であり、種付け料が高い父の産駒をセールで安く買うことはまずできません。

そこでまだ手垢の付いていない新種牡馬やマイナー系の父に目が向くのはもっともな話で、いわゆるジャスパー軍団やエコロ軍団などは、まだ聞いたこともない種牡馬の産駒を手に入れ、しかもちゃんと日本国内で勝ち上がらせています。

私のチャンネルも一部、海外セールに興味のある関係者が見てくださっているとかいないとか。ならば新種牡馬の血統をいま学んでおけば、来年以降のセールですぐに役立つだろうというわけです。

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しかしそんな盤石を誇っていたかと思われたクールモアに、昨秋激震が走りました。
なんとバリバリのエース種牡馬であったウートンバセットが、シャトル先のオーストラリアで急死するというアクシデントに見舞われたのです。

今年の種付け料が驚異の30万ユーロ、産駒のカミーユピサロ、アンリマティスらが主要G1を勝つなど、その地位に全く陰りがないまま天に召されたウートンバセット。その一報は驚きを持って全世界に伝わりましたが、クールモアとしてはもう次の世代に目を向けていくしかない。

幸いなことに後継候補は複数いますので、果たしてその息子たちが偉大な父の穴をどこまで埋められるのか、その波に私たちも貪欲に、ビジネスライクに乗るべきだろうと考えています。

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というわけでクールモアの新種牡馬解説26、まず欧州からはドラクロワ、アンリマティス、そしてカミーユピサロの3頭を、そしてアメリカからはシエラレオーネ、フィアースネス、シチズンブルの3頭を採り上げ、日本への適性などを中心に探っていきます。

そして一番最後に、今後注目したい産駒デビュー前の種牡馬を1頭、隠し球としてご紹介しましょう。

なおこれ以降、産駒の適性はすべて父似産駒の様子を予測していますので、あらかじめご了承ください。

(6)(5秒ジングル)

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新種牡馬についてお話しする前に、まず今年亡くなったエース、ウートンバセットという種牡馬をここであらためて振り返っておきます。

血統構成を見ますと、ウートンバセットは父のイフラージも優性ですが、優先祖先は母からChief‘s Crown 〜 Secretariatという米系の形に遡ります。

アメリカ本国だとSecretariatは怪物FlightlineやStorm Catの形候補として機能するなど、いまだに主役の優先祖先経路ですが、こうして欧州のトップサイヤーにおいても、世界の血統トレンドがまさにSecretariatなのだという事実にはあらためて驚かされます。

しかしウートンバセットの血統はどちらかというと、欧州の中では異端の系譜です。
直系がミスプロ系というだけでなく、母父がネアルコの切れたダンテ系、さらに米系でも珍しいChief’s Crown、テシオの傑作Ribotという過去の配合構成が、まるで傍流の寄せ集めのような印象さえ与える。

そんな彼がなぜ欧州のトップサイヤーに登り詰めたのか。
競走成績でもない、主流の血でもないとすれば、彼の存在意義とは一体何だったのか。

その秘密は、彼の血統の二面性にあります。
ひとつは牝馬スピードの供給源として、そしてもうひとつは優秀な形の供給源として、どちらも両立する希有な存在、それがウートンバセットでした。

普通はこのどちらか一方の資質を遺伝しさえすれば一定の成功を収められるのですが、彼の場合はその二面性が2倍の爆発力となり、ここまでの大成功へと繋がった。
私はそう考えています。

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これはウートンバセット産駒をクロスありとクロスなしの馬で分けた表です。

一般的な欧州馬には、何かしらのクロスが存在するケースがほとんどで、ウートンバセットの場合はSpecialという牝馬が多くクロスされます。

SpecialはNureyevの母であり、Sadler’s Wellsの祖母。たとえばGalileo牝馬にウートンという配合で、Specialの単独クロスが生じます。

ところがウートンバセットの最高傑作に挙げられる1頭、フランスダービー馬のAlmanzorは、5代までなら完全なアウトブリード配合です。

しかも次世代のAlmanzor産駒、主にシャトル先である南半球産の活躍馬は、非常にスッキリした配合やアウトブリード配合が目立ちます。これらはAlmanzorひいてはウートンバセットの「形」を活かした配合と言えます。

日本の種牡馬で例えるなら、Specialクロス組はナダル、アルマンゾルはサンデーサイレンスとでも言ったらいいでしょうか。普通なら1頭でひとつの遺伝役割を果たすところを、ウートンバセットは1頭で二役をこなすスーパーサイヤーだったのです。

それをふまえて、いよいよウートンバセットの後継候補を2頭見ていきましょう。

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まずは今年の仏2000ギニーを勝ったアンリマティスです。

