▼毎日杯2019 血統表からマカヒキの全弟ウーリリが走ると太鼓判を押されるまで

熱心な読者さんのためにもう一度解説

前回のエントリーでOK判定に関する基礎的なことをお話ししたところ、さらにご質問をいただきましたので、今回は毎日杯に出走する良血馬・ウーリリ(牡3・父ディープインパクト・友道康夫厩舎)を題材にしながら、それにお答えしていきたいと思います。

のっけから質問の答えはこうなります

(Q1) そもそも「き○ぐ×」とか「ぐ○き×」とか、どうやって決めているのか?

(A1) もちろん、き○、ぐ○のどちらも存在しますし、それを判定するために祖先やファミリー(きょうだいから近親まで)を徹底的に調査します。

(Q2) 祖先をさかのぼってもきれいなサイクルじゃないときはどうするのか?

(A2) 無理をしてまでどちらかに結論を急ぐことはありません。
母系4代だけできれいにサイクルを描く場合もあれば、30頭以上の近親まで調べても判定が付かない場合もあります。

これをふまえながら、ウーリリのファミリーを見ていただきたい。

OK判定はそんなに一筋縄でいくものではない

▼ウーリリと母ウィキウィキたちの繁殖サイクル

Numismatica(亜) 1983
Numeraria 89.10.19(亜) 10.2〜12.2
 リアルナンバー(亜) 97.9.11 ぐ(×) 8.25〜10.25 12.25〜2.25 4.25〜8.25
  ウィキウィキ 04.2.10 き○ 1.24〜3.24
   エンドレスノット 09.1.28 き○
   ウリウリ 10.2.11 ぐ(×)
   スウィートレイラニ 11.2.17 き○
   レレマーマ 12.2.1 ぐ○
   マカヒキ 13.1.28 き○
   ウーリリ 16.4.5 ぐ× →OK
  ポンテディリアルト 05.2.7 ぐ○ 1.22〜3.22
   ウインドルチェ 16.4.7 き× →BAD
   ポンテディリアルトの17 17.4.24 ぐ○ →?
  トパンガ 06.1.28 き(○)
  ハギノタイクーン 09.3.26 ぐ(×)
 Full Number 03.10.1 ぐ(×) 9.15〜11.15
  シックスイス 10.9.23 き○

もともとウーリリマカヒキの母系はアルゼンチン産系であり、したがって70年代以前のデータは存在しないことが多い。

今回もウーリリたちの4代母Numismaticaまで遡ると、生まれ年こそわかるが、正確な誕生日はもうわからない。

このような過去を十分遡れない牝系においてOK判定を正しく下す作業には注意が必要で、主に同世代の横の比較(きょうだい、いとこ中心)で結論を出すことになる。

幸いウーリリの母ウィキウィキ(父フレンチデピュティ)は名繁殖で、マカヒキ以外にもウリウリエンドレスノットといった活躍馬(しかも全きょうだい)を出しており、その傾向さえつかめれば、き○かぐ○かを判定できるはず。

結果、上のファミリーテーブルから自分はき○ぐ×の結論を出したわけだが、近親の何頭かには(○)とか(×)という仮の記号が付いている。

例えば短距離で活躍した全姉ウリウリ(2010)は、母との年齢差が偶数年の仔で種付け日が前年3月11日頃とすれば、サイクル内に入るので本来は「ぐ○」ということになる。

しかし3月11日頃というのは母のサイクルが終了する3月24日まであと13日を残すのみであり、ウリウリの活躍からすれば次のサイクル(3月24日〜)に種付けされていたとしてもおかしくない(→ぐ×)と想像するわけだ。

いつものクラブ馬判定でいえば、ウリウリは「ぎりBAD13日」。
だが人間同様、いくらでも出産時期が予定日より早くなったり遅くなったりする馬のことなので、そのつど結論も動きますよ、ということになる。

