シーズン本番、2回目のMAX活性期直後に突然の種付け中止
いつかはこのような時が来るとは思っていたが、あらためてディープインパクトの種付け中止が発表されると、まるでサンデーを失った当時の哀しみがフラッシュバックするようで、まさに衝撃のニュースである。
幸いディープに関しては、体の状態さえ戻れば種付けに復帰する可能性は残されているが、頭数は厳しく制限されるだろうから、来年からの1頭1頭はディープ晩年の渾身作ということになろうし、産駒のセールもより緊迫したものになろう。
さて生産界ではこの数年「ポスト・ディープインパクト」を模索する動きが加速している。
いまのところはロードカナロアがその地位に一番近いのだろうが、彼の本質はスプリンターであり、クラシック路線とくに日本ダービーを崇める日本の生産界にとっては、距離不安のない新たなスター種牡馬の誕生を待ちわびているところだ。
そこでダービー馬はダービー馬からの格言通り、偉大な父のプチリタイアに伴って、今後ディープ系の後継種牡馬にはさらなるスポットが当たるはず。
今回はディープインパクトが優先になる後継種牡馬の候補を何頭か挙げて、その配合内容を検証してみたい。
遺伝の法則は絶対である
ひとくちにディープ産駒、またその孫産駒といっても、本当にディープインパクトを優先にしたければ、最低限「父の優性期産駒」でなければ話にならない。
メンデルさんがおっしゃるまでもなく、優性の法則は自然の真理である。
ディープインパクトは02年生まれなので、まず1回目のMAX活性期は10年春に訪れている。
ということは11年種付け(12年産駒)からは劣性期入りするので、11年生まれ(しかもおおよそ5月種付け→4月生まれ)までが、第1期の後継候補ということになる。
第1期のディープ系後継種牡馬としては、
▼キズナ(2010)
▼ディープブリランテ(2009)
▼サトノアラジン(2011)
▼リアルインパクト(2008)
▼スピルバーグ(2009)
▼ミッキーアイル(2011)
▼ダノンシャーク(2008)
▼トーセンラー(2008)
▼トーセンスターダム(豪・2011)
▼トーセンホマレボシ(2009)
▼ワールドエース(2009)
▼ダノンバラード(2008)
▼ヴァンセンヌ(2009)
…
などがいる。
なおエイシンヒカリ(2011)は5月3日生まれ(6月3日種付け予測)なので、ディープのMAX活性期(〜5月25日)を過ぎている可能性が高く、ここに含めなかった(もちろんMAXの可能性もゼロではない)。
そして4年間の劣性期を経て、15年種付け(16年産駒)から再び優性期に入っていく。
16年産駒は今年の3歳馬だから、メイショウテンゲンなど後継の第2候補はこれから誕生するというわけだ。
ちなみに15年産駒は活性値4の中性期であり、うまく配合してやれば父似の産駒も可能だが、実際問題として確率も理論構築も難しく、現場ではそぐわないと見るのが妥当だ。
ワグネリアン、フィエールマン、Saxon Warriorなど、いい馬はたくさんいるのだが…。
ここからが本当の後継者問題だ
さてディープ系後継種牡馬の第1期候補が出そろったわけだが、ここまでは血統をかじった人ならだれでも考えそうなこと。
テシオ理論では上記の主要な13頭の後継候補のうち、ディープの形を出しやすい馬つまり
▼絶対に父似である種牡馬
を探さなくてはならない。
つまり種付け時のディープよりも活性の高い父を母系に持つ「母似」種牡馬では、ディープ似の仔は未来永劫、絶対に出ないのだ。
この条件を満たすのは
▼キズナ(80%)
▼ディープブリランテ(30%)
▼サトノアラジン
▼リアルインパクト(80%)
▼ミッキーアイル
▼トーセンスターダム(豪)
▼ワールドエース(80%)
▼ヴァンセンヌ
のみとなる。
(80%)と書かれているのは、活性値が近くて比較が難しい父がいるものの、まあ80%の確率で父似でしょう、ということ。
反対に(30%)ならば、ちょっと父似かどうか怪しいというわけだ。
実は前出のメイショウテンゲンもタッチの差で優先は母メイショウベルーガとなり、条件を満たさない。(その母も祖母パパゴが優先)
こうしてみるとトーセンスターダムは豪州に行ってしまったので(豪は良い後継馬を選んだはず)、孫世代にディープ似の仔を出そうと思ったら意外と間口が狭いことがおわかりいただけると思う。
今ごろわかったディープという種牡馬の本質
そして!
ここからが最も重要なのだが、
▼ディープ似の仔を出す(はずの)種牡馬たちは、ほとんどすべてがスピードタイプ
また動画を出すときにと考えていたので、あえてここまで一度も解説していなかったのだが、みなさんはディープインパクトの優先祖先って、いったい誰だと思われるだろうか?
▼ディープインパクト(2002・鹿毛)
父 サンデーサイレンス 活性値7
母父 アルザオ 活性値2
3代父 Busted 活性値5
4代父 Queen’s Hussar 活性値2
よってディープインパクトの優先祖先はサンデーの母・Wishing Well(1975)という結論になる。(サンデーはHaloのゼロ活性産駒なので)
Wishing Wellはアメリカで主に芝の8.5〜9ハロンあたりを得意にしていた鹿毛馬で、重賞もふたつ勝っている。
このことからディープの本質は芝のマイルあたりにあるといったら、きっと大勢の血統論者が否定するだろう。
しかし今回ディープ父系を活かす後継を考えてみたところ、結局牡馬はマイラー以下しか残らなかったことと、Wishing Wellがディープの優先であることとがここでようやくひとつに結びついた気もするのだが…。
ディープの形、毛色はこのWishing Well由来であり、その証拠にひとつ上の全兄・ブラックタイドはサンデーの活性値が7→6に変わるので、優先は1代下がってサンデーサイレンス自身になる。
この全きょうだいなら、形がサンデーそっくりなのは誰が見てもブラックタイドの方であり(流星、黒鹿毛、右後肢一白)、その似方といったらフジキセキ以上にうりふたつである。(全弟オンファイアはやっぱりディープのような小さい流星の鹿毛馬)
この3きょうだいの話は、いずれ動画でも詳しく。
【 結論 】ディープインパクトの純・後継は、軽い芝のマイラー系として残っていく
反対にいえば、もしディープ系後継種牡馬からダービー馬が出るとしたら、こっちの候補じゃないディープ種牡馬から、ということだ。