※これは5月27日YouTube動画の台本原稿です。
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こんにちは、ドルメロチャンネルです。
さて今回は、3歳馬の頂点を決める競馬の祭典・日本ダービーを展望していきながら、EQ指数が持っているもうひとつの顔をあらためてご紹介していきます。
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先週のオークスもそして今週のダービーも府中の芝2400で行われますが、この時期の3歳馬たちにとってダービーの12Fという距離は、ある意味現時点での限界に近い長距離戦であると言えます。
一部の特別やトライアルを除けばここまで全く距離経験がないまま臨む馬が多いですし、もう走る前から「距離の不安は覚悟の上」という馬さえいるでしょう。
私も3歳の春に2400の資質を問う時代がいつまで続くか疑問を持っている一人ですが、そんな厳しいG1を勝ち切るスターホースの条件とは何なのか、今回はEQ指数をまた別の視点で使いながら、今年のダービー馬候補をあぶり出していきます。
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さてEQ指数がもつもうひとつの顔、それは若駒のスピード成長曲線であるという側面です。
1頭の馬がデビューした後、好走した際のEQ指数を時間軸とともにプロットしていくと、グラフ上にはその馬の特徴をよく表した曲線が描かれます。
これは昨年の菊花賞動画でもご紹介した話題ですが、よく考えますとダービーのあと3歳牡馬は菊花賞に向けた長距離路線へ進みますよね。
ですからその馬が持つスピードの絶対値を知る指数はすでに皐月賞までにだいたい出そろっているんです。あとはそのスピードをどのくらい維持できる力があるか、それをグラフから読み取りたいのです。
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ではここで質問ですが、近年のダービー勝ち馬が皐月賞までに描くEQ指数曲線とはいったいどんな軌跡を描くでしょう。もっといえば、グラフの上の方に点が集まるのか、いやいや下の方に点が集まるのか…どうでしょうね。
縦軸はEQ指数の大小、横軸はデビューからの年月を表しています。
EQ指数の特性などもよくお考えいただくと、ちょっとひらめくかもしれませんが、さてあなたのお考えはどちらでしょうか。
(5)(5秒ジングル)
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近年のダービー勝ち馬が描くEQ指数曲線はA群なのかB群なのか。
EQ指数が大きいということは、ゆっくり走る能力に適しているということ
EQ指数が小さいということは、速く走る能力に適しているということ
ならばダービー馬の描く成長曲線は、
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はい、実はこれが近年のダービー勝ち馬のEQ指数曲線です。
あれ? なんかAでもBでもないような。
そうなんです、ごめんなさいね。実は皆さんに感じてほしかった曲線の形は、AでもBでもなく、Cの右肩下がりの曲線群だったんです。
でもこれってダービー馬の特性をよく表していると思いませんか。
Aの長距離型でもなく、Bのスピード特化型でもない。ちょうど真ん中のいいとこ取りのような形ですよね。
もちろんA群だけのような馬も、またB群だけのような馬も存在します。
しかしAやBの馬は、ダービーを勝ちきるような適性馬ではないことが多い。
Aはより菊花賞向きで、Bは皐月賞やマイルカップ向き、昨年だとAはヘデントール、Bはメイショウタバルが代表例でした。
昨年の菊花賞のときもお話ししましたが、サラブレッドの距離適性の半分以上は、実はデビューから2、3戦のうちに自ずとわかってしまう傾向にあります。
デビュー時のEQ指数が大きな馬、大きな指数で勝ってきた馬は、まず長距離に適性がある。
さらにキャリアを重ねると指数が段階的に小さくなる。つまりスピードに目覚めながら、自分のMAXレベルのスピードに当たるまで指数が下がってくる。
これを2歳から3歳春にかけて経験するため、結果としてダービー馬たちの成長曲線は右肩下がりになるというわけです。
この成長曲線は、言い換えれば「1頭の馬のスピードと距離適性のせめぎ合いの図」でもあるのです。
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では今年の有力馬たちのグラフはどうなのか。このグラフはクロワデュノール、マスカレードボール、ファンダム3頭のEQ指数曲線です。
ご覧のようにこの3頭はタイプが全く違う馬たちで、3歳春時点での分類ではマスカレードボールがA群、ファンダムがB群、そしてクロワデュノールがC群ということになります。
グラフ中の点線は4.0あたりを示していて、このあたりが歴代ダービー勝ち馬の指数が始まるレベルになります。
つまりマスカレードボールは距離適性は十分だが、スピード面でレベルに達していない長距離型
反対にファンダムはスピードは十分達しているものの、速すぎて距離適性が不安な中距離型。
結果としてこの中ではクロワデュノールのダービー適性が一枚上ではないか、グラフからはそう判断できます。
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これは今年の有力馬たちの中で、残念ながらダービー以外に適性がありそうな馬たちのグラフです。
マスカレードボールとファンダム以外では、前走京都新聞杯を勝ったショウヘイも今のところはA群の長距離型とみています。
で難しいのは、皐月賞馬ミュージアムマイルの選択です。
私はこの馬の本質は中距離にあると見ています。
もっというと古馬になれば11Fの宝塚記念あたりがバッチリハマる馬ではないかと。もちろん同世代どうしではあと1Fの違いは苦にしないかもしれませんが、決して距離延びていい馬のグラフには見えない。そういう意味でこちらに分類しました。
