▼中山大障害をふりかえり 適材適所の難しさ改めて 12.29

中央競馬は全日程を終了

秋のG1連戦モードが慌ただしく終了し、残すは暮れの南関で視聴者さんやオーナーさんの馬が走る予定だと教えていただいたので、ゆっくり中継を見る程度になろう。こうして一時YouTubeからも離れ、散らかり放題の部屋を片付けながら、正月の用意を進めている。

平地G1の有馬記念もホープフルSもどうということなく通り過ぎてしまい、手元には何も残らず懐の寒さは相変わらずだが、それでもひとつ私の印象に残った師走競馬の出来事と言えば、中山大障害をニシノデイジーが制したことかもしれない。

ニシノデイジー、波乱の現役生活

ニシノデイジーがドルメロ的に難しい判断を迫られる馬だということは、もう2歳の頃から知っていた。

The Bride 69.3.19 3.2〜5.2
 Fabulous Fraud 74.2.25 き○ 2.11〜4.11
  デユプリシト 85.5.7 き× 4.21〜6.21
   ニシノフラワー 89.4.19 ぐ○ 4.3〜6.3
    ニシノミライ 03.4.17(5.21付) ぐ○ 3.21〜5.21
     ニシノヒナギク 08.2.1(2.28付) き× 1.15〜3.15
      流
      ニシノデイジー 16.4.18(5.8付) ぐ×

2歳重賞を連勝するほどの器でありながら、実のところ彼は月のサイクル的には裏の馬だった。流産後の産駒なので自然派生まれかどうかは判断できないが、きっちり「5月8日種付け」であるから、日にちスパイスは効いている可能性は残されていた。

さりとて連勝した札幌2歳Sも東スポ杯も距離は千八。表と裏の距離適性境界はちょうど千八のあたりに来るとわかってはいても、当時スピード表のスター候補として注目していたヴァンドギャルドやヴェロックスを抑えてまで、裏のハービンジャー産駒がポンポン重賞を勝つなどまず想像できないこと。よっぽど母からいいお宝でも得たと考えるほかなかったのだが…。

しかしこの素質馬がどうしたことか、クラシックではサートゥルナーリアに全く歯が立たず、古馬になってからはとうとう重賞でどん尻の最下位を引いてくる始末。陣営としてもさぞ頭の痛い問題だったと思うが、逆にやはり豊富なスピードに恵まれた馬ではないことだけはこの時点で露呈していた。

そこで陣営はダート転戦、そしてついには障害転戦と、行き着くところまで来た感ありありのエピソードをたどりつつ、なんとここからが彼の馬生のクライマックスだというのだから、競馬は本当にわからない。

ニシノデイジーの真の適性はどこにあったのか

デイジーがスピード的に裏の馬だということはお話しした。では彼の優先祖先、形はどこからやってきたのか。

彼は父ハービンジャーのミニマム期産駒で、優先祖先は西山牧場ゆかりのセイウンスカイ、ではなく、もうひとつの基礎繁殖3代母ニシノフラワーの父Majestic Light〜Majestic Princeへと遡る。ただニシノフラワーはご存じの通りの一流マイラーで、彼女自身は母父Danzigの影響が強いスピード系だったが、現代にはその遺伝は出てこない。だから父のハービンジャーでT型遺伝子が強まると、もろにMajestic Lightらの影響が出やすいのだろう。

Majestic Lightのラインは、米系では珍しいダートのステイヤーといった感じ。ちょうどキタサンブラックの優先祖先Ambiopoiseとよく似ている。決してばか速くはないが一定のスピードで淡々とラップを刻み、先頭に立ってそのまま押し切るのが得意戦法…おっと、これはキタサンだけでなくニシノデイジーの中山大障害も確かそんな展開だったはず。

ただニシノデイジーは、平地時代にさほどの長距離適性を見せていたわけではない。ダービー5着はさすがだが、菊花賞は9着、古馬になっての目黒記念ではどん尻の18着。オーナーのブログによれば、この頃は体調も一息だったようだが…にしても、平地の長距離適性自体は疑問符であり、この点については他の障害名馬…たとえばメイショウダッサイ、アップトゥデイトなどにも当てはまる。

障害競走に必要なもの、それは距離適性ではない?

メイショウダッサイは、未勝利をダートの千七で勝ったが、勝ち星はそれだけ。1勝Cではダートの千八で3着があるのみ。もちろんダートの二千以上を何度も試されているのに、まったく結果が出ず。入障後の2戦も着外に終わっている。

アップトゥデイトはさらに不思議な平地生活を送っている。彼は2歳のうちにダートの短距離を2勝し、いったんは兵庫ジュニアC→全日本2歳優駿という超エリートコースに乗った馬。しかし年明けのヒヤシンスS以降、なぜか鳴かず飛ばず(早熟でもないのに)、古馬になって距離を延ばしてもダメだったのに、入障後はいきなり2着→1着。父クロフネでこの活躍ぶりだ。

