セレクトセール2018特集の見方について
いよいよ今回から7月9日、10日の両日に開かれる、セレクトセール2018注目馬の血統背景をご紹介します。
紹介順については、まず9日に行われる1歳馬(2017年生まれ)セールに登場する産駒リストを「父馬順に検索」したものを用いて、上から順に見ていきます。
またその際「父の年齢が9歳以下のMAX期を迎えていない若い種牡馬産駒」に限定することとします。
加えて、いつもの産駒紹介欄から「スピードの評価」を省略します。
紹介する産駒は、まずスピード面の優劣を見てから細部を検証しているので、すべていいスピード判定の馬ばかりだからです。
「父馬順」で検索すると最初に外国産馬が何頭か出てきますが、これは母の母くらいから情報が全くなくなるので、判定不可でした。
さらに最初の候補であるヴィクトワールピサについては良い産駒がいませんでした。
今回はその次、エピファネイア産駒を見ていきます。
エピファネイアってこんな種牡馬
▼エピファネイア 牡9 鹿毛
2010年2月11日生まれ
父シンボリクリスエス(劣性)
母父スペシャルウィーク(サンデーゼロ活性)
・優先祖先 Sadler’s Wells 〜 Lalun(牝・鹿毛・1952)
・基礎体力 63(平均50)
・馬場&距離適性 芝のクラシック
エピファネイアは、父も母父もあまり意味をなさない血統構成です。
その代わり、3代父のSadler’s WellsはMAX活性が確定しており、優先祖先は母シーザリオからSadler’s Wellsの系統を6代さかのぼったLalunという1頭の牝馬になります。
LalunはBold Reason(1968)の母ですが、自身も競走馬として米・ケンタッキーオークスを制するなど活躍しました。
これだけだとエピファネイアもダート馬っぽくなるのですが、Lalunの父はTourbillon系の仏馬Djeddah(1945)で、英チャンピオンSやエクリプスSを勝った一流の芝馬です。
Djeddahは仏で二四や二五でも勝っており、エピファネイアの距離適性はここから来ているのかもしれません。
その他の歴代種牡馬はといえば、まずSクリスエスは10歳で劣性期、スペシャルウィークはサンデーサイレンス9歳プラス2か月でゼロ活性、4代前のHabitat(1966)も9歳時ゼロ活性と、実質すべて、表から削除される対象です。
(※その後の調査でHabitatもMAX活性であると判明。しかしSadler’s Wellsよりはやや活性が下なので、優先祖先は変わりなし)
エピファネイアはSadler’s Wellsの母系をグッと濃縮しながら、インブリードを使わない「祖先の固定」に見事成功した好例です。(サドラーのNorthern Dancerも劣性のため)
今回紹介する中では一番スピード寄りの産駒
▼No.81 ローザボニータの17
17年2月13日生まれ 鹿毛
父 エピファネイア
母父 ディープインパクト
【診断結果】
・優先祖先 母父父 サンデーサイレンス
・馬場、距離適性 芝のマイル〜中距離
・基礎体力値 56(平均50)
・頭脳 普通
・総合 ★★(満点は5つ)
これからの時代、たくさん出てくるはずの「ディープが高活性」な牝馬から生まれた1頭です。
3代父のFire Maker(1986)がMAX活性ですが、なんとかディープで先祖帰りが止まり、ダート馬にならなくて済んだ?のかもしれません。
米系では珍しく6代まで牝系をさかのぼれる記録があり、
6代母 Silver Service 60年4月15日生
5代母 Jeffo 71年4月5日生 ○
4代母 May Day Eighty 79年4月28日生 ×
3代母 May Day Ninety 89年5月3日生 (×)
2代母 ローザロバータ 95年4月6日生 (×)
母 ローザボニータ 09年5月13日生 ×
本馬 17年2月13日生 ×
なぜか3代母だけ誕生日が不明(※その後、5月3日と判明)なのですが、2代母が活躍馬(34戦8勝2着10回!)だったことを考えればスピードのサイクルは崩れていないはずで、十分推せます。
一番気になるサンデーの3×4というクロスも、すでに申し上げたようにスペシャルウィークがサンデーゼロ活性の産駒なので、心配ありません。
スペシャルウィークもエピファネイア同様、母親(キャンペンガール)譲りの産駒だったんですね。
距離はあまり保たないかもしれませんが、スピードは予想外にいいものを持っている可能性があります。
こちらはスピードよりも距離伸びて真価発揮か
▼No.211 ボルドグザグの17
17年4月22日生まれ 黒鹿毛
父 エピファネイア
母の父 Layman
【診断結果】
・優先祖先 父 エピファネイア
・馬場、距離適性 芝の中距離〜
・基礎体力値 66(平均50)
・頭脳 普通
・総合 ★★(満点は5つ)
母父のLayman(2002)は、米国産のサンデーサイレンス産駒。
しかも仏と英で重賞を勝つなど、世界中を飛び回ったスプリンターでした。
エピファネイアとタッチの差で活性が低く、優先祖先にはなりませんでしたが、この馬もまた結果的にサンデーの3×4というクロスが発生したことになります。
ローザボニータの項でも説明したように、エピファネイア側はサンデーの活性がゼロなので弊害は心配ないのですが、エピファネイア産駒を評価する血統評論家によっては、この近いクロスを嫌う人もいるのではないかと思います。
エピファネイアのサンデーは心配なし。
覚えておくと役に立つでしょう。
ただし、ローザボニータの17に比べるとやや後半期の種付けにあたるので、スピードがそれほど優秀かと言えば疑問が残ります。
2代母 Belga Wood 96年2月24日生
母 ボルドグザグ 09年4月12日生 ×
兄 コンボルド 14年4月17日生 ○→BAD
本馬 17年4月22日生 ○
本馬の3つ上の現役兄・コンボルド(牡4・父コンデュイット)は裏サイクルにあたりスピードに欠けたため、二四の未勝利戦を辛くも脱出した程度の戦績。
本馬のような表サイクル馬でも同様のことがいえ、距離をこなすというよりはマイル向きのスピードがないので中距離指向になることはままあります。
しかし本馬は兄よりスピード面、体力面で3枚ほど強化されたので、もしきょうだいの走りで評価が下がるなら、けっこうなお値打ち品になるでしょう。
中央で2つくらい勝ってもおかしくありません。
もうすぐトップテン圏内の馬たち
他にエピファネイア産駒では
▼No.53 デアリングバードの17
▼No.89 メジロシャレードの17
も、スピードは「表(おもて)」判定。
ただしデアリングバード産駒の方は優先祖先がエピファネイアと同じLalunまでさかのぼる点(近い対象でないと効果がぼける心配も)、メジロシャレード産駒は体力値が31と極端に低い点で、推薦までには至りませんでした。
次回はオルフェーヴル産駒を見ていきます。