※これは3月3日YouTube動画の台本原稿です。
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こんにちは、ドルメロチャンネルです。
さて今回はサラブレッド3大始祖を巡るもうひとつの継承プロジェクト、種牡馬クワイトファインについて、私なりの立場から解説をお届けいたします。
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これ以前にご紹介したパールシークレットの導入動画については、おかげさまでたくさんの方に見ていただけたようで、視聴回数、コメントや反響、すごいものがありました。
そのコメントの中に「パールシークレットだけじゃなくて、クワイトファインのことも忘れないでほしい」「クワイトファインの方は継承プロジェクトとして実際どうなんだろう」というお声があったんです。
私もクワイトファインの存在については少ししか聞いたことがなく、思わず「そういえば気になりますね」とコメに返信したところ
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なんとクワイトファインPJの公式チャンネル様からも、こちらにコメントをいただいたんです。
公式様からは、いつかクワイトファインに関してもぜひ動画に採り上げてほしいというご希望がありましたので、それなら繁殖シーズンたけなわになりつつある今が頃合いと見まして、今回急きょ動画を1本まとめることとしました。
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今回のクワイトファインPJに関して、私が検討しておきたい課題は大きく3つあります。
ひとつはクワイトファイン自身の血統構成要素をみること。
そして2つ目が、すでに生まれているクワイトファイン産駒の評価と、できれば繁殖牝馬の評価もしておこうと。ここが導入直後で産駒がいないパールシークレットとはちょっと違うところですね。
そして3つ目が、今年25年春から数年にわたっての配合方針をどのように考えるか。
ですが前回の動画視聴データを参考にすると、今回の動画もきっと公式チャンネル、また大狩部牧場さんのチャンネル経由で視聴される方が多数いるだろうと予想できるので、このあともなるべく易しいワードで、テシオの理論を知らずとも、少しでもわかっていただけるように解説したいと思います。
(5)(5秒ジングル)
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まずは種牡馬クワイトファインを血統表で見ていきますが、
種牡馬として最も大切な要素は、子孫に自分の「形」を伝えることです。
スピードはお母さんから遺伝しますし、また種牡馬の年齢によっては形を遺伝できない時期もあります。
ですから25年春時点のクワイトファインの状態を見ることで、今後数年間彼が何を成すことができるのか、現実的な目標が定められるわけです。
そして今回は、ヘロド系の継承を謳うプロジェクトの意義はあえて問いません。
前回でもそういう声をいただきましたし、さらにパールシークレットとは違って、実はクワイトファインには近い直系の父系の形、つまりトウカイテイオーやシンボリルドルフの形を、現代に遺伝できる可能性がまだ残されています。
ならばテイオーらの形を継ぐ貴重な牡馬を生むことが、プロジェクト的にも大きな意味を持つだろうと考えたからです。
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これがクワイトファインの5代血統表です。
まず彼は、実際には母似の馬です。母系4代前のタニノムーティエの活性値つまりは遺伝力が一番高いので、自身は直系父系トウカイテイオーらの形を継いでいません。
ただ種牡馬としての遺伝経路を考えたときに、母系のタニノムーティエがかなり深い位置に陣取っているため、父似の産駒に伝わる形の初手は父のトウカイテイオーになります。
そしてもう少し活性の強い年に種付けできれば、祖父のシンボリルドルフも容易に形の候補に挙がってきます。
逆にもう2年ほど経過して、再びクワイトファインが劣性期つまり遺伝力のない時期に入ると、今度は父の形がでないかわりに、このトウショウボーイのクロスの弊害がなくなってきます。
この辺はまた後ほど詳しく解説します。
ともあれクワイトファインは、直系の祖先トウカイテイオーらの形を出す役割を十分果たせる種牡馬だということは覚えておいてください。
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さてここからは、すでに生まれている既存の産駒とその母たちの評価をしていきます。
まずはママテイオーノユメの22、競走馬名テイオーノユメです。
本馬は一度競馬にデビューした後に乗馬になったと聞いていますが、もし私が何も知らずにこの血統表を見たとしても、これはいろいろと心配な点がある馬に映ってしまいます。
