▼凱旋門賞2025 ロンシャン攻略に重厚な欧州の血はいまだ必須 9.29

 

※これは9月29日YouTube動画の台本原稿です。

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こんにちは、ドルメロチャンネルです。
さて今回は10月5日にフランスで行われるG1・凱旋門賞の出走予定馬たちを、血統的に詳しく解説していきます。

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今年も日本から3頭の出走が予定されていますが、その日本勢を毎年悩ませているのがロンシャン芝コースの馬場状態です。

ロンシャンでは、今年の夏いっぱいをかけて馬場の一部改修工事が行われました。

排水の強化、土地の平坦化に加えて転圧までしたというので、フォルスストレート付近だけは以前と別物の馬場になっているようです。

ただしコースの他大部分は、以前と何ら変わらない重馬場だそうです。

その辺は今年アロヒアリイを出走させる田中博康調教師も、現地で実際に歩いて確かめたそうですから、あくまでコースの一部分だけ状態が良くなったという程度の認識でいいと思います。

やっぱり当日の馬場状態は大きなカギですね。

(3)
とはいえ今年の日本馬たちは、ここまでみな順調な調整過程を送っています。

シンエンペラーの帰国は残念でしたが、クロワデュノール、ビザンチンドリーム、アロヒアリイらがともに現地の前哨戦を快勝。
この3頭がそろって本番に駒を進めたら、さすがの欧州勢も今年ばかりはアブないんじゃないか…

現地の新聞でさえ「毎年の恒例行事ではあるけれど、控えめに言っても今年は前例のない状況だ」と警戒しているようですから、いやが上にも日本人ファンの期待は高まります。

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しかしこの時期ロンシャン競馬場の馬場が悪くなるのは、馬場の性質もさることながら、比較的お天気が悪いという時期的な要因が大きいです。

昨年もロンシャンでは当日まで毎日のようににわか雨が降り続きましたし、その前にはレースの時間だけどしゃ降り!なんていう災難の年もありました。

今のところ今年はそんなに悪い天気ではないとのことですが…

まあ凱旋門賞は、最後は実力というよりお天気頼みというガチャ要因が毎年避けられません。
だから私は今年も、例年通りの期待値で臨むのがいいと思っているのですがね…

(5)(5秒ジングル)

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ここからは最近の凱旋門賞勝ち馬の血統を見ながら、私が探している凱旋門賞血統のポイントをいくつかお話しします。

まずは23年の勝ち馬、フランスのエースインパクトです。

この年は彼が前評判通りの強い競馬をみせて無敗の凱旋門賞馬となったわけですが、あの圧倒的な切れ味を見せた彼でさえ、血統面では非常にオーソドックスな欧州的配合といえるものでした。

形は母系の奥深くにあるBustinoという古い系統に由来し、そこへ多くのクロスが乗っている。

クロスの内訳はNorthern Dancer、Danzigが活性値ありのままで、無害のクロスにはGalileoの祖母Allegrettaなどの名前も見える。

さまざまなクロスを無理やり集めるのではなく、クロスの材料として欧州で一番有意義そうなNorthern Dancer系を中心に、牝馬クロスでも味を足している。

どの程度弊害が出るかにもよりますが、欧州ではこういう配合が一流馬をたくさん生み出しています。

ようするにあの極悪馬場を走り切るには、目新しい形(シャシー)ではなく、クロスの集積とクッション性に耐えうる古い欧州の形が未だに必要だと、名馬の配合は物語っています。

これは血の新しさばかり追う目線だとなかなか理解しがたいのですが、少なくとも例年ロンシャンで輝く配合はほとんどがこのパターンだと考えられます。

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もう1頭、22年の勝ち馬アルピニスタを見ておきましょう。

彼女は珍しく晩成の一流牝馬で、結局5歳時の凱旋門賞が取消を挟んだ8連勝め、G1だけでも6連勝という破竹の勢いのままターフを去っています。

そのアルピニスタの血統ですが、まず彼女は父似か母似かぎりぎりタッチの差ではっきりしません。

もし父似ならフランケルの形、母似なら母系の奥深くDarshaanの形を遺伝していますが、2頭とも説明不要の欧州鉄板型であり、ロンシャン適性に不安はありません。

ここでDarshaanはともかくフランケルはよりスピード型では?と思う向きもあるでしょうが、元々フランケルの形の源は母系内、凱旋門賞馬のRainbow Questから来ています。

フランケル自身の配合もそれは見事に弊害を避けながらクロスを活かしているのでぜひ見てほしいのですが、形だけはやはり古い時代のものを再現しています。

いずれにしろ、そこへNorthern Dancerクロスの活性値ありが2本、弊害無しが2本、それぞれ乗る。

さらにGalileoは母Urban Seaのゼロ活性産駒なので、Miswakiのクロスにも弊害がありません。

こうしてなるべく弊害の負担を軽くしながら、古いシャシーにクロスを複数乗せてスピードとして活かす配合。
ワンパターンではありますが、凱旋門賞では慌てず騒がず毎年こういった配合馬を推してみたいものです。

