NHKマイルC2025 G1解析動画 単勝1倍台の2歳王者はなぜNZTで負けたのか 5.6

※これは5月6日YouTube動画の台本原稿です。

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こんにちは、ドルメロチャンネルです。
さて今回は春の3歳マイル王決定戦、NHKマイルカップ2025を、EQ指数を使いながら詳しく展望していきます。

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3歳マイル路線と言えばまずは昨年暮れに行われた朝日杯フューチュリティステークスの検証が必要です。
結果として2着のミュージアムマイルがその後皐月賞を勝ちましたけど、勝ったアドマイヤズームは次走のニュージーランドトロフィーで単勝1倍台の断然人気ながら、なぜか2着に敗れてしまいました。

この結果に思わず釈然としなかったのは、私だけではなかったはずです。

仮にも朝日杯というG1を勝ったはずのアドマイヤズームが、次走同じマイルのしかもG2のトライアルでなぜ負けてしまったのか。

アドマイヤズームがホントは弱いのか、それともミュージアムマイルがホントは強かったのか、あるいは朝日杯のペース自体に何か謎があったのか、 マイルC展望の前にまずはその辺りを探ってみましょう。

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その答えのヒントはこの2頭のローテーションの違いにあると私は考えています。

朝日杯の後ミュージアムマイルは弥生賞から皐月賞という王道路線、そしてアドマイヤズームはニュージーランドトロフィーからNHKマイルカップへというマイル路線をたどります。

この別ルートのレースそれぞれをEQ指数で調べれば、 今回の不可思議な逆転現象の謎がもっとはっきりするのではないか。どこかに指数上のゆがみが出ているのではないか。

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そのためにはまずEQ指数を少し改良することから取り掛かります。

ここ2、3週間お試しで使い始めているんですけれども、 EQ指数を算出するときに最速ラップだけでなく、その後の3ハロン目のラップも加えて計算するという改良です。

まあ改良というか、ある種お試しでもあるんですが、なぜこの3ハロン目のラップを加えるか。
毎週馬券チャレンジを見ている方はご存じかと思いますが、最初は千二のレースの指数計算に苦労しているうちに3F目ラップを加えることを思いついたんです。

するとこれまでのEQ指数だと大接戦に見えるメンバーでも、この3ハロン目を加えることで、スピードの持続性の違い、距離適性の違い、ラップ適性の違いなど、今まで見えていなかった意外なほど多くのことを我々に語り出したんです。

ならばできるだけこっちを使わないともったいないじゃないかと。

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で、実際に改良されたEQ指数を用いながら24年の朝日杯のレベルがどうだったのか見ていきます。
これは過去10年の朝日杯のラップと従来のEQ指数です。

今までのEQ指数で比べると、ここ10年の勝ち馬のレベルはさほど違いがないように見えます。
あえて言えば16年は時計遅くてなおかつ追込決着ということで、さすがに少し低レベルだったような感じも受けますけどね。

ただし、24年に久しぶりに現れたラップ特性が、ほぼ10年ぶりの中だるみラップだったという点は注目です。

勝ち馬の指数自体は歴代に劣るものではありませんが、ペースの質がここ10年とは全く違うものだった。G1のマイル戦の途中で少し緩んだということなんです。

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その違いがもっとよくわかるのが、今回3ハロン目のラップを加えて算出したEQ指数です。

24年の朝日杯では例年と何が1番違ったかというと、実はこの 3ハロン目のラップが異様に遅かったたという点です。

これを指数の計算に加えてしまうと、一転してここ10年で1番レベルが低かったと思われる2016年と全く同レベルの指数に下がってしまいます。

そしてこれだけ毎年の指数に開きが出てしまうと、これはもうレベルの高い低いではなくて、そもそも勝ち馬たちの距離適性が違っていたのではないかという憶測も出ます。

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これは新しいEQ指数で3.0以上が出た朝日杯の年ですが、どの年も勝ち馬はその後中距離をこなしたタイプであり、そういう馬がのちのスプリンターたちを抑えて勝った年だったと言うことがわかります。

サトノアレスはその後9ハロンの巴賞を勝ち、ダノンプレミアムは弥生賞を勝ち、アドマイヤマーズも皐月賞で4着だった。実際アドマイヤマーズは遺伝子的にもT/T型だと言われています。

つまりこういう3F目の遅い朝日杯の勝ち馬は、その後10ハロンでも好走が可能な馬たちと言うことです。

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これを踏まえて今年の皐月賞をもう一度見てみると、今年は 3ハロン目のラップが12.2というかなり遅いペースの皐月賞だったので、指数もかなり大きくなりますし、方向性としては折り合いを重視する中距離タイプのレースだった。

