芝の新馬戦が終了したので、今週の1勝馬クラスから注目の存在をピックアップしてみます。
この時期に、しかも平場の500万下から始動
金子真人オーナー、堀厩舎、J・モレイラ騎手のゴールデントライアングルで昨年10月の新馬初戦を制したブーザー(牡3・父マンハッタンカフェ)。
あれから5か月が経ち、春のクラシックの行方も最終盤というこの時期に、陣営は今週の日曜中山6R、しかも平場の500万下から再始動するローテを選択した。
そこにはこの馬の適性を考えた周到な戦術が見え隠れしているのだが、それはきっとブーザーを「クラシック候補」に指名していた一部ファンからは受け入れがたい結論なのかもしれない。
ブーザーの5代血統を解析する
▼ブーザー(2016.2.9生・青鹿毛)
父 マンハッタンカフェ(1998) 活性値1(ミニマム期)
母父 Danehill Dancer(1993) 活性値5
3代父 Be My Guest(1974) 活性値3
4代父 Elektrant(1978) 活性値2
ちまたではブーザーを「マンカフェ最後の大物」などと吹聴する向きもあるようだが、残念ながらブーザーはマンカフェの劣性期産駒であり、従って「母似」の仔であることがわかる。
母方で一番活性値の高い父系は母父のDanehill Dancer、また活性値の差は5−1=4だから、優先祖先は4代前のデインヒルの母・Razyana(1981)となる(デインヒルはDanzigのゼロ活性産駒につき)。
しかしこれだけだとちょっと適性がわかりづらいので、さらにRazyanaの優先を調べると、
▼Razyana(牝・1981.4.18生 鹿毛)
父 His Majesty(1968) 活性値4
母父 Buckpasser(1963) 活性値2
3代父 Native Dancer(1950) 活性値6
4代父 Mahmoud(1933) 活性値5
優先はNative Dancerの系統を6−4=2(世代)さかのぼった名牝・Natalma(1957)ということになる。
NatalmaはNorthern Dancerなどの母である一方、現役時はダート6ハロンの重賞で入着するなど、快速系の適性が高かった。
もしRazyanaがNatalmaを優先祖先とするならば、Razyanaの中にもスピード優先の因子があるはずで、結果的にブーザーの中にもスピード優先の因子が組み込まれた可能性が高い。
ブーザーから見てNatalmaはいまだ6世代しか離れていない祖先であり、いつもの理論でいくとぎりぎり影響を受ける世代間であるといえるだろう。
よって、クラシック候補であるはずのブーザーが千四あたりでデビューしたのは、陣営に「こやつは基本スピード馬」という見立てがあったからで、いつも間違いのない一流厩舎の慧眼にはやはり恐れ入る。
ブーザーはワールドエースやワールドプレミアの近親であり、なおかつマンハッタンカフェ産駒でありながら、この先は距離的な不安と闘いながらの現役生活になるとは、誰が想像できようか。(一流マイラーになればいいだけのことだけど)
しかしこの馬にもMAX活性の恩恵がある
ブログで取り上げる馬は配合的妙味があるから取り上げるわけで、凡馬がまな板に上がることはないのだが、ブーザーも基礎体力面では非常にレベルが高い。
母 マンドゥラ(2007) ★2.0
2代母 Mandellicht(1994) 1.0
3代母 Mandelauge(1989) 1.0
4代母 Mandriale(1975) 1.25
2.0+1.0+1.0+1.25=5.25 →★66
これだけあれば連戦にも耐えられるだろうし、遠征競馬にも強みを発揮する。
ワールドエースやワールドプレミアも同様で、2代母Mandellichtの系統は基礎体力に不安が少ない。
確かにワールドエース(母マンデラのMAX活性馬)は足元の不安で長期離脱を余儀なくされたが、ケガを癒やした後にマイラーズCでレコード勝ちするなど、体質そのものは頑丈にできている。
3歳春時点の扱いは違えど、もしかすると結果的にブーザーも同じく母のMAX活性産駒であることから、ワールドエースのようなマイルでレコードを出すタイプかもしれない。
またNatalmaの血が騒げば、ダートのスプリンターに進化することだってあるだろう。
【 結論 】
ブーザーは基礎体力優秀な一流マイラーの可能性大。スプリンターへの進化もあり得る
陣営の真の狙いは「NHKマイルC」であり、そこに照準が合えばいいのだから寒い時期には無理する必要がこれっぽっちもなかった、というわけだ。
でも復帰戦の中山マイル戦って、適性はどうなのかなあ…。