まずはちょっとだけ有馬的中のお話を
毎日寒すぎて本当にイヤになる。皆さんと年末のご挨拶はもう済ませた身だが、有馬記念が少し当たったので御礼も兼ね、ホープフルSと一緒にふり返っておこうと思う。
有馬記念はエフフォーリアが盤石の横綱競馬で制し、今年の3歳勢の強さ、層の厚さをまざまざと見せつける内容となった。
当日のパドックでは、エフフォーリアから流す馬を探す地味な作業ではあったが、なにしろディープボンドのデキが素晴らしく良く見えたので、事実上この2頭の一騎打ちだろうと薄々観念しながらw 他にもパラパラと買い込んでこの結果に。
クロノジェネシス、ステラヴェローチェもよくがんばったが、あの有馬記念はたとえ地の果てまで行ってもエフフォーリアとディープボンドで決まる一戦だったろうと思っている。
ディープボンドはAPI的には1.70をわずかに超える存在だったものの、それは海外遠征の負担を加味したものであり、数値的にはさほど悪くない候補だった。それよりも海外から帰ってなおあの状態をキープしていたこと自体が驚きで(凱旋門賞が全く競馬にならなかったフシもあるが)、大久保龍先生の手腕はさすがとしか言いようがない。
またレースのペースがほぼ消耗に近い中だるみ戦だったので、道中じっくりペースダウンがほしいタイプの馬(クロノジェネシス、ステラヴェローチェ)には辛い展開となり、そういう意味でもここまで持続戦を得意としてきた上位2頭に分があったのかもしれない。
配合を超えた「血の存在意義」という考え方
さて話題はホープフルSに移るが、ちょっとだけ動画アップのことも考えていたので、データはいちおう集めていた。その原稿を見ながら結果と合わせてお話ししていこう。
まずホープフルSのペースだが、結果は「持続戦のラップ差1.3秒」というもの。2歳G1としては十分合格圏内のレベルにある。
2歳戦は経験、という今年のキーワードに則りまず戦前注目していたのが、持続戦得意のアスクワイルドモアだった。豊ジョッキーの全G1制覇というお祭りムードまで高まったのは予想外だったが、それを抜きにしてもパフォーマンス的にはここでもやれていいと思っていた。
しかし前回ブログのコメントにもお返事したとおり、アスクワイルドモアはサンデーのクロス持ち配合馬であり、本来ならドルメロの推奨枠からは外れる。そこだけが惜しいなと思っていた馬で、勝ち馬はきっと他にいるのだろうと、少し冷めた目線で見ていたことも事実だ。
では他にパフォーマンス面で注目した馬はというと、
コマンドライン 父ディープのMAX活性→ディープ優先 裏自然①
★新馬 持続1.4
フィデル Seattle Slew(米ダ)優先 3回付け
★京都2歳S③ 持続1.3
ラーグルフ 母〜ファルブラヴ?優先 SSクロス
★未勝利 中だるみ1.5
ボーンディスウェイ Graustark(米ダ)優先 裏自然②
★葉牡丹賞 中だるみ1.5
こんな馬たちだ。
どうだろう、コマンドラインはともかく、他の馬が3、4、5着にきちんと入着したことを考えれば、あながち持続ペース論も大ハズレだったわけではないと思うのだがw
ただし推薦という結論にまで至らなかったのは、どの馬にも配合上気になる点があったから。コマンドラインとボーンディスウェイはやっぱり絶対的なスピード勝負で劣る「裏」馬だし、フィデルは3回種付け馬、そしてラーグルフはサンデーのクロス持ち。まあ普通ここまで走ってくれれば反対に「悪材料にも一定の希望が持てる」とお考えの方もいようが、やはり入着馬は入着馬。
ましてやもしクラブ馬ならこの結果に万々歳かもしれないが、配合の妙を探る身としてはどうしても「心の引っかかりは正夢だったか…」とネガティブに感じてしまうのである。
「でもさ、エフフォーリアだって(今のところは)裏馬の可能性もあるんでしょ?」
確かにそうだ。エフフォーリアの母ケイティーズハートは誕生の時期が非常に微妙で、見ようによっては初回発情にも薬剤生まれにも見える。だから産駒の裏表判別が難しく、私はずっとエフを「裏馬」扱いしてきたし、また成長とともに距離適性が見えてくるだろうと期待していたのだが、彼がもはや名馬級に強くなったことで、かえって裏表の判別は一段と難しくなってしまった。
だからエフフォーリアには依然として表の可能性もあることを含みながら話を進めるが、そのエフフォーリア同様、今回のホープフルSを見て、配合を超えた「血の存在意義」からトップに立つことを許された存在、それがキラーアビリティではないかと思うのである。
血の存在意義とは何なのか
来年エピファネイアは種付け料No.1の種牡馬に君臨する。そのカナロア超え血統的意味を近日動画にしたいと思っているので、楽しみに待っていてほしいが、少しだけタネ明かしすると…