反対に24年の皐月賞は、タイム的には今年と同じレベルでも、3ハロン目のラップが11.5という速さですので指数はかなり小さくなり、方向性としては真逆の究極のスピード持続性を競うレースだったことがわかります。

つまり24年の朝日杯は、3F目を見たとき中距離ぽいペースで流れたため、その後王道路線を歩んだミュージアムマイルにとっては幸いにもラップの方向性がずっと遅いまま変わらなかった。
結局は皐月賞まで3F目が同じペースで流れたため、あの勝利にリンクした。

初速が速いのに3ハロン目が遅いからこそ生まれた神展開だったとも言えそうです。

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一方でアドマイヤズームが2着に敗れた前走のニュージーランドトロフィーは、ご覧のように3ハロン目のラップが11.2という速さで、朝日杯とは真逆の方向にレースが動いたため、さすがのアドマイアズームも追走手一杯で、イミグラントソングらの強襲を許した。

ラップから見たニュージーランドトロフィーの不可解な敗戦劇と言うのは実はこんなところに理由があったのかもしれません。

(10)(5秒ジングル)

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さてそろそろ今年の出走馬に関してもコメントしたいところですが、実は新しいEQ指数で3.0以上となった朝日杯のメンバーは、マイルカップの成績があまりよろしくありません。

加えてそういう年のデータ傾向だけを紹介すると、ひとつは前哨戦トライアルの勝ち馬が人気になってコケるパターンが多いこと。代わりになぜかG1やトライアルを少〜しだけ負けて出てきた馬の激走ばかりが目立ちます。

もうひとつは、暮れの朝日杯の指数が低くても、本番のEQ指数はちゃんと平均レベルまで上がるので、心置きなくスピード馬の発掘や巻き返しを期待してよいという点です。

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例えば2018年のケースも、勝ち馬ケイアイノーテックは朝日杯こそペース合わずの4着でしたが、スピードラップに戻ってきたマイルCで堂々の巻き返しを演じています。
前走のNZTこそまたもやペース合わずの2着でしたが、こういう負けは気にしなくていい。

加えてスピードタイプを探すのは何も重賞に限らないというのは強調しておきたいところで、1勝Cや特別戦でも光る素材がしのぎを削った跡を見逃さないことです。

18年だとこの、こぶし賞がなかなかの内容で、勝ち馬は次走アーリントンC2着、本番も6着だったパクスアメリカーナ。3着のエントシャイデンも後のOP馬で、フランスのフォレ賞を2年連続で3着しています。

そういう馬たちが集ってスピード比べをすると、4着以下がマイル戦で7馬身離れるとか異様な光景が現れる。こういう兆しを見逃してはいけません。

で、本番3着のレッドヴェイロンも前走アーリントンCの3着馬。2着は例のパクスアメリカーナ。こういうリンク関係と言うか、あうんの呼吸で吸い寄せられる馬たちの集団は買いです。

あくまで本番のペースはスピード型になりますから、着順よりはそのHペースにハマっていたかいないかの方が重要です。

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ところが、例年はスピードレースになるなると言いつつ心配しているのは、今年徹底先行型の馬が不在であること。誰か行くでしょ?という他人任せの展開は思わぬスローペースを生みます。

この前も福島の千二OPモルガナイトSが初速12.6というマイル戦並みの遅さで撃沈しましたから、いちおうスローの警戒はしていますよ。

ただティラトーレが出てくれることになったらしいので、本来テンの速さだけならこの馬が12.3くらいで先行する力はある。前走は距離不安もあって抑えたけどね。

加えて府中のマイルは千八や二千と違い前半速くなりがちなコースでもあるので、真ん中を取って初速12.2〜12.4、心配なら12.5まで見ておけばいいでしょうか。

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こうして初速を12.2〜12.4あたりと予測すると、まず出走馬の1枚目。
有力馬で、しかも優先出走権をとれるレベルの馬たちというのは、3F目を足した新指数でもかなりの激戦模様ということがわかります。これは超激戦だね。

なおかつ毎年NZT組があまりリンクしないと感じるファンも多いでしょうが、先程から申し上げているように今年のNZTは十分本番に繋がるスピードレースとなった感じがするので、今年はあまり軽視しない方がいいです。

負けたとは言えAズームも元々未勝利時代からバカみたいに優秀な数値を出していた馬で、前走はスローの朝日杯を1回挟んだからちょっと頭がついて行けなかっただけ。もともとのスピード能力はやっぱりここだと最上位にきます。

勝ったイミグラントソングも2歳時のひいらぎ賞がめちゃくちゃ優秀。
これをスイスイ逃げて勝ったデンクマールって馬もちょっと異常な強さなんだけど、残念ながら春は体調整わずで復帰が待たれますね。これは本物です。

