前回のブログにサイクルの逆転現象について表題のようなご質問をいただいたので、さっそく解説をしていこう。
「血とコンプレックス」内の記述から
初回発情で月のサイクルが逆転することについて、中島国治氏の著書「血とコンプレックス」では次のように書かれている。
…牝馬は仔馬を産むとその9〜10日後に最初の発情を迎える。この初回発情が逆パターンであったにもかかわらず種付けされると生まれた牝馬が逆パターンを受け継いでしまう。…(258ページ)
たとえば3月1日生まれの牝馬Aは、牝馬としての活動が胎内で実際に始まるまで2週間のタイムラグを足して、3月15日を起点とした前後1ヶ月のサイクル2月15日〜4月15日を持つ(通常は概算でよい。正確な境界を知りたいなら、前後30日→2月13日〜4月14日だろう)。
このサイクルを私はとくに「繁殖サイクル」と呼ぶことがある。そしてこの牝馬における自身最初の繁殖サイクルを「表→女性期間」とするパターンを著書では「ノーマルパターン」と呼び、「裏→中性期間」に変わると「逆パターン」と呼んでいる。(私はあまり使わないけれど)
そしてノーマルパターンは逆パターンに転換することがあり、ノーマルと逆の存在割合はだいたい7対3であるとも記されている。
パターンは初回発情で逆転することがある
One Clear Call 1960
クリアアンバー 67.5.8 4.22〜6.22
シヤダイマリア 75.5.21 ぐ× 5.4〜7.4
空
アンバーシヤダイ 77.3.10 ぐ×
ダイナアンバー逆 78.2.22 き× 2.8〜4.8
メインゲスト逆 86.2.6 ぐ○ 1.20〜3.20
ファストタテヤマ 99.5.30(然6.30付) き○
ダイナクラシツク 82.5.12 き○ 4.26〜6.26
空
イブキマイカグラ 88.2.24 ぐ×
サクラアンバー 83.4.27
サクラハゴロモ逆 84.4.13 き○ 3.27〜5.27
サクラバクシンオー 89.4.14 き○
(表中の「逆」が初回発情種付けの意。サイクルが逆転していなくても初回発情であることを知りたいので、あえて全ての初回発情に「逆」と付けている)
さてお次はサイクルが逆転するとき、しないときを見ていくが、念のため今の競馬と関係の少ない古い時代のデータを使わせていただく。
社台の過去の基礎繁殖の中にクリアアンバーという馬がいる。何頭ものG1ウィナーの祖先となった功労馬だが、この馬が前述のノーマルパターン(=き○ぐ×)、つまり自分のサイクル4.22〜6.22が表から始まる牝馬と推測される。
クリアアンバーからはアンバーシヤダイ、ダイナアンバー、ダイナクラシツク、サクラハゴロモらの良産駒が生まれている。アンバーシヤダイは牡で表、ダイナクラシツクは牝馬だが初回発情生まれではなく、母と同じサイクルが表のままで継続し、のちにイブキマイカグラ(阪神3歳S)を表で出している。
ではダイナアンバーはどうか。彼女は兄アンバーシヤダイとの誕生日がグッと接近していることから、おそらく77年3月20日頃に種付けされた初回発情生まれのはず。しかもこの種付け日は母クリアアンバーのサイクル外なので、奇数間隔年離れた年生まれの母のサイクル外種付け=「き×」となり、母とは違うリズムに表の時期が逆転する。つまりダイナアンバーの最初の表時期は2.8〜4.8ではなく、4.8〜6.8にズレるのだ。
こうしてダイナアンバーの表サイクルは「き×」に逆転し、後年メインゲストという娘を初回発情で受胎し生んだ。しかしその娘メインゲストは「偶数間隔年離れた年生まれの母サイクル内種付け」=「ぐ○」=「き×」なので、ここはサイクルが逆転せず、母と同じサイクルを継承する。よってその息子ファストタテヤマ(菊花賞2着=き○)はサイクルが裏の産駒、ということになる。
ではではサクラハゴロモはどうか。彼女はまた兄サクラアンバーとの誕生日がグッと接近しているので、おそらく83年5月7日頃に種付けされた初回発情生まれのはず。しかし彼女の種付け日は、奇数間隔年離れた年生まれの母のサイクル内種付け=「き○」となり、母と同じサイクルを継承する。よってその息子サクラバクシンオー(種牡馬=き○)はサイクルが表の産駒ということになる。