(8)
まとめますと、
ドルメロ的 凱旋門賞適性血統とは

(1)欧州の古い形に多重クロスが乗る
 個別のあの祖先この祖先がいいというよりも、全体としてこのパターンに収束する

(2)中でもクロスの弊害が少ないほど、勝ち馬、歴史的名馬に近づく

こんなふうに考えています。

さて次のコーナーでは、今年出走する欧州のライバルたちの血統表を見ていくことにしましょう。

(9)(5秒ジングル)

(10)
まずはアヴァンチュール。4歳の牝馬で昨年の2着馬になります。

今年の前売りでも人気していますが、私も血統を見ただけならやっぱりこういう馬がロンシャンを走れるんだなと素直に感じています。

というのは、彼女は古いRainbow Questという優先祖先系の上に、Northern Dancerクロスが2本載った形でまさに王道のロンシャン配合であり、これ以上望むことがないから。
パターンそのまんまですよね?

昨年はさらにブルーストッキングという女王がいたため、ヴェルメイユ賞も凱旋門賞も2着止まりでしたが、その女王がいないなら、例えつまらなくても本馬にチャンスが巡ってくると考えるのが妥当なシナリオ。

今年も春先から調子を維持していますし、あとは運があるかどうかだけだと思います。

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続いてはミニーホーク。3歳No.1牝馬の呼び声高い1頭です。

ここまでオークスと名の付くレースを4連勝中。しかもここに来て強さにますます磨きが掛かった印象。ロンシャンに適性が合うならば、怖い1頭のはずです。

配合を見ると優先祖先は母父のDansiliで、その父デインヒルの3×3というクロスを持っています。
日本だとちょっとギョッとするような近いクロスですが、これが凱旋門賞の人気どころというのですから欧州血統はスゴいですよね。

Dansiliは確かに欧州の優先祖先としてはやや軽い部類に属します。
デビューから主にフランスで走り、ロンシャンの経験も豊富でしたが、古馬になるとアメリカのBCマイルにも挑戦して3着入線を果たします。

しかしこの結果はDansiliの適性というよりは実力だけでもぎ取った3着と言うべきで、Dansili本来の姿は母父のKahyasiに影響を受けています。

Kahyasiは英・愛ダービーを連勝した名馬で、そう軽い血統とは思えません。
ただロンシャンにドンピシャかと言われれば、アヴァンチュールよりはやや軽い程度と答えたくなります。

私はデインヒルクロスの真の効果が現れるのはもう少し先のこととみていますが、そろそろ時代の先駆けとして、この馬の存在が後世では語られるかもしれませんね。

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そして同じくDansiliの影響を受けるもう1頭の牝馬が、このカルパナです。

昨年10月の英チャンピオンズフィリーズ&メアズステークスでG1初制覇。
同じローテから今年はこちらの凱旋門賞に参戦してきました。

一般にイギリスやアイルランドの芝コースは、フランスに比べればまだ軽く走れる状態だと思います。

その高低差や自然のままを活かしたレイアウトはすごいのですが、芝自体はまだ軽い。
ニューマーケットやカラの重適性とロンシャンの重適性は、正直そこまでリンクするものではないと私は考えています。

となると、やっぱりDansiliという優先祖先はRainbow Questよりは少し軽めと考えるべきかもしれない。
ミニーホークもカルパナも配合の方向性そのものは合っている気がするけど、全体の印象としてアヴァンチュールの筋の通った重厚さには一歩譲る感じ。

父のStudy Of Manも結局ロンシャンでは今ひとつの内容でしたし、好走するにはもう少し良い馬場がほしいクチかもしれません。

(13)(5秒ジングル)

(14)
ここからはさらに良馬場が向きそうな軽い血のグループを紹介します。

まず1頭目がゲゾラ。今年の仏オークス馬です。

優先祖先は父か母か判然としませんが、母系はどこも軽そうな米系の芝適性が多く、また父のAlmanzor、祖父のWootton Bassettともに欧州では異例の軽さを持つ父系なので、ロンシャンの重馬場が有利に働くとは思えません。

そういえば本馬の祖父Wootton Bassettが、先日急死したというニュースが入ってきました。

シャトル先オーストラリアでの急変だったらしく、エースを亡くしたクールモアの衝撃はいかばかりかと察しますが、Wootton Bassettという種牡馬の成功パターンのひとつとして、このSpecialという牝馬クロスの存在が挙げられます。

SpecialはゲゾラのようにNureyevの母経由でクロスするパターンと、もうひとつSadler’s Wellsの祖母経由でクロスするパターン、この2つがあります。

