このところまた動画を出すテンポが遅れている。容態の良くない高齢の親戚がいて年末年始の計画が全く立たないため、編集の手も止まってしまいがちというのが実情だ。不謹慎な話、年賀状なのか喪中はがきなのかも未だ決まらずじまいなので、こうして悶々とするしかない今日この頃。お話ししたいことは山ほどあるが、動画として出るまでにはまだ時間がかかりそうだということをご了承いただきたい。秋のセミナーは来年、新春セミナーに模様替えしなくてはならないだろう。しばしお待ちを。
イクイノックス、有馬は不参戦→引退へ
その間も競馬界は毎週大きな動きを見せている。とくに主要G1を走り終えたスターホースからは続々と種牡馬入りの報告が入っている。中でも馬産地に大きなインパクトのあったニュースといえば、イクイノックスの引退→社台SS入りだろう。
今秋2戦の内容が強烈すぎたために、どこからともなく「有馬で秋古馬三冠待望論」が出てしまったが、まあ昨今のトレンドでいえば有利不利のない府中で期待通りの走りを2回してくれたのだから、もはや中山二五への参戦は蛇足に近いし、彼には大切な次の仕事が待っている。私は引退が既定路線かと思っていたが(ルメールのJC感涙もそのためかと思っていたのに)、前の秋古馬三冠馬が出てからかれこれ20年近く経っており、この目で久しぶりに(初めて?)見てみたいというファン(クラブ会員?)も多いのだろう。そう思うとテイエムオペラオーやゼンノロブロイの偉業はもっと評価されていいのかも。
さすがにイクイノックス自体がそう丈夫とも言えない個体であるのと、激走の反動がちゃんとあった(よかった、彼も馬の子だった)ことから、このほど有馬へは向かわず、社台SS入りするとのアナウンスがなされ、来春の種付け料が破格の2,000万円に設定された。これは奇しくも父キタサンブラックと同レベルの評価値であり、この親子が来春以降の社台、日本馬産界を背負って立つといっても過言ではなくなった。
イクイの種付け料2,000万円に対する真の評価
種牡馬の形として考えたとき、イクイノックスは父キタサンブラックの正統後継であり、種牡馬のもつ使命としても父と同様の種付け料になることへの異存はない。むしろエピファネイア〜エフフォーリアやロードカナロア〜アーモンドアイのことを考えれば、エピファネイアとロードカナロアが昔の名前でいつまでも商売が出来るのはこうして1頭でもSSS級の名馬を出したからだし、今後エフフォーリアが第二のスワーヴリチャードになることだって十分あり得る。
まあ細かいことを言うなら、キタサンブラックの優先祖先はかなり古いところまで遡った末の結果(Ambiopoise=米ダートのステイヤー)なのに対して、イクイノックスは深い父似産駒であってもすでにAmbiopoiseまではたどることが出来ない運命。よって優先祖先系としてはサクラバクシンオーの母系ではなく今度は純粋に父系のサクラユタカオー〜アンジエリカの方をたどることになる。これは米系から土着の日本系+古い欧州系への優先祖先転換となるため、将来的に私はこれがイクイ産駒のデキにもまあまあ関与してくる気がしている。
なんなら同じ種付け料であれば、未だに父キタサンブラック産駒の方が現代日本向きかもしれないなと思うのだ。
とはいえ冷静に見ると、そのキタサンブラックも他の代表産駒と言えば皐月賞馬のソールオリエンス、セントライト記念のガイアフォース、チャンピオンズカップ2着のウィルソンテソーロだから、至極順調、順調ではあるけれど、はたしてディープ級かといえばそれはどうなのか。今後は息子へ繁殖を譲るシーンもあるわけだし、それならこの親子ともども2,000万円という種付け料は実のところ今がピークではないか、再び優性期に入るまでは種付けを見送り、将来どこかでもう500万ほど下がってから勝負しても遅くない、そんな戦略だってあり得る。
つまるところ今回の親子による社台SSジャックは、徳川幕府サンデー系とも明智光秀エピファネイアとも違い、かなり一か八か、当たり外れの大きな天下獲りシーンである気がするのだ。
待ってました!テーオーケインズ、アロースタッドへ