結論として、初回発情で種付けされた牝馬全てのサイクルが逆転するわけではない。あくまでも母と違うサイクルで娘が種付けされた場合に逆転し、娘以降の子孫に関しては母との関係は切れ、すべて娘のサイクルを表として見ていこうというわけだ。
いくつか補足を
(1)私はひょっとしたらこれ以外にもサイクルが逆転するパターンがあるのではないかと思っているが、残念ながら中島氏はこれ以外のケースを示していない。
(2)初回発情以外の空胎後などでも「その年一番最初に訪れた発情を捉えたら同じ逆転が起きるのか」と聞かれたこともあるが、私にはわからない。ただその年一番最初に訪れる発情を人間が見逃さず正確に捉えることはきっと難しいだろうし、しかもそれは厳冬期だから受胎率が低そうなパターンではあると思う。
(3)よくよく考えると、初回発情で生まれかつサイクル逆転する牝馬は母から見るとすべて「裏の娘」になる。ということは娘自体が競走馬としてどうかという話になるが、それを補うのが初回発情=純粋な自然サイクル生まれ、という考え方だ。私は初回発情の裏産駒はスピード的にもそんなに劣らないとみているし、クラブデータで言うところの評価はB(日がよければAもあり)だから、十分速い娘だと思っている。
今回の1/4異系配合の発表前の宣伝文句が競馬界の流行を取り入れた新配合理論追加っていう触れ込みでこれだったんですよ。バグなくってのはウイポ側の簡略化計算式みたいな感じでやるんじゃなかろうかってのは薄々承知できますね。
本格的な計算式だとおそらく架空馬生成でバグ起こる気がします。ドルメロ理論は月のサイクル位なら実装出来ませんかね?
またまた記事とは違った配合理論の小ネタ情報を提供したいと存じます。
ウイニングポスト10で母系インブリードという配合理論が登場したとお知らせしましたが、その最新作10 2024ではなんと1/4異系配合論が新たな配合理論として登場するとのことでした。私もちらちらと調べてみましたがサンデーサイレンスが良いモデルケースらしいのですがちょっと自信がないのでドルメロさんに評価を仰ぎたいなぁと思った次第です。
コーエーテクモさん、ドルメロさんのチャンネル見てたりしないだろうか(;´・ω・)
私もウイポのPV見ましたが、異系配合だけでクローバー2つとはかなりの爆発要素。
これ、モデルはサンデーなんですか。オルフェ&ゴルシ兄弟の母父マックイーンとかは違うんですか?
しかも1/4とは細かい仕様だこと。ウイポでいうところの異系がどこなのかわからないんですが、バグなく配合可能なのかなあ。
いずれにしろ、私どもにはコーエーさんからお声かかっていませんw
もし来たら? ご協力いたしますし、何なら先行プレイ動画挙げさせていただきますwww
記事にまでしていただき、大変恐縮です。
本当に感謝です、ありがとうございました。
ところで気になる事象が起きました。
牝馬の発情サイクルは21日周期で、約7日継続すると認識しています。
たとえば空胎明けで2月20日に種付し受胎せず3月18日に再度種付をし受胎したとします。
自然サイクルでは3月13日あたりが自然発情と思われますが、遅れの場合はどういった判定にしてるのでしょうか?
薬剤は主に早める為に使用していると考えていますがどうでしょう?
質問ばかりしてしまい、申し訳ございません。
私も全てのケースに立ち会っている訳ではないのですが、ご指摘の通り薬剤は周期を早めるために使用するので、21日周期から遅れたとみられる場合は、自然発情待ちの可能性が高いとします。
つまり2回目は3月13日より5日遅く「自然で」種付けした、自然②+5と考えるのがいいかと思います。もちろん立派な自然サイクル受胎です。
実際の現場では自然サイクルでも「−1日〜+7日」までズレた経験があります。クラブデータでは「+8日」まで自然と見なしています。
それ以上の±ズレがあるのかどうかは、また生産者さんに聞きたいと思っているところです。とくに10日前後遅れると、次の超早い薬剤使用日ともかぶってきますので、私たちだけでは見分けが難しいですよね。