現代の欧州においてさほど濃厚なクロスを考えなくてもこのSpecialを刺激できる希有な存在として、Wootton Bassettは一時代を築きました。

ただし後継のAlmanzorはアウトブリードで生まれており、父とは少し異なる成功例が出そう。父と息子ではきっと種牡馬としての役割が違うんでしょうね。

シャトル先の豪州産駒たちを見るとその辺が明らかですが、ここ欧州ではゲゾラのような配合が適しているのでしょう。

(15)
続いてはエストレンジ。アヴァンチュールに続く4歳牝馬2番手グループの一角です。

父のNight of Thunderは大種牡馬Dubawiのゼロ活性産駒で、この父が成功するということはそろそろDubawiも形としての役割からメジャーなクロス候補へと転換する兆しか?なんて考えたりしています。

本馬エストレンジはさらに父Night of Thunderのミニマム期産駒ですし、こうして時代は少しずつ動いていくのでしょう。

血統表をひと目見ても古い形で動いている気配がほとんどありませんし、実際優先祖先は古いですがミスプロと出ていますので、私は良馬場の方が向いていると思うのですが陣営は柔らかい馬場を希望しています。

これでもし母父のOasis Dreamがゼロ活性であれば、クロスの弊害が全くない素晴らしい配合として激推ししたいくらいですが、欧州ではこのままでいいんでしょうね。

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3頭目はダリズ。前走で日本のクロワデュノールに迫った3歳牡馬ですね。

本馬はぎりぎり母似で、母系のNight Shiftの影響が強いと思われます。

Night Shiftは非常に不思議な馬で、自身は米国のダートで未勝利を勝っただけの身ながら、種牡馬としては異例ともいえる成功を収めました。

フランスではダリズの祖母にあたるDaryabaが仏オークスやヴェルメイユ賞を勝つなど世界中で活躍馬を出し、適性としては万能ともいえる広さを誇ります。

ゆえにダリズもこのロンシャンの馬場をこなしていると言えるのですが、前走に関してはクロワデュノールも走れる程度の重馬場だったともいえるし、メンバーレベルもやや低かったので、このクラスに入ってどうなるかですね。未知の魅力はあると思いますが…

(17)(5秒ジングル)

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最後はいつものように私が気になる馬などをご紹介しておきます。

まず外国勢では地元フランスの5歳牝馬、クイジサーナです。

今年8月のドーヴィル・ジャンロマネ賞でG1初制覇という一見遅咲きの馬に見えますが、陣営によるとどうもそれは実力の問題ではなく、彼女の体質面で弱いところが抜けずにここまで出世が遅れたとのこと。

ですから出走してくるなら今の体調、馬体には問題がないという証ですし、実際に今年は1年の長期休養明けからここまで3戦使えているので、ようやく軌道に乗ってきたのでしょう。

母父Sea The Starsの形に、ドイツのKonigsstuhl(ケーニヒス・シュトュール)という珍しいクロスが弊害無しで発生し、配合面に悪いところはありません。

過去ロンシャンの重馬場では3着、5着と今ひとつの印象ですが、それも本格化以前の話。

今年絶好調のグラファール厩舎は本馬を含め3頭出しですので、日本でいうところの「一番人気薄を狙え」の格言通り、ここはあえて彼女にスポットを当ててみたいです。

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そしてもし日本勢に激走があるなら、私はこのビザンチンドリームではないかとみています。

3歳時にきさらぎ賞を勝った後はやや低迷しましたが、ラップ構成からは「もう少し前半ゆっくり流れるレースなら面白いところがあるはず」とみていたところ、今年2月のサウジ遠征に成功、そのあと春天2着を挟んで前走フォワ賞を快勝。
すっかり国際派ステイヤーとしての風格が出てきました。

クラシック当時は彼の血統面をあまり見てなかったのですが、改めて今回調査してみるとなんと彼は母ジャポニカーラの真のMAX活性産駒。

ステイヤーと言えどもこのアドバンテージはやはり大きいですし、高い基礎体力はまさに遠征向き。

トニービンの形にノーザンダンサーのクロスという配合も、日本で考え得る最良の欧州適性といえますし、やはり馬場次第でいいところがあるでしょう。

本番ではまずスタートを決めて、オイシン・マーフィー騎手の手綱に応えてがんばってほしいですね。

(20)
今年の凱旋門賞有力馬たちを、独断と偏見で重い配合と軽い配合の組に分けるとこんな感じになります。

私は有力とみる左の重い配合の中でも、まずはアヴァンチュールを重視して、少し差があってミニーホーク、カルパナ、それなら穴でクイジサーナも面白そうという見解です。

お天気がどうなるかですが、日本馬含め好勝負を期待しましょう。

(21)
凱旋門賞2025 海外G1血統解析動画 いかがだったでしょうか。

今年はやけに期待度が高まっている日本勢ですが、私はやはり例年通りの期待値で応援すべきだと思っています。

コースの一部を改修しただけではロンシャンの本質は変わりませんし、そこを攻略する欧州馬たちの配合内容も簡単には変わってきません。

日本馬には不利なアウェーの状況が続きますので、努めて冷静に健闘を称えたいものですね。

今回の動画はここまでです。
ご視聴ありがとうございました。

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