2歳秋の仏ジャンリュック・ラガルデール賞でカミーユピサロに敗れた後、陣営は海外遠征を選択、見事アメリカのBCジュヴェナイルターフを勝利します。

帰国後3歳時にトライアルと仏2000ギニーを連勝しましたが、仏ダービーはカミーユピサロと使い分けて、自身はマイル路線へ。しかし古馬の壁は厚く、3歳一杯での引退となりました。

配合的にはごく基本的な欧州型です。母のImmortal VerseもマイルのG1を2勝した名牝ですが、その母の段階でSpecial牝馬の王道クロスが行われ、そこへウートンバセットのSpecialをさらにかけるやり方。

形もこれまた王道のSadler’s Wellsですから、配合上はどこにでもいるウートンバセット産駒の一頭でしかありません。

今後アンリマティスの代になれば、5代血統からSpecialの名前が消えますから、どこにスピード因子を求めるかが難しくなりそう。ひょっとすると強い父似のアウトブリード配合で、一発大物を狙うのがいいのかもしれませんね。日本向きではなさそうです。

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続いては今年の仏ダービーを勝ったカミーユピサロです。

デビュー当時は短距離戦も不適だったか、なかなか芽が出ず、条件戦も勝っていませんでしたが、2歳秋の仏ジャンリュック・ラガルデール賞で、いきなりアンリマティスを下してG1初制覇。

しかし3歳春の仏2000ギニーではそのアンリマティスの3着に敗れ、次走でアンリのいない仏ダービーを勝ちましたが、7月のエクリプスS後に骨折が判明、急きょ引退が決まりました。

こちらもアンリマティス同様、配合はSpecial牝馬クロスを活かすパターンですが、自身の優先祖先は母系の奥深くにいるNorthfieldsになっています。

Northfieldsはノーザンダンサー初期の産駒で主にアメリカで走りましたが、二つ上の兄にはHabitatがいますし、母の子孫が繁殖として、さらに直仔のノーパスノーセールが種牡馬として日本に渡るなど、一族は決してダート一辺倒の適性ではありませんでした。

ノーパスノーセールはやや淡泊ではあるものの、早熟のスピードがあった父ですから、同じ強い父似産駒であれば、私はカミーユピサロの方がまだ日本での活躍チャンスはあると思います。

日本の繁殖牝馬内にもNureyevはまあまあいますので、クロスに気をつけた健康な配合馬を狙いたいですね。

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そして3頭目が大種牡馬ドバウィの後継候補、ドラクロワです。

超良血馬として期待された彼ですが、堅実ではあるものの、成長曲線はごく緩やか。
3歳春の英国ダービーではいいところなく9着でしたが、今年7月のエクリプスSで待望のG1初制覇。その後は各地で日本からの遠征馬ともよく闘い、9月の愛チャンピオンSではシンエンペラーらを破りG1、2勝目。

陣営はマイル戦でも行けるのではとコメントしたほど、スピードと一瞬の加速に優れた馬でした。

しかし彼は残念ながら父ドバウィの劣性期産駒で、優先祖先は母父のバーンスタインへと遡ります。

バーンスタインはStorm Catの直仔で、代表産駒である牝馬TepinはBCマイルなどG1を6勝して、本馬ドラクロワの母となりましたし、またアルゼンチンにも活躍馬が多数、日本でもゴスホークケンが朝日杯を勝つなど、世界中の芝でもダートでもこなせる幅広い適性が持ち味で、この辺はStorm Catの性質をよく表しています。

ドバウィの後継しかも劣性産駒とくれば日本にもベンバトルがいますが、あちらは英国ダービー馬のジェネラスが優先祖先系ですからドラクロワとは軽さが違う。

まあ良血配合によくあるゆっくり成長曲線という怖さはあるものの、同じドバウィ系で選ぶなら私はこのドラクロワを上位にとりたいです。父似産駒は日本の芝でも十分やれると思います。

(12)(5秒ジングル)

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さてここから舞台はアメリカに移りますが、クールモアは今年のBCクラシックが終わるまで、アメリカで繋養予定の新種牡馬2頭の初年度種付け料を「未定」としていました。

BCクラシックの結果でどのくらい種付け料を上下するつもりだったかはわかりませんが、実際には2頭ともフォーエバーヤングに敗れた結果、着順通りの種付け料となりました。

シエラレオーネが7万5千ドル、フィアースネスは5万ドルですが、もしBCを勝っていたらこの倍くらいを設定したのでしょうかね。ちょっと気になるところです。

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そのアメリカの1頭目は、シエラレオーネです。
血統表だけ見ますとローミンレイチェルの牝系に父Gun Runnerと、すでに日本にも輸入されているかのような馴染みのあるネームですね。