まずは基礎体力。代々の母たちが積み上げてきたはずの活性値合計が小さすぎて、サラブレッドの平均に遠く及ばない38どまりと虚弱であること。そして近いクロスが生きていること。
さらに形の遺伝をもたらす優先祖先を計算すると、クワイトファインの活性が3で母父ヴァンセンヌの活性値がMAXの8。引き算すると母系のディープインパクトを通って5代前Wishing Wellへ遡るんです。
一般にはサンデー系の形は現代競馬における王道とも言えるものですが、ことディープインパクトを通ったサンデーの形は他のサンデー系とは違い、馬体がほっそり出る傾向にあります。
私は配合時にディープインパクトが優先祖先になることを極力避けます。
おべんちゃらを言ってもしょうがないので失礼を承知で申し上げると、この母ママテイオーノユメに関しては、どの年の配合でもテイオーノユメと同じような悩みを持つ馬が生まれやすくなってしまいます。
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同じことが、このイットーイチバンの23にも言えます。
基礎体力の値が平均を大きく下回る31と虚弱であること、形がこれまたディープインパクトへ遡りそうな点はテイオーノユメと全く同様で、体質面の心配が先に立ちます。
もちろん私は本馬の馬体を全く見ていませんので、実物はたいへん立派な馬体なのかもしれませんが、こういう数値的な性質は競馬の肝心な場面で顔を出すことが多く、体重を減らしたり調整を難しくする要因のひとつになります。
ただ1点だけ良いことがあるとすれば、祖母のアイアンビューティが母のゼロ活性であるため、トウシヨウボーイのクロスの弊害を避けていることです。
しかしその分基礎体力が削られているので、結局良し悪しになってしまうんですが…
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ではクワイトファイン産駒で将来競走に向きそうな期待の馬はというと、まずこのガレットデロワの24を挙げておきます。
母ガレットデロワはダート短距離の切れ者だったブロードアピール牝系の1頭で、父のエピファネイアの活性が強く、今度はディープの形の影響を逃れています。
さらに数字を見てわかるとおり、本馬は母系で2回のMAX活性期を経ていて基礎体力がとても高く、丈夫な子に分類されます。
こういう基礎データが合格して初めて、その先の月のサイクルや誕生イベントに言及する意味が出てきます。
本馬は母ガレットデロワから表のスピードを、自然サイクルの4月29日付で享受できており、ひょっとするとかなりのスピードを持っていても不思議ではありません。
勝ち上がるためにはやや長めの距離を必要としそうな点と、ダート適性には疑問符がつくので、どこでデビューするかがカギとなりますが、順調ならちょっと面白いところを見せてくれると思います。
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そしてこのクワイトファインPJの行く末を大きく左右する牝馬として、このバトルクウを挙げなければなりません。
バトルクウの功績としては、ひとつは順調にクワイトファインの産駒を輩出していること、そして昨年のサマーセールにおいて産駒ベラジオノユメを売却できたこと、さらに今年2月に待望の牡馬を産んだことです。
この表は母バトルクウに至る母系代々の月のサイクルで、言い換えれば祖先からのスピード継承の道のりとも言えます。
バトルクウの祖先は古くは小岩井農場の基礎牝系フロリースカツプに源を発し、そこからシラオキ、さらには吉田牧場のタニノシスターからカントリー牧場のウオッカというラインと、トウショウ牧場牝系からシスタートウショウ、そしてバトルクウというラインなどいくつかに分かれています。
月のサイクルで見た場合、これらブラックタイプ名牝たちのサイクルは「母の基礎サイクル内で種付けされ、奇数間隔年で生まれた馬」つまりは「き○」という場合が多く、スピード豊かな表サイクルはこちらだろうと推測されます。
また誕生日を見た限りでは途中の牝馬で逆転を起こしている様子もないので、今回バトルクウの産駒に関しても表は同様に「き○ぐ×」のはず。
となると前述のベラジオノユメはこの表サイクルに入りますが、姉のクワイエットエニフと今年生まれた牡馬産駒は残念ながら裏サイクルという結論になります。
そしてもうひとつ強調しておくべきことは、スピード表であるベラジオノユメが母バトルクウの真のMAX活性産駒(母から生涯最高のスピードを得た可能性が高い仔)であるという奇跡です。
大切なことなので2度言いますが、これははっきり奇跡です。
狙っている私たちでさえ、物理的にまだ胎内に子がいるため種付け時期を逃したり、そもそも母のMAX活性期が表サイクルに入らない不運な牝馬もいるというのに!
そんな貴重な真のMAX活性産駒がこのクワイトファインPJにいたとは!
しかもその子がちゃんとセールで落札されて、あのベラジオ軍団に入り、今日も北の大地で鍛えられているとは!