同じくウーリリから見て叔父や叔母にあたるトパンガ(2006)やハギノタイクーン(2009)もそれぞれ中央で4、5勝した活躍馬だが、判定は仮の( )扱いになる。

これもトパンガが「ぎりBAD3日」、ハギノタイクーンが「ぎりBAD1日」だから、両馬ともOK馬になる可能性があるだろうという見立てだ。

逆にこれらの判定を入れ替えてみたとき、とても理論が持たない状況(ぎり何日と言えない状況)であると確認できれば、ウーリリのファミリーは「き○ぐ×」であると結論づけていいだろう。

だからポンテディリアルト(2005)の系統はサイクルが逆に見えるので、その仔ウインドルチェ(2016)は走る前からちょっと疑問が残る、という結果を導き出せたわけだ。

なお蛇足として

さて、これで質問の答えになっていただろうか。

いずれにしろ、あまりどうして?と考えるよりは、こうなんだ!と使ってみる方向でどうかテシオ理論に触れてみてほしい。

テシオ理論にはまだまだ奥があり、自分も全く使いこなせていない&謎が増えるばかりで、ライフワークとしては楽しいのだが、フェデリコおじさんに直接教えていただけないのは本当に残念である。

…動画、がんばって出しますね。
きれいな動画を期待しちゃ、イヤですよ。
あくまで黒板の板書、ですからね。

・繁殖牝馬のき○、ぐ○については、テシオ理論ではもっとちゃんとした名前が付いており(そりゃそうだ)、生まれた直後から○で始まる「き○」をノーマルパターン、生まれた直後は×で始まる「ぐ○」を逆パターンと呼ぶ。

本来はノーマルパターンが主流であり、テキストによれば

「子馬を産んだ直後の牝馬は9〜10日後に最初の発情を迎えるが、そのときサイクルがちょうど逆パターンで種付けすると、翌年生まれた牝馬も逆パターンの牝馬になってしまう」

「血とコンプレックス」中島国治著 KKベストセラーズ刊

という。

まあこれは生産の現場で役立てるべきことで、自分たち競馬ファンは「き○もぐ○もある」と覚えておくだけで事足りる。

ちなみにノーマルと逆パターンの頭数割合はだいたい7対3ということらしい。

・今回、OK判定を行うにはそれなりの準備が必要だとわかっていただけたかと思う。

自分のMacのメモ帳には、ここ2年ほどの主要クラブ募集馬、セレクトセール上場馬、新馬、重賞勝ち馬などのファミリーサイクルがわんさかと書かれている(登場数のべ数千頭分)。

ただ列記するだけでなく、遠い祖先でつながったファミリーはまとめてあったり(ビユーチフルドリーマー系など)と、今はそれがあるからこそ素早い判定ができるが、これを蓄積させるまでが地獄のような大変さである。(完成さえすれば検索機能で呼び出せるし、iPadでも閲覧可能)

もしMacがふっ飛んだら、もう1度復活させるだけの気力は、…ない。ある意味、一代で築いた財産に近いね。

▼毎日杯2019 血統表からマカヒキの全弟ウーリリが走ると太鼓判を押されるまで」への2件のフィードバック

  1. 質問に対してご丁寧に説明していただきありがとうございました。モヤモヤしていたものがおかげさまでスッキリしました。

    「判定不能」の馬がどうしても出てしまうというのはそういうことだったんですね。納得です。

    この理論ですが、遡って調べること自体に時間が掛かって仰るように本当に大変な作業ですよね。

    それでいて正確な種付け日が分からないので、そこがまた難しくしているところなのだと改めて感じました。

    それでも、自分で調べて判定を出して結果を見るという面白さもあると思うので、実際に使っていって覚えてみたいと思います。

    1. わにさん、少しスッキリされたようで何よりです。

      この理論が、興味を持って調べたい一般ファンにとっては遠い道のりである反面、誕生日等の真実を握っている生産者にとってはごく身近なものであることに、早く気づいてほしいものです。

      とはいえ、私レベルのファンでも競馬と配合を十分楽しめることは間違いなく、今年のキャロットC3歳勢の様子を見ても「末恐ろしい理論だな」と人ごとのように思います。

      なんでもフェデリコ・テシオ氏は「産駒の誕生前から性別さえもほとんど間違えずに予想できていた」といいますから、馬産の奥深さと言ったらもう…。

      今後ともどうぞよろしく。

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