もっといえば過去には父サクラバクシンオーの障害G1馬ブランディスがいたように、どうも障害戦というものは、距離適性オンリーで動いている世界ではないようだ。ニシノデイジーは初めて障害を跳ばせたときにすごくうまいと言われたようだし、スタミナよりは操縦しやすさ、ハードルを上手に跳べる、障害を変に怖がらない、なめて跳ばないなど、技術、気性面の適性の方が必要な競走なのかもしれない。

ニシノデイジーに障害入りを勧められない戒め

気性面も大切ではあるが、さあそこまで知ったなら、スピード裏の、米系ダートステイヤーの形をもった馬だと結論づけた時点で、ドルメロなら西山オーナーに「きっと障害馬として大成します」と進言できたのか… いや100%そんなわけがない。

考えてもみてほしい。すでに千八の重賞を2勝している馬にどこをどう曲げれば次走障害を試しましょうと言えるものか。たとえ菊花賞が終わっていたとしても、来年のどこかで「春天にいきましょう」とは言えても「ステイヤーズSを目指しませんか」なんてさすがに言いにくい。さらにその先にあるはずの、障害入りなどはひとつも頭に浮かばない。

オーナーサイドが望む望まないはあるにせよ、今の競走環境から大きく変化させようとするアドバイスはすごく難しい。どうしても前走までの幻影が残像として残るのと、一般の方にとっては父の名前という看板が血統判断の半分以上だったりするからだ。

ロードカナロア産駒に9ハロンへの距離延長を勧められるか、ダート転向を勧められるか、2歳S勝ち馬アサクサゲンキになら障害入りを勧められるか…結果が出ない現状を変えようと苦心しているのは現場も同じ。そこへどの程度納得いただける新データを出せるか、それが競走馬の幸せにつながるのか…現役馬のデータをお出しするときはいつもそのあたりが悩ましい。

しかしドルメロは、そんなことを思いながら結果的に、過去の競走成績に自分の結論を寄せることなく、また一般的な常識とされる血統評価を参考にせず、ここまでやってきた。そうでなければドルメロというアウトサイダーに意見を聞く意味がないし、ドルメロの判断が揺れていては、オーナーさんだってもらった結果をどこまでを参考にして良いものか、迷いが出てしまうだろう。

ということで、私は今後もぶれずにいく。幅広い対象馬を相手に、さまざまな意見を書かせていただいた年の瀬最後に、ニシノデイジーの活躍ぶりと「あぁ、彼の適性に関してやっと納得がいった気がする」という安堵にほんのり幸せを感じながら、ペンを置くことにしたい。

今年も読者の皆さんには、大変お世話になりました。YouTube活動はいつもこちらが楽しませてもらうことが多いし、ブログはほとんど書けずにいるし、なんだか少しのお返しもできていないことに恐縮しておりますが、来年もまたそんなドルメロを応援していただければ幸いです。

来年はもうひとつ大きな舞台へ飛び出します(ホントか?)。準備をしつつ、私らしく、面白い道へ、ゆっくり歩んでいくつもりです。みなさま、どうぞ良いお年を。

▼中山大障害をふりかえり 適材適所の難しさ改めて 12.29」への8件のフィードバック

  1. 新種牡馬の動画拝見しました。

    レーツェルのこともあってサートゥルナーリアに注目していましたが、ドルメロさんの評価は一貫して低いままですし、テンションが上がってないのがモロに伝わってきますw

    キャロット出身ということもあって今年のキャロット募集ではまず人気になること間違いないのですが‥

    今年でいえば、ハープスター、ルージュバック、クルミナルですからね。

    仮にサートゥルナーリアが躓くとコントレイルが出てくるまで突き抜けるような種牡馬は現れないかもしれないですね。

    去年でいうとリアルスティールが案外だったので(まだまだこれからですが)種牡馬って本当に読めないなとつくづく感じます。

    最近だとキタサンブラックが突き抜けようとしていますがどうなるでしょうか。

    今年はどの道人気どころには出資できないので穴っぽいところで勝負ですかね。

    個人的にフィエールマンには注目しています。

    あとはノーザン系のクラブに多く募集されそうなアドマイヤマーズでしょうか。

    今年も新種牡馬動画大いに楽しませてもらいました。ありがとうございました。

    1. ご視聴ありがとうございます。
      そうですか、私のテンション上がっていませんでしたかぁ…
      まあサートゥルナーリアがクラブ向きの種牡馬でないことは言っておきたかったですね。後出しはしたくないので。
      当たればG1もあるんでしょうが…本当に種牡馬は難しいな。

      リアルスティールは今年からサンデーの活性値が十分薄まるので、ここから2世代が狙い目でしょう。
      アドマイヤマーズと合わせて、キャロットさんあたりに面白い馬が来るのでは?渋いですけど。
      キタサンブラックは一度日本の土着の血(サクラの馬)が流れているのがいいのかも。順応性という意味で。
      まさか祭りの第2章がこんなに長く続くとは!どこまでサブチャンを喜ばせてくれるんだという、馬主孝行な名馬ですね。

