朝日杯FSの調教から一言ずつコメント。
2強はいたって静かな調整
タワーオブロンドンは、美浦坂路ルメール騎乗で。
全体時計53秒2、終い1F12秒1と切れ見せ、出走馬の中ではこれでも動いた方。
併せ馬で手綱を引っ張ったまま併入。明らかに余裕ありの様子。
ちょっと意外だったのはダノンプレミアムの方か。
栗東ウッドで4F52秒3という「静の中の静」で終了。
一走一走全力タイプだから見た目よりずっと仕上がっているというジャッジか。疲れ、やり過ぎだけが心配なのかも。
2番手グループも侮れない仕上がり
ステルヴィオ(美浦木村厩舎・父ロードカナロア)も南Wで4F53秒8、終い13秒0の「音無しの構え」。有力厩舎ではこの方法が新しい潮流か。
前肢がよく伸びて窮屈なところがない。タイムはともかく、動きそのものは及第点だ。
一方そんな調教じゃアイツらから天下は獲れないとばかり、「動」の調教を見せたのが、カシアス(栗東清水厩舎・父キンシャサノキセキ)。
坂路に入れる馬では珍しいくらいの大跳びストライドから繰り出されるフットワークは快調そのもの。全体時計は54秒台ながら上がり12秒2にまとめ、決して一概のスプリンターではないと思わせる。
注目のキンシャサノキセキ産駒をひもとくと
紹介ついでにカシアスの血統面を見ておくと、父キンシャサノキセキは南半球産で、日本では「遅生まれ」扱いされながら長く一流の地位を保ったスプリンターだ。
この遅生まれが実はくせ者で、本来母ケルトシャーン9歳時の産駒であるなら、キンシャサ自身は母の影響を受けないのだが、なにしろ繁殖シーズンに半年のズレがあるので、日本から見ると8歳半時の産駒ともいえ、従って母の毛色・鹿毛を受け継いでいる。
祖父フジキセキの母ミルレーサーも鹿毛なのだが、こちらは米国産で9歳時の産駒がフジキセキ。よってここからは鹿毛が来ていない。
とまあ、キンシャサノキセキはこれからも不思議な知見を血統論者にもたらしてくれる「いいサンプル種牡馬」なのである。とても注目している。
そしてカシアス自身を見ると、とくに母系で若い母馬たちに次々と種付けされているファミリーであることがわかる。
この馬の早熟性がこの母系から来ているならば、母父は凱旋門賞馬ディラントーマス…よしこれなら距離は持つはずと期待したいが、あいにくの燃える気性を父から引き継ぐとああマイル限界説…ということになるのかもしれない。