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これはベラジオノユメの血統表です。
姉のクワイエットエニフ同様、この姉妹の形は母系のスペシャルウィークの影響が強いです。
スペシャルウィークはサンデーサイレンスのゼロ活性ですから、姉妹はその先にいる凱旋門賞馬セントクレスピンの影響を受ける欧州系の馬です。
よって芝はもちろん、白砂を敷いたダートであれば十分こなす高い適性が期待されます。
このベラジオノユメが良い馬だとわかり、購買のいきさつを知りたくなった私はすぐに当時のベラジオチャンネルを拝見しました。
セールというものはいつもそうなのですが、たとえドルメロ側の提供するデータ上でいくら良くても、実物を見るとパッとせず購買に至らないケースが圧倒的に多いです。
ところが本馬は園田競馬の先生も、また北海道の先生も馬体が良いと太鼓判を推したそうで、実際本馬は門別競馬でデビュー予定だそうですから、プロから見てもきっと光るものがあるのでしょう。
私はどこかでこの仔が初勝利を挙げて、再び森川社長が喜びの動画を撮ってくれるだろうと今から予言しておきます。つくづくもってるオーナーさん達だよなあ。
惜しむべきはこの仔が牡馬じゃなかったという点だけ。いや2つくらい勝っても全然驚かないけどね。
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一方こちらが、今年生まれたバトルクウの25の血統表です。
上の姉たちと決定的に違う点は、父クワイトファインの活性値がだいぶ上がったので、優先祖先が母父のケイムホームへ移ったことです。よって弟はバリバリのダートっぽい足元になるはずです。
ただ心配なのは母のMAX活性、一番いい時期が過ぎてしまったことで、この子の基礎体力が再び低い時期に入っていることです。平均を大きく下回る38止まりですから、これは虚弱と言える部類。
スピード的に裏サイクルでもあり、競走馬としてはちょっと疑問符がつくし、種牡馬としてもケイムホームの活性がギリ強くて、トウカイテイオーら直系の形を出すには至らないと推測されるので、すごく惜しい存在になっちゃっているんですね。
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ここからは、今後理想のクワイトファイン後継牡馬を作る上で考えておきたい繁殖牝馬のポイントをいくつか紹介します。
まず25年春におけるクワイトファインの状態としては、ようやく自分の活性値が7つまりはMAX手前まで上昇し、父似の産駒を容易に産む土壌が整いつつあります。
実は種牡馬としては25年26年この2シーズンこそが重要で、むしろ今までは種付けしても父の形が出る時期ではありませんでしたから、この2シーズンのためにあった助走期間と言ってもいいくらい。
クワイトファインが立派に種牡馬としての役割を果たせることはわかっていますから、あとはこの高活性をどういかして父似の配合をしていくか。
それには繁殖牝馬のラインナップを少し再考すべきかと思います。
もちろんおいそれと次の繁殖を用意することが難しいのを百も承知で申し上げるのですが、ここまでの配合を見たかぎりでは、後継作りに適した牝馬はほぼガレットデロワ一択。
産駒の基礎体力が平均して高いし、形としてもディープの影響を受けない。
しかしそのガレットデロワも毎年クワイトファインを付けるわけではないでしょうから、もし今後新しい繁殖探しが可能ならば、
ひとつは、強い活性値の父をもたない牝馬であること
もうひとつは、逆にボトムラインの母たちは平均以上の活性値を持っていること
ですが、これは詳しい計算を知っているからこそわかることであって、ちょっと言い換えると
(1)7、8歳の若い時に種付けした父が入っていないこと
(2)ボトムラインに8歳までの若い母が産んだ牝馬が多く入っていること
となります。
これなら少なくとも、丈夫で父たちによく似た産駒を期待できるからです。
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そしておまけにはなりますが、2年後の27年春には、クワイトファインの活性が再び劣性期に入ります。
すると今度は唯一可能なクロス祖先候補であるトウシヨウボーイによるクロスの弊害がなくなり、非常に使いやすくなります。
これはクワイトファインの母父ミスターシービーがミニマム期の種付けだったからで、計算上は27年春だけこのクロスの弊害がありません。試すならこの年に限ります。
たとえ産駒が牝馬であっても、まず競走馬として優秀な子がを出すことこそ数を集めるプロジェクト継続の大切なポイントになると思うので、ここから27年春までは何らかの形でチャンスが訪れていると考えてください。
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クワイトファインPJ応援動画 いかがだったでしょうか。
私にとってすごく意外だったのは、このプロジェクトがてっきりテシオ理論でみてしまうとテイオーの形が絶対出ない活動じゃないかという目で見ていたので、実際テイオーの形を継ぐ牡馬が生まれる可能性があるんだという点、そこに非常にワクワクしています。
テイオーは私にとっても忘れ得ぬ青春の名馬。あのダンスに目を奪われたファンの一人としては、どうせならぜひ懐かしい直系父の姿、馬体を現世に残してほしい。
今後もこの活動を見守り、応援したいと思います。
今回の動画はここまでです。
ご視聴ありがとうございました。