  2. ドルメロさん、明けましておめでとうございます。昨年はお世話になりました。今年もよろしくお願いします。
    Ambiopoiseとは なつかしい名を聞いたぞ…そいつはオレのおごりにしとく と言いたくなるほど懐かしいですね。Ambiopoiseと言えばアンバーシャダイの優先祖先でしたでしょうか。アンバーシャダイはリアルシャダイと並んで血統表に出てきていたのを覚えています。
    そう言えば当時リアルシャダイの仔は身体が固く冬は苦手と言われていましたが、最近は種牡馬毎の季節性は聞かなくなったような気がします。
    直線の坂が苦手でローカルと京都専用とかも聞かなくなった気がします。競馬場の改修が進んだせいもありますし、オーバーシードも施工されます。古い要素は変わっていき、忘れられていくのでしょうか。

    1. 月友さん、今年もよろしくお願いします。
      Ambiopoiseはクリアアンバーの父ですから、意外と昔から形のキーホースとなる馬ですね。
      アンバーシャダイも自分の距離適性は長かったですが、種牡馬としてもまあまあ走った記憶があります。
      馬個々の季節性は今でもあるはず。けれど種牡馬の季節性やローカル専門とかは、そういえば聞かなくなったなぁ。
      私、坂が苦手といえば父ロドリゴデトリアーノとか、センゴクヒスイとか、ビーバップ(父アンバーのミニマム期)とか、そういう名前を思い出します。
      今でもあるんでしょうけど、誰も言わないのかな? 坂路で鍛えているから? レッツゴーターキンのように?
      いやはや、時代の流れですねえ。

  3. ドルメロさん、本年もお世話になりありがとうございました。
    今年は一口馬主は上半期にどうなることかと思いましたが、結果的には昨年とほぼ変わらない成績で落ち着きました。引退馬やファンド解散してしまう馬も出資馬全体の1/3にあたる4頭もいましたが、52回も出走してくれて、収穫の多い1年でした。

    自分なりの調査も合計で約650頭になり、2年続けてこれだけの数を調査すればするほど分からなくなってくることもありましたが、基礎体力やMAX活性、そしてインブリードを重視しないというシンプルな部分を今後も大切な軸に据えつつ、自分なりの見え方を加えていく方向を続けてみようと思います。

    本業の方は8月から合計で約2ヶ月海外で活動するなど、非常に忙しく過ごす中で一定の成果を出すことも出来、二兎を追わなくて本当に良かったと思っています。来年も本業に集中すべき年と位置付けています。

    競馬は更に面白くなりそうですし、ダート3冠に向けてクラブ馬の募集も改革元年といって差し支えないような年になりそうでとても注目しています。中央や地方という言葉の垣根はもはやなくなっていくのではないでしょうか?
    個人的にはサンデー系、キンカメ系の各種牡馬の優先祖先を見ておくととても良いことがありそうな予感が…
    ドゥラメンテの早逝は本当に惜しいなと感じています。

    ドルメロさんも来年は更に忙しくなりそうな匂いを感じていますが、今後も文章に、動画に、と発信されるいろんなコンテンツを楽しみにしています。

    1. ピーヤさん、1年お疲れ様でした。
      道は違えど、舵取りの難しい今の世の中、お互い忙しくてまずは何より。
      皆さんがたまに戻ってこれる憩いの場所を維持しながら、来年も活動していきます。
      ダート三冠は、私たちにとって一番現実的な夢かもしれません。
      私もオーナーさんたちに積極的にダート馬をお薦めしていくつもりです。

  4. ドルメロさん、今年も大変お世話になりました。

    ブログの更新は少なくなってしまって個人的には少し寂しい気持ちがありますが、その分YouTubeは精力的に活動されていましたね。

    ドルメロさんの2歳戦の注目馬は結構な率で馬券になってるイメージで一口馬主を始めてからは馬券はかなり控え目になってる私ですが、来年はドルメロ理論を馬券にも役立てようかなとぼんやりと考えています。

    クラブ募集馬のデータでもお世話になりました。
    また来年もデータ販売楽しみにしています。
    ちなみに来年から募集となる新種牡馬解説も密かに楽しみにしています。

    そしてなんといっても朝日杯のドルチェモアお見事でした!
    おめでとうございます!
    1番人気で優勝ですから文句なしでしょう!

    個人的にはプレドミナルにもまだまだチャンスがあると思っています。
    12/22に帰厩してますから1月中旬あたりのレースになりそうです。

    では良いお年をお迎えください。

    1. わにさん、今年も大変お世話になりました。
      競馬は毎年同じことを繰り返しているようで、全く違う世界へ誘っているのでは、と感じます。
      だからこそ、ネタ切れにならない?ジャンルで助かっているわけで、楽しんでできるうちは皆さんと大いに盛り上がっていけたらと思います。
      馬券はそんなに当たっていないので、まあまあにしておいてください。
      クラブデータ、新種牡馬解説はまだまだやりますよ! 新企画もお楽しみに。

      プレドミナル、ゆっくり春に間に合えばいいです。
      脚があることもわかったし、ひとつ勝ち上がるだけの馬ではないと思っているので。
      菊ですね、菊!(ダービーじゃないのかよ)
      それではどうぞ良いお年を。

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