世間ではまだホープフルSも終わってませんが、今年の年度代表馬はこの馬で決まりでしょうから、今回はこんなに強かったのになぜか一度も血統紹介していないアーモンドアイについて、遅ればせながらじっくり見ていきます。
アーモンドアイ(牝3・父ロードカナロア・鹿毛)
【牝 系】
Stolen Hour 53.4.15 3.29〜5.29
Best in Show 65.4.29 ぐ× 4.13〜6.13
Sex Appeal 70.5.12 き○ 4.26〜6.26
ロッタレース 92.3.3 ぐ× 2.17〜4.17
フサイチパンドラ 03.2.27 き○ 2.13〜4.13
アーモンドアイ 15.3.10 ぐ(×)
3代母Sex AppealはEl Gran Senor(1981・英2000ギニー、愛ダービー勝ちなど)やトライマイベスト(1975・デューハーストS勝ち)の母で、2代母ロッタレースはSex Appealの最後から2番目の仔になります。
ですが現代まで残った牝系そのものとしてはこのロッタレース系が一番上質な子孫であり、フサイチパンドラ&アーモンドアイのように脈々とG1勝ちの母を残すラインはもはや貴重です。
繁殖サイクルも非常に明解&良好で、母フサイチパンドラまではSex Appeal系のリズムである「奇数間隔年にサイクル内、偶数間隔年にサイクル外=き○ぐ×」がきちんと踏襲されています。
募集時には確定できなかったひとつめの不安
ご存じのようにアーモンドアイはシルクさんの募集馬であり、1歳馬募集の時点で「おお、これは大物だ!」と簡単にわかればいいのですが、あいにく彼女には出資前にどうしても知っておきたい2つの不安要素がありました。
まずひとつめの不安。
それは彼女自身の繁殖サイクル(いつもの記事ではスピードサイクルと表現している)が「ぎりBAD3日」判定に当たること。
ブログ内のクラブ馬特集記事の注意書きにはいつも
→馬体が良い、牧場評価高いなどの推し材料があれば、積極的に「ぎりBAD」までは狙っていけるかもしれません。
→ぎりBADについては、こちらでも「狙えるぎりBADかそうでないか」を積極的にコメントしていきます。
と記してきました。
そしてこのアーモンドアイの事例こそが「ぎりBAD判定」の難しさと爆発力を体現したものであり、G1級の産駒を狙って獲るならぎりBAD判定馬から、と言い続けてきた理由でもあります。
確かにぎりBADは一歩間違えれば「ただのBAD馬」である確率も高いのですが、アーモンドアイの場合、実際の種付け日があとわずか4日でも遅ければ、母の一番よい繁殖期の「さらに超初期」に種付けされたことになり、G1馬の母から獲得できるスピードとしてはベストに近い条件であることが明白です。
ぎりBAD判定にはもうひとつ、母の繁殖期の後期にズレないとOKにならないパターンもあります。
しかしサイクルの後期は初期に比べて良いスピードが得られない可能性もあり、こちらは普段私が言うところの「推せないぎりBAD馬」ということになります。
もともと野生馬は草原の草食動物ですから、ひとたび繁殖期が来れば早く種付けを済ませないと肉食動物に襲われる可能性が高いのです。
そして妊娠した牝馬の血液は酸性から中性に傾くといわれ、なんと競走能力が高まります。
追っ手から素早く逃げられ、子孫を残しやすくなるんですね。
実際、古い時代の競馬でも「種がついたまま競走馬として走った牝馬」の記録があります。
競走馬が足りなくて、不受胎(のはずの)牝馬を競馬に返していた時代のことです。
とにかく妊娠中の牝馬は走りますので「馬体が増えながら走るのはおかしい、おかしい」と思われながら、何勝もした活躍馬がいるそうです。(ついに妊娠が判明して牧場に帰り、のちの天皇賞馬を産んだ例もあり)