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ではEQ指数曲線からみたダービー適性が高い馬たちを挙げていくと、まずはクロワデュノール。これは歴代の3冠馬とも遜色ない形でここまで成長を遂げています。
人気ですから、あまり深く考えずに安定した馬券の相手として筆頭に挙げておきたい。
面白い形をしているのは、サトノシャイニングです。
サトノシャイニングの新馬戦は指数にして7.7というとんでもないスロー戦でした。
それも勝ちながらなおかつ指数2.9というきさらぎ賞の勝ち馬でもある。この両極端な2面性をどこまで信じるか。
12Fで指数2.9は例年のダービーですと、あのロジャーバローズが逃げ切った究極の持続戦に匹敵する高レベル。
それでいながらこの4番人気想定はちょっと意外なのですが、この2.9が強い中距離適性を示している可能性がひとつ、さらに皐月賞でもお話ししたように彼は基礎体力がかなり低くて、もともと連戦に向かない体質であることがひとつ、というわけで私は今回のダービーではなく秋緒戦を大きく狙う方が旨味がある気がしています。
ということで、またまた私のダービー本命候補に挙がってくるのが緑のライン、ジョバンニですね。
ジョバンニの何がそんなに好きなのか、といわれれば困ってしまいますが、グラフ上は非常にきれいな右肩下がりを描いていますし、またスピード的にはあのクロワデュノールより優れているレースもあったこと、さらにはもともと先行脚質であることも推し材料ですね。
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こちらはダービーに適性がありそうな馬たちの2枚目です。
本来なら穴としてこういう馬を積極的に挙げてみたいところ。
ですがファイアンクランツ、マイユニバース、そしてレディネスともに直近のレースでダービー切符を勝ち取った馬でもあり、さすがに余力度という点では上位に一歩劣ってしまいます。
ですから今回は紹介だけにとどめて、判断は皆さんにお任せしますが、今後も中距離以上の重賞に出てきたらまた思い出してほしいです。
次のコーナーではグラフから挙げた有力馬たちの血統表を見ながら、もう少しお話ししたいと思います。
(12)(5秒ジングル)
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まず1頭目はジョバンニです。
皐月賞でもお話ししましたが、優先祖先としてやや欧州系の形が強いので、本来はひと雨来た後の馬場が理想条件だと思います。
そんなに切れは感じませんが、実にしぶとく伸びてこれるのもそういう血統背景から来る特徴です。
近年のダービーはいかに怖がらず、皐月賞より番手を挙げて先行していけるか、それが大きなテーマです。
ピコチャンブラックのリタイアで先行勢の並びが微妙だし、またファウストラーゼンの大マクリも再度あるでしょうから、先行策のリスクは例年以上に高いかもしれませんが、もしダービーで再び5、6番手の追走が不利なく叶えば、今度は大きな夢を見られる場面も十分あると思っています。
クロワデュノールとの本線で一発狙います。
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2頭目はマイユニバースです。
直近まで名前を知らずにいた馬ですが、デビューから大きな休みなく、ときにはダートも走りながらここまで着実に成長を遂げた叩き上げです。
父レイデオロの印象とは違うなあと思っていたら、やっぱり使って使って良くなっていったネオユニヴァースがMAXで優先祖先の大元でしたね。
前走のあずさ賞もお見事でしたが、重馬場をこなす資質が高そうです。
距離2400、ダート競馬、重馬場、左回り…そう3歳の若駒にしては何でも体験済みで、本当に神経が図太い。
もしダート競馬のようにスッと先行さえしてしまえば、意外と最後まで止まらないんじゃないかな。この馬に乗るのはシュタルケ騎手ですか? いま乗ってますから怖い1頭ですね。
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3頭目はレディネスです。
この馬は前走のプリンシパルでも注目していたのですが、その後レースデータを見返してさらに驚いた。というのは彼はキャリアがたった2戦で、2月の新馬が初速12.6で指数は4.8。
ところが2戦目のプリンシパルでは初速が13.0と新馬以上に遅かったのにもかかわらず、指数を4.1まで伸ばしてきた。
これ本当なら指数は新馬戦以上に大きくなってもおかしくないのに、逆に0.7も伸ばしてきた。彼自身の上がり3F33秒2というのはこの衝撃を表していたんですよね。
5月生まれの予定日ズレ+11だからまだ全然体ができていないし、基礎体力の41もあって本当はここを自重する手もあったんでしょうが、陣営の言うとおりとにかくモノが違う馬の可能性がある。
来年にはきっと大成する逸材でしょうね。
母父ShamardalのMAXで、こちらは硬い芝にも十分適性のある欧州系。
良馬場で真価を問いたい1頭です。
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日本ダービー2025 G1解析動画 いかがだったでしょうか。
今回をもちまして、2025年の春競馬定期動画は終了です。
この春も皆さんにたくさんご視聴いただき、私も本当に楽しかった。
いろいろな気づきがあり、成功があり、失敗があり、皆さんと盛り上げたものが少しずつ形になる嬉しさがありました。本当に感謝しています。
また夏の間は不定期でマイナーな特集動画を出すかもしれません。
ドルメロCHのもうひとつの顔だと思って、そちらもぜひよろしくお願いします。
そうだ、ヒマなときにはEQ指数も出しますよ! 夏競馬で一発ホームラン打ちましょうね。
それでは秋競馬の開幕まで、ごきげんよう!
ドルメロでした。