エフフォーリアは父のエピファネイアがぎり優先祖先だから、文字通りエピファの正統後継一番手である。またもしぎり母似だったとしても、母系は日本に根付いた重要牝系のひとつケイティーズ系なので、私は彼が母似でも裏馬でも「オスは子供に形を伝えるのが役目だから、父のエピファネイア同様、血統上後継となる存在意義がある馬」として走っているのだろうと、常々考えていた。
ドルメロ理論界隈では当たり前なのだが、エピファネイアという馬は「サンデーサイレンスの全否定」トップサイヤーである。大事なことだから2度言うが、いま日本では「サンデー全否定」サイヤーがトップを張っているのだ。スペシャルウィークのサンデーゼロ活性という奇跡を取り込んで、馬の神は「これ以上のサンデー繁栄を許さない」とお考えになったのかもしれない。
しかもエピファの優先祖先の源は、シーザリオ〜サドラーズウェルズ〜Lalunという欧州グレートマザーに繋がり、日本も欧州もその束縛からいまだ逃れていない現状。さらに日本で走り出したKingmanという種牡馬も……おっとっと、動画のタネがなくなってしまうからこの辺にしておくが、勘のいい方はもうおわかりだろう、父系の真の意味とはそういうことだし、良い形は100年経っても引き継がれるものなのだ。
さあエピファネイアとエフフォーリアの役割はわかった。もうひとつ、日本の競馬ファンなら行く末を知っておかなければならない別の父系がある。それはもちろんディープインパクトの系統だ。
コントレイルを、キラーアビリティを、しかと見よ
コントレイルの初年度種付け料は破格の1200万円に決まった。私はこれでも将来は安く感じる大種牡馬になるだろうと思う。初年度にこの価格で付けられた方は幸運と思った方がいい。
コントレイルの存在意義は、ディープインパクトの形を持ちながら「ミスプロを全否定できる」数少ない馬、という点にある。
母父Unbridled’s Songのゼロ活性という奇跡を盛り込み、まるで馬の神が「これでどの牝馬にも付けやすくなっただろ?」とおっしゃっているかのようだ。
残る母系のクロス候補はStorm Catくらい。もう1本はRelaunchつまりインリアリティ系なのも大きい。ディープインパクト側のLyphardと合わせ、この2つにさえ気をつければ、すぐにアウトブリード配合になりそう。
この付けやすい父が最強のディープの形を持っているって言うんだから、配合そのものよりも「父似母似と時期さえ間違えなければ」それだけでいい仔が出る種馬だ。こんな馬、世界中探したっているはずがない。
こうして母父系のゼロ活性は、競走現役時代には精神の安定をもたらし、種牡馬となってからは余計なクロスの発生を防いでくれる。
そしてまた1頭、ディープの形を継ぎながら、母父系がゼロ活性の成功パターンを持つ牡馬が現れた。それがキラーアビリティである。
キラーアビリティはディープのMAX活性産駒でディープ優先。かつ母父のCongareeが世紀のワンダーホース・アラジ(91年欧年度代表馬)のゼロ活性産駒なのだ。
アラジは現役時の大活躍ぶりとは裏腹に、なぜかまともな後継馬を出せなかった。唯一のG1勝ち馬こそがこのCongareeであり、その息子がゼロ活性産駒という皮肉は「アラジの形は必要ない」という馬の神の残酷な審判を仰いだ結果でもある。
よってキラーアビリティの母父には血の影響力が全くなく、彼の精神面の安定性にのみ寄与する。加えて本馬もまた母系の1本がRelaunch系で、残りがBoldRuler系だから、現代日本ならクロスの心配がほとんどない。
ホープフルSでは持続戦のラップ差1.3秒を3番手追走、先行しながら後続を1馬身半突き放した強さは本物であり、ここまで中だるみの2.6秒(萩S②着)というレースも経験しているので、ダービーまでなら距離は全く問題ない。
コントレイルと違い、勝ったり負けたりの紆余曲折を経てここまできているので、思いのほかゆっくり強くなるタイプかもしれないが、「血の存在意義」から言っても天が見放さない奥深い競走馬の1頭である。
天に任せず、自ら進め
母のキラーグレイシスは本馬が初めてのディープ配合であり、これだけみると「ディープよさすが」と思わず言いたくなるが、この母はMAX活性の種牡馬を与えたときだけ父似産駒になり、他は全て母似産駒が生まれる繁殖だ。
よってただ天の啓示をいたずらに待っているのではなく、自ら「MAX活性の種牡馬を探して」配合するのが尽くすべき人事であり、その行いこそを馬の神に判定してもらわなければならない。
実は2着のジャスティンパレスもキラーアビリティと良く似た配合をしているが、さてどの辺が同じでどこが異なるのか、何が1馬身半差となって現れたのか、逆転の目はないのか、など気になる方は調べてみると面白いだろう。
これで本当に年内はブログ掲載終了です。また新年お目にかかりましょう。よいお歳を。