失礼、大分脱線しました。
とにかく牝馬に発情期が訪れたら、シーズン中わずか2、3回しかない絶好の種付けチャンスをなるべく早くものにすることが大切です。
その結果として母の繁殖期の超初期に種付けされたG1級のスピードを持つ馬は「ぎりBAD判定(かつ前半外れ)」に分類されることが多くなるのです。
彼女の唯一のウィークポイントは基礎体力だ
ふたつめの不安は、アーモンドアイの基礎体力です。
今年彼女が走ったレースは全部で5戦。
シンザン記念(3か月)桜花賞(中5週)オークス(夏休み)秋華賞(中5週)ジャパンカップ
ですから今年はトライアル→(中2週)→本番、というよくあるスタイルを一度も経なかったことになります。
実はこのロッタレース牝系の一番の泣き所が「基礎体力の乏しさ」なのです。
G1馬であり生涯21戦を戦った母フサイチパンドラでさえ、基礎体力は56でしかありません。
たとえば3歳時フラワーC2着後の中2週桜花賞が14着(次走中5週のオークスでは12キロ体重を戻して2着に)、4歳時夏の札幌記念勝ち後中1週のエルムSは11着(ダート適性自体は川崎エンプレス杯2着で十分あった)など、間隔が詰まると苦戦傾向のある競走馬でした。
ましてや基礎体力44の娘アーモンドアイが3歳時からレースをバシバシ使えようはずもなく(強すぎるためムダに走らなくていい特権があったのは幸い)、「秋華賞はよくて7割」という仕上げ具合は、この秋の最大目標が「牝馬3冠」よりはJCであったことを示唆するもの。
基本的な仕上げさえできていれば同世代には負けるはずがないという自信と、彼女の体質を読み切った陣営の勝利とも言えます。
来年は「海外挑戦」の運びとなるのでしょうが、ファンとしてアーモンドアイは基本的に遠征には向かないタイプであることは知っておいた方がいいでしょう。
有馬で引退したサトノダイヤモンドのオーナーである里見治氏が「ダイヤモンドは凱旋門賞遠征でおかしくしてしまった。欧州には欧州が向く馬で行くべきだと改めて感じた」と語ったように、遠征に耐えられる資質は競走部門とはまた別のものがあります。
今後里見オーナーは現地欧州で見つけた馬を現地厩舎に預ける形で再び凱旋門賞を狙うそうですから、ダイヤモンドの遠征経験も何一つムダにはなっていません。
いかがでしたか?
アーモンドアイが初期活躍型であることは基礎体力からも明白ですので、したがって自分は来年後半にはまた別の新勢力(とくに強い明け4歳世代から)がG1戦線に台頭するのではないかと見ています。
アーモンドアイはドバイや香港遠征ならいい結果が舞い込むかもしれませんが、凱旋門賞はどうでしょうねぇ…。
ま、彼女には来年もそんな心配を吹き飛ばす大活躍を期待しましょう。
アーモンドアイのサイクルについて見ていたら出産予定日と実際に生まれた日が全く一緒でしたね。
4日遅いということにはなりませんでしたが、生物のことですから良い繁殖期が少しくらい早まることもあると思うんです。
そういえばスペシャルウィークのゼロ活性の件もそうでしたね。
サイクルでは一週間とはいかなくてもこれくらいの誤差はあると考えて良さそうですが。
G Iで活躍するような馬はやはりサイクルの初期に入ってる馬が多いような気がします。
デアリングタクト(初期から3日)
デアリングタクトについては未だに謎。
母(デアリングバード)が裏であれ母に逆らわない方がいいんですかね。
初期=絶対的なスピードと考えるとデアリングタクトはマイルくらいの方が合ってるなんてこともあるかもしれないですね。
それともデアリングタクトは逆の方(良いサイクルの後ろの方)に入っていたか。
それだと中距離やクラシックディスタンスをこなすのにも説明はつく?
今後のデアリングバードの産駒に注目ですね。