こうした社台系種牡馬のFee高騰はセレクトセール上場馬や社台系クラブ馬の値段にも大きく影響を及ぼすだろう。ならば私たちは種牡馬の本質を突くことで「第二のスワーヴリチャード」を日高系から探しておかなければなるまい。
実はその意味ですでに昨年から待っていたのが、21年の帝王賞&チャンピオンズC勝ち馬、テーオーケインズのスタッドインである。先日のチャンピオンズC4着後にアロースタッドでの繋養とFee250万円が発表され、私としても元気に種牡馬入りしてくれたことを心から嬉しく思う。
この秋から各オーナー方に配合計画を尋ねられるたびに、私は「今年引退したらテーオーケインズをぜひ候補に入れてください」とお願いしている。いまやセール1億円でも産駒が手に入らない父シニミニの後継であるだけでなく、彼はサンデーとミスプロに関してゼロ活性を持つ、エピファネイア型の期待種牡馬であるからだ。
彼は6歳いっぱいまで現役を頑張ったので、第1期の優性期が短く、来春と再来年しか父似の子が生まれない。まあサンデークロスがいつでも回避できるので母似の仔も楽しそうなのだが、シニミニの後継を期待するならチャンスはあと2回限り、これをぜひ覚えておいてほしい。もっとも3年目以降ではFeeが倍増し、おいそれと付けられなくなる恐れもあるかな…今からシンジケート株でも買っておいた方がいいかな…な〜んて狸の皮算用をしながら、今回はひとまず話を閉じようか。
ドルメロさん、お久しぶりです。
今年は活躍した父似の競走馬達がたくさん種牡馬入りして、面白い年ですよね!またパンサラッサのドルメロさん的評価も是非聞かせて欲しいです。
ダート系の種牡馬はヘニーヒューズからモーニン、ゴールドアリュールからクリソベリル、シニスターミニスターからテーオーケインズと父似産駒の種牡馬入りが多いような気もしますが、何かあるのかと考えたくなるのがまた面白くもあります。
ピーヤさん、お久しぶりです。
父似の競走馬たちが種牡馬入りすることは、無事にその父系が役目を持って継承されたということなので、ホッとすると同時に今後も狙っていける父系なのでしょう。
ただ母系に新しく入った血で配合が難しくなると、たとえサンデー系でもそれ以上の発展は望めませんからね。そこが難しいところ。サトノアラジンとか。
パンサラッサが生産者からどの程度評価されるものか、私も興味があります。ロードカナロアの貴重後継だし。
シャトルの話もあるようなので、それは彼にとって非常に意義深いものになると思います。むしろ南半球向きかも。
キラキラの良血の繁殖牝馬ほど有名な種牡馬の血が入っている可能性が高くなる訳ですから、配合の選択肢が狭まっていくように感じられるのも、なんとなく分かります。そういう意味ではテーオーケインズの価値はやっぱり計り知れないなあ、とも。
個人的にはロードカナロアの後継としてはダノンスマッシュ、ステルヴィオに注目しています。パンサラッサはあれだけの馬ですし、海外でも人気になりそうですよね。オーストラリア経由で香港で走る馬もたくさん出てきそうな気もしています。
写真を見ると、キンカメの仔、孫など正統後継たちは額に流星もなく、きちんと父系の姿を継承している気がします。
ただ豪州はこの「正統後継」を輸入するのがうまくて、これまでにもサンデー、ディープの正統後継が何頭か旅立っています。
昨年ステルヴィオのゼロ配合を企画したのですが、こうも安価で放置しておくと、彼でさえどこかのめざとい外国勢が買っていったりして。
ダノンスマッシュもしかり、ですね。
ダーレーがいろんな種牡馬を導入してくる、ノーザンも繁殖牝馬をどんどん海外から連れてくる一方で、サンデー系やドルメロさんも良くおっしゃるシアトルスルー系の形を持つ後継が日本からいつの間にかいなくなり、海外から結局逆輸入することになってしまった、なんていう未来がもしかしたら来てしまうのかもしれませんね。日本の競馬は世界に誇れる産業の1つと思っているので、あまりその未来は起きてほしくないと考えていますが…
今年のリーディングはロードカナロアが取るのか?ドゥラメンテが取るのか?父の系統はキンカメ系でも全く優先祖先が異なるこの2頭のリーディング争いも目が離せません。いろんな視点で見ることが出来る競馬の面白さにいつの間にかすっかり魅せられています。