その次にくるのがサウジRCのアルテヴェローチェあたり。
で、チャーチルダウンズCやきさらぎ賞はそれよりは一枚落ちる感じ。もう少しスタミナ寄りならわからないけど、スピード比べという点ではね。

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出走馬の2枚目。
ここは距離さえ最適なら、という馬が多いですね。

指数は上位のヤンキーバローズ、パンジャタワーともにマイルをどう乗りこなすか。マジックサンズは逆にどう追走するか、かな。

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それならいっそ、この3枚目の馬たちの方が一発の可能性にあふれている感じ。

まずは桜花賞でも紹介したマピュース。それからファルコンS組でかつマイル経験のあるモンドデラモーレ、そして体調さえ整っていたらかなり面白かったと思うマイネルチケット、除外になってもこのあとスプリント戦でやれそうなスリールミニョン、このあたりは今回だけでなく秋まで覚えておきたい素材です。

最後に、私が血統データを見ておきたいと思う馬を少しご紹介します。

(17)(5秒ジングル)

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まず1頭目はイミグラントソングです。

何と言ってもまずは、本馬がマクフィの産駒であること。
ここまでマクフィの日本重賞勝ち産駒は4頭。うち2頭は新潟千直で、1頭はダート千八。
ついにきた根幹距離の王道路線組、という感じですよね。

母父ディープインパクトを優先に持つ優秀な形で、馬体がほっそり出なければ形は理想のサンデー系。
お母さんのエルノルテが芝の千二で2勝しているのが意外な点で、ディープって確かミオスタチン遺伝子がT/T型ですよね。

するとお母さんはC/T型で頑張って千二を走っていたことに。スピード自体はかなり持ち合わせていたはずで、本馬にも表のスピードが伝わっています。

祖母のシーズオールエルティッシュはディープの嫁として導入された繁殖でしょうが、直系と母父がともにTurn−to系で、さらにそこへTurn−toゼロのサンデー系を配するというかなり偏った構成。

でも繁殖としてはこういう血の偏りこそ後の組み立てがしやすく、母エルノルテには取っかえ引っかえいろいろな父が試されています。

だからといってマクフィが大爆発するとは誰も思っていなかったはずで、おそらくは父の代表産駒の可能性が高い。果たしてその天井がどのくらい高いのか、あとはそこに尽きると思います。

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2頭目はヤンキーバローズです。

今年のファルコンSを鮮やかな末脚で制した馬ですが、当日私は指数を出していたわけでもなく、パドックですごく大人びた風格のある馬を見つけて「今日はこれが勝つ」と思い、ご存じのように複勝を少し買いました。それが本馬だったんです。

改めてちゃんと調べるとどうもタイキシャトルの形を継いでいるらしい。
まあ毛色も違いますし、そう似ているとも思いませんが、格好が良くて完成された馬体という印象は強かった。

この仔も母父ディープに父がエピファネイアでこのスピードだから、遺伝子的には希少な方の確率、つまりは少ないC型遺伝子を受け継いだはず。

そういう持って生まれた星の強さと、母系で3回もMAX活性を経ている体の強さ。将来なにか大きな仕事をやるならこういう馬かも。
シアトルスルーのクロスが回避されていれば、もっと大物だったでしょうか。

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そして最後3頭目がモンドデラモーレです。

父は残念ながら23年限りで種牡馬引退となったワールドエース。今は乗馬となって第3の馬生を送っているところですね。

母もかなりのベテラン繁殖でしかもちょうど2回目のMaxを超えてしまった年に生まれたのが本馬。
基礎体力のなさはいかんともしがたく、今はじっくり休養を挟んでの出走パターンが一番力を出せるローテですね。

そういう体質ですから、ファルコンSの前も熱発などがあって決して順調とは言えない中、それでも追い切りではビックリするほど走る。気性的にも仕上がってしまう。

前進気勢が強いので一度距離を短縮した後のマイル戦には課題が残りますが、マイル戦でレコード勝ちした父の名に恥じないスピードを持っているのは明らかなので、折り合えば一発あっていい存在です。

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NHKマイルC2025 G1解析動画、いかがだったでしょうか。

マイル戦はEQ指数が一番力を発揮する条件であり、その意味でも今年はNZT組に頑張ってほしいわけですが、最近は少し改良を加えたEQ指数・改の調子も上がってきましたので、またどこかで皆さんに大物を釣り上げてもらうことができるよう、引き続き週末の指数発表と検証を続けるつもりです。
どうぞお楽しみに。

今回の動画はここまでです。
ご視聴ありがとうございました。

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