メンバー豪華も差し馬偏重に要注意
今年一年かなり活躍していい馬が勢ぞろいした京都金杯。
有力4歳勢の血統を診断していくが、他の馬も含め、とにかく差し馬が多い。
枠順と先行馬の並び順次第では、届かない差し馬が続出すると思われるので、差しー差しまで馬券を買っていいかは迷うところだ。
出身はすぐにわかるが意外と奥深いレッドアンシェル
▼レッドアンシェル(牡4・庄野厩舎)
父 マンハッタンカフェ
母父 Storm Cat
青鹿毛の流星クンなのでサンデー系であることは一目瞭然。
ところが俗に言う「Storm Cat牝馬にサンデー系種牡馬」の典型的ニックスを強調しようとするなら、その実情はだいぶ異なる。
Storm Catの父Storm Birdは、Northern Dancerの17歳時の産駒であり、血統的影響がない。よってこの一大ファミリーの根幹をなすはずの理由は、貧弱極まりないStorm Birdの母系に端を発している。
Storm Birdの母系には、傍系のテディ系が、しかも2本存在する。これ自体大変珍しいことだが、残念なことにそのうちの1本はBull Pageまでで途切れている。
であっても、傍系のかたまりであるStorm Birdとサンデー(これも母系はかなり貧弱&父系Haloの影響がない)が好相性であることは興味深い。
傍系は強めすぎてもダメだが、馬産地図にNorthern Dancerがあふれそうになっていた時代の救世主としては、2頭ともこれ以上ない活躍の舞台を与えられたと言ってよい。
脱線したが、これらのことから、レッドアンシェルの血統内に見えるHail to ReasonとNearcticのクロスは無効であることがわかり、同馬はアウトブリード並みの健康体を得ている。
素質十分でも全く無理をせずに3歳の夏を過ごしたことは、やや晩成だった父の歩みからいっても理想的で、古馬になってから相当活躍できる逸材だろう。
大物喰いのエネルギーは母系パワーとクロスにあり ラビットラン
▼ラビットラン(牝4・角居厩舎)
父 Tapit
母父 Dixieland Band
ローズSのとき、某サイトで「これは大物を喰う」と紹介し、少しだけいい思いをした牝馬。
自身は栗毛なので母系から影響を受けた馬であることは間違いないのだが、父Tapitにしろ、母Ameliaにしろ、両方とも母系があまりにも強すぎて、代々つけられた当代一流の種牡馬たちでも全く歯が立たなかった(毛色さえ発現しなかった)というゴッドマザーファミリー。
そのオスメス同士が結ばれて「いったいどっちの女系が強いのか」ガチ勝負をした結果がこのラビットランというわけ。
だからラビットランは栗毛の牝馬に産まれなかったら走ったかどうか怪しい馬で、その競走能力の源はもちろん栗毛の大種牡馬・Alydarである。
血統表上にたくさん生えているクロスの大部分は生きており、これが活きて瞬発力やスピードにつながっているうちはいいが、ちょっと歯車が狂うと「もろさ」や「精神的な煮詰まり」などに発展する。
クロスはいつでも諸刃の剣なのだ。
ちなみにひとつ下の弟・アサクサゲンキ(牡3・音無厩舎)は、母
Amelia17歳時の産駒で影響力がないため、もろに父系の血が出たスプリンターとして生まれている。
Tapitは確かに距離の融通性がある種牡馬だが、ラビットランのそれはTapitから来たものではない。