▼活躍馬たちのその後を考える 1.20

ワグネリアンの急死がもたらす本当の衝撃

今年が始まってすぐ、一番ビックリした競馬ニュースと言えば、ワグネリアンの急死だったかもしれない。

しかも胆石という病気が元となっての落命だけに、関係者一同まさかという気持ちがすぐには拭えなかったのも仕方のないところだろう。

ワグネリアンという馬はもちろん福永祐一騎手に初のダービーを勝たせた名馬ではあるが、年齢を重ねても現役生活を続行、競走馬としては完全燃焼したクチだろう。金子真人オーナーの意図はわからないが、ワグネリアンが元気なうちは競馬に使ってあげたいという気持ちも、今回のケースでは理解できる。

というのは、今回ワグネリアンを偲んで「仮想配合表」をいくつか試みたのだが、彼の中に幾重にも連なるディープ、サンデー、そしてキンカメの血が阻んで、うまい配合相手を見つけてあげることができなかったのだ。

金子真人オーナーの活躍馬と配合すると大概こうなる……

というか、金子オーナーはディープとキンカメのオーナーさんでもあり、この巨匠2頭を縦横無尽に活用することで競馬をお楽しみになった方なのだな、とあらためて実感させられる。

だから実際はどうなったか知る由もないが、ワグネリアンが種牡馬として再び輝く可能性というのは、案外低かったのかもしれない。それほど現代の日本では、ワグネリアンの優良な配合相手を見つけることは難しい。

ただひとつ惜しいと思うのは、実はワグネリアンが母父キンカメの形を継いだ馬だったと言うことだ。

YouTubeで以前私は「キンカメの後継候補はほぼ一択」という動画を出し、その後もアップデートしていない。ディープインパクトの後継問題に関しては、この2、3年でまた状況が様変わりしたのでアップデートするつもりだが、キンカメには依然として真の後継候補が出ていない。

もし種牡馬の役目が「産駒に形を伝えること」だとするのなら、このワグネリアンこそがキンカメの形を後世に伝えるもう1頭の隠れた後継候補だったことは覚えておきたい。

もちろん浅い時期の父似なら、ロードカナロアがその父の形を伝えることはあるだろう。しかし彼の場合はミオスタチン遺伝子がC/C型だから、キンカメの距離適性を再現するような産駒は生み出しにくい。どうしても適性が短めになるし、また繁殖牝馬の遺伝子型にも注意が必要になる。

その点、第一後継のラブリーデイ、そしてこのワグネリアンであれば、自身の遺伝子型はC/T型であろうから、姿形だけでなく、キンカメに良く似た適性の馬を出しやすい。繁殖牝馬を選ぶ必要もさほどない。

今回のワグネリアンの急死により、ディープとキンカメの行く末にまたひとつ差が付いた気がして、血の宿命とはこんなものかと少し寂しくなる。

ハービンジャーの後継候補が相次いで「乗馬」に

今月13日にペルシアンナイトが、また19日にブラストワンピースが、それぞれ現役を引退し、乗馬になることがクラブから発表された。

いずれも父ハービンジャーの強い活性を引き継ぐ、正真正銘の後継候補だった。

とくにブラストワンピースは、3歳当時の私のブログに「この馬がダービーを勝たなかったら、おそらくもうハービンジャー産駒が日本で勝つことはないだろう」と書いた存在で、結果こそ5着に終わったが、その年の有馬記念を勝ち、実力だけはしっかり示してくれた。

2頭とも面白いくらいに適性が似ていて、時計のかかる良馬場では無類の強さを発揮し、欧州を渡り歩いた女丈夫・ディアドラも含め、ハービンジャーってやっぱりこういう父だよね、ということをファンに教えてくれた産駒だった。

ハービンジャーという種牡馬はややスロースタートだったため、自分の1回目のMAX活性期に向け毎年種付け頭数を減らしてしまったが、その少数派の中から上記の3頭を始めとした活躍馬を多数輩出。種付け頭数が戻った年にはもう劣性期だったというオチは付いたものの、18、19年は再び200頭以上の繁殖のお相手を務めたから、また父に似た「パワー型」の産駒が多く見られるはず。

MAX活性1期生たちは残念ながら後継にはなれなかったが、この2期生からまたパワーあふれる後継候補が出ることを祈ろう。日本で唯一繁栄の可能性を残す、Northern Dancerゼロ活性系でもある。

そして欧州でも痛恨の出来事が

ジャパン・スタッドブックの1月13日海外ニュースで伝えられた「スノーフォール、骨盤損傷により安楽死」という一報は、日本ならアーモンドアイを失うレベルかと思わせるほどの痛恨事だった。

彼女はご存じ日本産ディープインパクト産駒であり、英オークスでの16馬身差圧勝劇は語り草、L・デットーリに「まるでバターを切る熱いナイフのような脚」と言わしめるほど強烈な印象を与えた馬だった。

これは昨年の年度代表馬セントマークスバシリカとの架空配合表だ。

セントマークスバシリカの母父Galileoがゼロ活性のため、見事なアウトブリード配合。かつ母父がサンデー系つまりは欧州では貴重なネアルコゼロ系なので、ボス性にあふれた次世代のスター候補だ。

セントマークスバシリカの活性が低いうちは、形は4代前のIntikhab(MAX活性)の方へいつでも流れやすいが、条件さえ整えばディープの形も出てくる。実現すれば欧州のみならず、世界中で走らせてみたい1頭になるはずだった。

ディープ産駒の欧州競走での適性は十分明らかになったから、今度は母父としての適性を示してほしかったし、またその絶好の例となるはずだったのに……もう再現がかなわない母だけに、競馬史を変えた牝馬を失った痛手はあまりに大きすぎる。

競馬の神様は今日も気まぐれ

この世から去った真の後継候補、元気でいながら後継にはなれずじまいの馬たち……ひとつの出来事がパタパタとドミノのように他の出来事に影響し、未来の1頭の馬の運命を決める。

これからも真摯に競馬、配合と向かい合うこと、私には今それしかできないと痛感する。

▼活躍馬たちのその後を考える 1.20」への2件のフィードバック

  1. 欧州競馬にとってスノーフォールの死は相当痛いと思います。残念ですね。

    1. こういう悲劇って、どんなに大切な存在でもサッと奪っていってしまうんですよね。
      で、残された世界はまたタラレバの空想や未練を生むという、歴史はいつもそのくり返しですね。

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