もうこんな話題馬がデビューしちゃうと聞いたので
ちょうどキャロットクラブさんに順番が回ってきましたので、オルフェ編の前に、今週デビューを控えている話題の新馬・サートゥルナーリアくんにご登場願いましょう。
▼サートゥルナーリア No.52
牡2・角居勝彦厩舎
父 ロードカナロア
母父 スペシャルウィーク
3月21日生まれ 鹿毛
母は自らもG1ウィナーであるシーザリオ。
きょうだいにはエピファネイア、リオンディーズらを有する現代の名門牝系であります。
【診断結果】
・優先祖先 父の父 キングカメハメハ
・馬場、距離適性 芝のマイル
・基礎体力値 56(平均50)
・スピード 良好
・頭脳 普通
・総合 ★★★★(満点は5つ)
母シーザリオは「強いけど足元の弱い馬」という印象でしたが、今回きちんと調べると、基礎体力も今年の息子と同程度(56)ありましたし、また繁殖サイクルが逆転した形跡もありません。
よって実際のところは、有り余るスピードにまだ3歳の身では体がついていかなかっただけではないかという気がします。
ファミリーヒストリーを語ってみる
母の母キロロプリミエールも娘同様、国外産ながら米国の芝重賞(11ハロン)を勝った馬。
父サドラーズウェルズの活性MAX年産駒で、晩年にはオーストラリアへ渡って繁殖を続けていたようです。
母母の良い発情期は3月29日から5月29日。
偶数歳の産駒である娘シーザリオ(4月31日頃)はこの中に入っているので、偶数歳が彼女の表年にあたります。
初仔である07年(奇数歳)のキンカメ産駒は、シーザリオの表の発情期(3月14日から5月14日)から抜け、スピード面は合格だったものの、体質の弱さから1戦1勝で引退。
2番仔(同じくキンカメ産駒)は良い発情期から抜けてしまい、また病気もあって死亡。
次の年、失意のシーザリオにはなぜかウォーエンブレムが付けられることに。
ところがこれが彼女の、そしてファミリー全体の思わぬターニングポイントとなります。
ご存じの通り、このウォーエンブレムは「繁殖活動が難しい種牡馬」で、種付けも進まなければ、産駒もあまり産まれないという困った性質がありました。
この08年はそれでもよく種付け量をこなしたシーズン(結局約3割程度の受胎率)でしたが、残念ながらシーザリオには受胎しませんでした。
図らずも空胎となり、初仔同様に体力ボーナスを得られるはずの翌年、シーザリオに種付けされたのはシンボリクリスエスでした。
現役時の活躍ぶりから見ると、それまで意外なほど産駒に恵まれていなかったSクリスエスですが、この2010年産駒は大当たり!
実は2010年のSクリスエスは繁殖的には「劣性期」にあたり、自身の良さを強調できるシーズンではありませんでしたが、それがかえって母シーザリオの良さを前面に出す結果となりました。
こうして産まれたエピファネイアは、母母父・サドラーズウェルズを経て(ノーザンダンサーは劣性期)Bold Reasonの母・Lalun(1952)が優先祖先でした。
Lalun自身は米国で走ったのでダート経験しかありませんが、その父Djeddah(1945)は、仏国産ながら英国のチャンピオンSやエクリプスSを勝った芝の一流馬です。
母シーザリオの良い発情期は3月14日から5月14日で、エピファネイア(3月11日頃)はわずかに外れているように見えますが、実際にはこのごく初期に入っていると思われます。
名牝シーザリオに課された最後の「宿題」とは
その後も
12年クローディオ(父ハービンジャー中性・3月8日頃種付け→BAD)
13年リオンディーズ(父キンカメ劣性期・3月1日頃種付け→奇数歳なので外れてOK)
14年グローブシアター(父キンカメ中性・3月14日頃種付け→OK)
15年シーリア(父キンカメ優性期・4月17日頃種付け→BAD)
と活躍馬を出し続け、繁殖牝馬としてもその実力をいかんなく発揮したシーザリオは、今年新たなステージに進もうとしています。
もう一度よく見ると、今まで大成した産駒はどれも、父が劣性期〜中性であるが故に母の良さを押し出した馬ばかりでした。
彼女に残された最後の宿題、それは
▼種牡馬が優性期にある時、はたして彼女の仔は走るのか
ということです。
初仔のトゥエルフスナイトは体質面、15年のシーリアはスピード面でこの課題をクリアーできませんでしたが、今年デビューのサートゥルナーリアは体質、スピードともに一定のレベルにありそうで、これぞシーザリオ産駒の集大成ともいうべき1頭。
父ロードカナロア(バリバリの優性期)は奇しくも母にたくさん付けられたキンカメの産駒。
よってキンカメが優先祖先であることは相性的にも問題はなく、むしろ種牡馬ロードカナロアの可能性を今まで以上に広げることも十分考えられます。
血統から見ても、ファミリーの行く末から見ても、サートゥルナーリアはとても興味深い存在です。