今年の菊花賞は相当クサいとにらんでいた
春の牡馬クラシック2冠はオルフェーヴルとディープの仔で決まったものの、ディープの仔は秋の盾へ(結局体調不安で回避)、オルフェの仔は神戸新聞杯を惜敗と、距離延びて今ひとつ主役が戻りきらない今年の菊花賞戦線。
過去10年の傾向を見ると、3冠クラスの名馬が能力差でここも奪取するケースと、結果的に見て生涯菊だけに終わった「一発回答型」が勝つケースの2つに分かれる。
ならば今年はどう見たって「一発回答型」を探すのがスジというもの。
さっそく過去10年の例をひもとき、今年最も菊一発に近い存在を探し当てることにしよう。
距離克服はやっぱり優先祖先次第で決まる
【菊花賞一発回答型 血統詳細】
08年 オウケンブルースリ 05.2.24生
父 ジャンポケ1/8
優先祖先 Bald Eagle(1955)
ワシントンDC国際(芝12ハロン)勝ちなど
09年 スリーロールス 06.4.26生
父 ダンスインザダーク4/8
優先祖先 ダンスインザダーク
菊花賞勝ち
10年 ビッグウィーク 07.3.20生
父 バゴ5/8
優先祖先 Nashwan
英ダービー、キングジョージ勝ちなど
14年 トーホウジャッカル 11.3.11生
父 スペシャルウィーク7/8
優先祖先 セントクレスピン(栗毛・1956)
凱旋門賞勝ちなど
現役馬を除くと、上に挙げた4頭が「一発回答型」に属する菊花賞馬となる。
なお、父の名前の横にある「1/8」の数字は父馬の活性値を表し、MAXを8としたときの強さになる。
すぐにわかるのは4頭ともに優先祖先が「芝12ハロン以上のG1勝ちがある種牡馬」であること。(牡という性別も重要)
たとえば08年の菊花賞馬オウケンブルースリは、父ジャンポケのミニマム期産駒であり、優先祖先は母父Silver Deputyの母系をさかのぼったBald Eagle(1955)。
14年の菊花賞馬トーホウジャッカルはちょっとレアケースで、父のスペシャルウィークがMAX活性一歩手前の強さなのに、その父サンデーがゼロ活性なので、優先祖先はSウィークの母系にいるセントクレスピン(1956)に移る。
なお、サンデー系の仔でありながらトーホウジャッカルが珍しい栗毛だという理由も同じくここにある。
このように現代では、父にステイヤーを配してその距離適性に賭けるというやり方はせず、「父をあえて劣性期にし、その母系に眠るスタミナ系種牡馬の底力を引っ張り出す」手法が主流。
よって09年スリーロールスのような、父=菊花賞直結という配合はおそらく彼が最後となるだろう。
さて今年のメンバーにこれを当てはめると?
この理論を踏まえて、菊花賞2018のメンバーをJRAの出走馬決定順に上から見ていくと、
エタリオウ 15.2.13 青鹿毛
父 ステイゴールド4/8
優先祖先 Broad Brush(1983)〜Turn to Talent(牝・1963)
グレイル 15.3.7 黒鹿毛
父 ハーツクライ5/8
優先祖先 サンデーサイレンス
ジェネラーレウーノ 15.1.27 青鹿毛
父 スクリーンヒーロー2/8
優先祖先 Barmistress(牝・1989)〜Alydar(1975)
例えばここにきて評価急上昇のエタリオウだが、父ステイゴールドはちょうど中性期にあたり、優先祖先は母系のMAX活性馬・Broad Brushへと流れる。
Broad Brush自体は距離万能の米国ダート馬も、祖先は芝のマイラー牝馬から来ている流派なので、芝適性自体は問題ないが、三千という距離については何ともいいがたい感じがする。
グレイルは問題外として、その下ジェネラーレウーノについても父劣性期はトレンド通りだが、その肝心の行き先がやっぱり米国ダート王者Alydarにたどり着くので、うーん、距離三千はどうなんでしょう…。
(逆に彼の類い希なる小回り適性はここからよ〜く感じる)
と見ていくと、1頭おもしろい馬がいることに気がついた。
それが、メイショウテッコンである。
彼こそ正真正銘、最後の父=菊花賞パターンだ!
メイショウテッコン 15.4.17生
父 マンハッタンカフェ 98.3.5生
優先祖先 マンカフェ? or Lemon Drop Kid?
父と仔の誕生年を見ていただくと、Mテッコンはマンカフェの17歳時産駒で、MAX活性またはゼロ活性を継いでいるとわかる。
ところがMテッコンの母父Lemon Drop Kid(1996)も母種付け時にMAX活性を与えており(これは確定。しかも9歳誕生日前の疑似MAX)、あとはマンカフェの種付け日を特定するだけで優先の行方がわかる。
ところが単に計算すると、Mテッコンの種付け日はマンカフェ9歳2か月を12日だけ過ぎていることになり、このままだとゼロ活性→Mテッコンはダート馬、の図式が成り立ってしまう。
そこで今度は繁殖サイクルに目をやると、
Fagers Charisma 76.2.25 2.11〜4.11
Raging Apalachee 88.4.19 ぐ× 4.3〜6.3
バーモントガール 97.5.9 き(○) 4.23〜6.23
エーシンベロシティ 05.1.30 ぐ× 1.13〜3.13
メイショウテッコン 15.4.17 ぐ○ →ぎりBAD?
もうおわかりだろうか。
Mテッコンは判定的には「ぎりBAD判定4日」であり、彼が重賞勝ち馬である現実を受け入れるならば、やっぱり本当の種付け日はOK側に何日かズレていたと考えるべきなのだ(つまりサイクル的には「ぐ×」でないとおかしい)。
そしてそのズレが12日以上前であれば、
▼メイショウテッコンはマンハッタンカフェのMAX活性産駒かつ優先祖先かつOK判定復活
つまり、全ての現実が一本の線でつながることになる。
基礎体力は
0.25+1.75+2.0+0.75=4.75→59★
と、2代母バーモントガールのMAX活性を含む平均値以上で、さすがにいくつもG1を獲る値ではないものの、ここで伏兵以上の働きをする素地は十分にある。
というわけで本欄では、有力どころでもっとも菊に近い「一発回答型」馬は、メイショウテッコンであると結論づけておきたい。
オマケとして穴馬をご紹介
さて同じ視点で他におもしろい馬はいないのか探してみると、
▼グロンディオーズ 15.4.10生
父 ルーラーシップ7/8
優先祖先 キンカメ
基礎体力 59
▼ユーキャンスマイル 15.5.3生
父 キンカメ5/8
優先祖先 Blakeney
基礎体力 41
この2頭はひょっとしたらひょっとしてもいい感じ。
キンカメ系は英国ダービー馬Blakeneyの影響が強いので、距離が保つ馬がよく出る。
ぜひ3連系の最後の3着の1頭くらいには加えておいてほしい。
菊花賞は、荒れるならとことん荒れるレース。
春クラシックの残像を引きずることなく、あとは血の宿命に全てを託してみる。