アニキはあんなに走ったのにオカシイじゃないか!
さてフィリーズレビュー2発目の記事では、デルニエオール、アンコールプリュの人気サイド2頭がどうして低評価なのか、お話ししていきたい。
まずはデルニエオール(牝3・池江厩舎)から。
なんと言っても母オリエンタルアートはあのドリームジャーニー(04年生まれ・鹿毛)とオルフェーヴル(08年生まれ・栗毛)を輩出した名牝。
本馬はオルフェから7年経過した全妹で、毛色も栗毛だ。
最初に兄たちの血統背景から探りたい。
長兄・ドリームジャーニーは、母7歳時の産駒
次兄(便宜上こう呼ぶ)・オルフェーヴルは、母11歳時の産駒
そして本馬は母18歳時の産駒となる。
血統表上で「基礎体力値を変えることのできるファクターは、種付け時期の母の年齢以外にはない」。
体力値が兄弟で違うのは生まれ年が違うからで、全兄弟の能力が全く違ってくる原因のひとつも、これに由来する(もうひとつは父の年齢)。
実は母オリエンタルアートからよい体力を授かったのは、長兄・ドリームジャーニーしかいない。
ドリームジャーニーが受けた体力を10とすれば、オルフェーヴルは4、そしてデルニエオールが3といったところ。
基礎体力は4代母あたりから合算で算出されるので、これでも祖先が優秀なら困りはしない。
だがオリエンタルアートの母系は祖先も体力的に貧弱で、体の強い仔がほしければ、母の影響が強い時期に産駒を作る必要があった。
私の見る限り、オルフェはあれだけの名馬でありながら、体力的には決して恵まれた馬ではなかったと思う。
オルフェの「遊び癖」は、ムダな力を使わず、いざというときだけスイッチのオンオフが可能であったことを物語るし、JRAのサイトでは、レース後の短期放牧がルーティンだったことが紹介されており、彼の実力は高い厩舎力をもって発揮されたことの好例だ。
デルニエオールもその池江厩舎に属したのは幸運だった。が、兄とは違い妹は体も小さく、兄以上に調整に苦労する馬であることは容易に想像できる。
アンコールプリュはもっとすごい馬になる可能性もあった
アンコールプリュ(牝3・友道厩舎【訂正】)の母はオイスターチケット(98年生まれ・父ウイニングチケット)で、ダービー3着のブラックシェル(父クロフネ・05年生まれ)などを輩出した、クズの出ないファミリーである。
そのブラックシェルともう1頭牝馬の活躍馬であるシェルズレイ(父クロフネ・03年生まれ)と本馬を比較してみると、3頭で一番基礎体力が高いのはやはりブラックシェルで、彼が母から受けた数値を10とすると、シェルズレイで5程度になる。
では、アンコールプリュはどうなのか。
実は彼女は母からほとんど体力の恩恵を受けていない。
アンコールプリュは母17歳時の産駒で、この年は条件によっては母から満点の体力を受け継ぐことができた。
しかし約1か月のズレで娘はその大チャンスを逃し、しかもあろうことか母からの体力的な恩恵がほとんどない身として生まれてきたのである。
デルニエオールは単に生まれ年が悪かっただけだが、アンコールプリュの場合は一生に一度のチャンスがあっただけに大変惜しい気がする。
しかしこればかりは自然の発情のこと。どうにもならない。
もし全てがうまくいけば、アンコールプリュはゆうに59程度の体力を獲得したはず。
しかも彼女の母系は3代前母の種付け時にも同じようにチャンスを逃したことがあり、なにかと残念なファミリーではある。
チャンスとピンチは紙一重、の典型だ。
おまたせ大穴候補はこの馬です
最後に意外かもしれないが、基礎体力では平均以下に位置するイサチルルンルン(牝3・竹内正洋厩舎)を大穴候補として挙げておく。
この馬、2代母の誕生日が定かでなく、いわゆる「一生に一度のチャンス」を逃したのか活かしたのかがうまく判定できない。
よって体力表では「44〜」と紹介したのだが、最大値で69に跳ね上がる可能性があるため、あくまで自己責任で買う楽しみはありそう。
もうひとつイサチルの強調材料として「ダート戦の経験」が挙げられる。
各競馬場とも芝の1400という条件は、ダート血統や、ダート経験がある馬の成績が良い。
もしヒマなら新年一発目の3歳牝馬限定OP「紅梅S」あたりの毎年結果をひもといてみよう。
イサチルも前走芝替わりでバカにされ、13番人気での勝利だったわけだが、この手の馬をあまりバカにしない方がよい。
基礎体力的には各馬拮抗で大混戦だが、今年は自分の狙い馬を絞れば思わぬ高配当が待っていると思う。