ユタカが手放すわけがないほどの大物です
グレイル(牡3・野中厩舎)は、昨年までは2歳時に新馬と京都2歳Sを勝っただけのいち有望株でしかなかった。
ひとつ上の世代、カデナ(牡4・中竹厩舎)もそうだったように、この時期というのはOPレースも少ないから、1勝馬クラスの特別戦の代わりに重賞を勝ってしまう優等生クンが多い。
しかしだからといって、その馬がクラシックまでぶっこ抜くかといえば…それは春にならなければわからないことだし、ねえカデナくん。
ところがこのグレイルくんの場合、休んでいる間に負かしたはずのタイムフライヤー(牡3・松田国英厩舎)が中山の新設G1・ホープフルSを勝っちゃった。
自分では何もしないうちに評価がうなぎ登りとなり、がぜん次走・共同通信杯に注目が集まったわけである。
母父の血統的影響は全くない
さてさっそくグレイルの血統面を見ていこう。
彼の血統背景はシンプルそのもの。
というのは、代々つけられた母系の種牡馬に影響力の強弱があまりなく、わずかに父ハーツクライまたは4代前のSilver Hawkが目立つ程度。それとて誤差の範囲でしかなく、引っ張り出されている先祖はハーツあるいはサンデーで間違いない。
母父のロックオブジブラルタルは、現役時の絶対的な強さとは裏腹に、種牡馬としてはあまり成功したとは言えなかった。
というのはその父デインヒル自体がダンチヒの影響を受けていない種牡馬で、デインヒル自身はそれによって血の集結に成功したが、子どもたちには「母系次第でさまざま」という特徴に欠けた血統背景を与えることになってしまったからだ。
ところが母プラチナチャリスはロック9歳時の産駒で、なんとこれもまた血統の影響を受けない。
母父系はもはや表から消えたも同然の存在で、よって少し心配だったロックのNorthern Dancerクロスも消え、ハーツクライ由来のNorthern Dancerクロスも悪さをしない、ということになる。
現時点でライバルを凌駕する体力面
さてこれまで今年の3歳牡馬を何頭か血統面で見てきているが、いまだこれといったチャンピオン候補には巡り会っていない、というのが本音だ。
中でもよくつぶやいているのが「体力面での心配」である。
先週きさらぎ賞でドカ負けしたダノンマジェスティをはじめ(あれは口向きの悪さも見せたが)、有力馬にこれからの激戦を乗り切るだけの基礎体力がないようなのだ(あくまで血統面で)。
その点、このグレイルはその心配が少ない。
名馬のように強大とはいわないが、調教をこなしながら十分春後半まで激流を乗り切る素地はある。
というか、今年やっとこういう馬を見つけた。
その大本は、母プラチナチャリス(9歳時)がグレイルに生涯最大級の活性を与えているから。
プラチナチャリス自身は1月24日の早生まれで、グレイル(3月7日生まれ)を受胎した当時(11か月前の2月上旬)9歳になったばかりのよい発情がきていたはず(想像)。
これがまごまごして4月頃の種付けだと、同い年でもニッチモサッチモいかない馬だったと思うが…。
しばらくは彼にベットし続けていいクラスの良質牡馬である。
間違っても口向きが、とかレース後に言わないで欲しいけど。