優先祖先は祖父のアルゼンチン産馬Candy Ride。ただGun Runnerはともかく、このCandy Rideがなぜか日本とあまり相性が良くない。産駒は芝でも走れて、自身はアウトブリード配合だし、日本に繁殖も何頭か入ってはいるけど、成績はそこまで…といった感じ。

今度レックスSで直仔のマスタリーが繋養されましたが、こうして少しサンプルでも増えれば別の顔が見えてくるのかな。種付け数は少しずつ増えてるみたいなので。

エバヤンとの2年間にわたる死闘で、日本の競馬ファンにもだいぶ名前を売りましたが、日本に馴染むまでには思ったより時間がかかる系統かもしれません。Storm Catらのクロスも気になるし、少なくともFlightlineあたりとは話が違うと思うので、やや注意が必要です。

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お次が25年BCクラシック3着のフィアースネスです。

彼は間違いなく父City of Lightの正統後継ですが、正確に言うと祖父の母系にいるオーストラリア系統の影響が強く、アメリカンダミーなどバリバリのダート系ではありません。

そのためか祖父Quality RoadのG1勝ち産駒にはかなりの芝馬が含まれており、サイクルさえ合ってくれば、City of Lightもそしてフィアースネスも、今後もっと芝馬を出す素地がありそうです。まあ無難なのは乾いたダート競馬だと思いますがね。

シエラレオーネよりは少しマイル寄りの適性で使い勝手も良いし、早熟性もあるし、先行力もあった馬だから、どちらかといえば私はこのフィアースネスを上位にとりたい。

日本の地方競馬の白砂にも対応できる父だと思います。予算さえ合えば探す価値はあるかな。

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3頭目がCitizen Bullという馬です。

エバヤンとの接触もない世代でちょっと馴染みは薄いでしょうけど、父Into Mischiefの2回目のMAX活性産駒ですから、正統な後継候補の1頭ですね。2歳時のBCジュヴェナイルの勝ち馬で、完全な早熟マイラーです。

この父Into Mischiefに関しては北米での無敵っぷりとは裏腹に、最近までビックリするほど日本に産駒が入ってこなかったので、一番いい時を逃した感はありますが、日本でも普通に十分やれるサイヤーだったと思います。

まあお高いから試しようがなかっただけで、今年のPOGで私は母カリバの産駒ウェイニースーを取りましたが、これも間違いなく大物だし、サトノボヤージュもすでにOPを勝ちました。

藤田晋オーナーもカフェの西川オーナーも勝ち上がってますし、25年は過去最高にInto Mischiefが盛り上がりました。

そう考えればInto Mischiefの正統後継でリーズナブルな早熟父がいるなら、名前くらいはぜひおさえておきたい。それがCitizen Bullですよ。
もし3世代目あたりに種付け料が下がったら、その世代は狙い目でしょうね。

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で最後にオマケとして、もう来年セールからの即戦力を探しているアナタへ、隠し玉は全て出しなさいとおっしゃるアナタに正真正銘お勧めな父が、このJack Christopherです。

彼は新種牡馬ではなく、すでに23年春からスタッドインしているので、種付けは3シーズン目。
25年の種付け料は25,000ドルとやや低下気味ですが、来年26年には初年度がデビューしますので、今後の成績次第ですね。

父は現在もクールモアの屋台骨を支えるベテラン・マニングスですが、息子はその後継というわけではなく、むしろ形は母父のHalf Oursというマイナー種牡馬に影響を受けています。

このHalf Oursはアメリカで重賞勝ち馬を1頭も出していない筋金入りの空気扱いマイナー系ですが、そのHalf Oursの母父が優性のStorm Catになる。

未出走の、どマイナー種牡馬を父に持つ母から、早熟の天才スプリンターの形が出る。
これぞ大家Storm Catの成せる業であり、形の遺伝の厳格さを表しています。

さらにこのJack ChristopherはStorm Cat系以外に優性父をもたないので、すべての父似産駒イコールStorm Catの形とみてよい。こんな簡単で間違いのない形がリーズナブルに入手できるんだから、ひと山当てたければ、即来年の海外セールで探す価値があろうというもの。

もし産駒が日本に来るようなら、ぜひPOGで検討してみてください。

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クールモアの新種牡馬解説2026春編 いかがだったでしょうか。

ウートンバセットの後継は探して見つかるレベルのものではなく、生産界の信頼を集めた種牡馬が自然と次のトップを確立していくのだと思います。

よって新しい顔ぶれのどの馬にもそのチャンスはありますから、辛抱強く次世代のエースを探していきましょう。皆さんの参考になれば幸いです。

今回の動画はここまでです。
ご視聴ありがとうございました。

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