ダート馬とて侮るべからず
私がもし共同馬主クラブで出資するなら、きっと芝とダート両方の候補を1頭ずつ選びます。
ダート馬は日本中走れる選択肢が広いですし、地方競馬にも重賞があり、究極のところ世界にも道は開けているからです。
なんなら大井のB2あたりをウロウロしてもらってもいっこうにかまいません。
見に行くのも楽しいですしね。
というわけで現場やPOGではちょっと敬遠されがちなダート馬ですが、最初からダート馬と判断できる産駒も結構多いものです。
今回はそんな馬たちにスポットを当て、最後に「もうすぐトップテン圏内全集」をお届けして、本コーナーを締めることにします。
伝統の冠名がとても懐かしい1頭
▼No.103 メジロバーミューズの17
17年3月16日生まれ 牝 黒鹿毛
父 スクリーンヒーロー
母父 アサティス
【診断結果】
・優先祖先 Buckpasser(1963)
・馬場、距離適性 ダートの中距離
・基礎体力値 81(平均50)
・頭脳 やや心配
・総合 ★★(満点は5つ)
今回のセレクトセール2018調査で健闘が光ったのが、メジロ牝系の末裔たちです。
残念ながらステイヤー重視の姿勢が時代のすう勢に取り残され、かつての名門牧場は閉鎖されましたが、残された牝系の質の確かさは今もひしひしと感じられます。
「メジロはもうダメ」といわず、サイクルが合っている繁殖を知っておくだけでも、今後必ず役立つことがあるでしょう。
母メジロバーミューズは、父アサティスのMAX活性産駒です。
そこからさらに3代さかのぼったBuckpasserが優先祖先になるので、ダート馬であることは確定的です。
4代母 シエリル 71年5月15日生
3代母 メジロエニフ 79年4月14日生 (×)
2代母 メジロエバート 87年5月11日生 ×
母 メジロバーミューズ 02年4月10日生 ○
兄 オウケンブラック(父アグネスデジタル) 11年4月6日生 ○
本馬 17年3月16日生 ○
6つ上の兄も当セール出身。
1歳セール1260万円で落札され、芝を中心に8400万円を稼いだ孝行馬(現役)です。
妹も体力は十分なので、こういう稼ぎ方をすると思います。
心配なのはフィディオン、モガミ、アサティスと代々名うての気性難種牡馬をつけていることから、ある程度の難しさは覚悟すべき点と、実馬を見て「もう少し腹回りに余裕が感じられればいいな」と思うシルエットが2点目。
牝馬ですから、その辺をうまく受け入れながら活躍してほしいものです。
距離は短めもまだ芝を走れる可能性残る1頭
▼No.120 ルナレガーロの17
17年1月31日生まれ 牡 鹿毛
父 ドリームジャーニー
母父 アドマイヤムーン
【診断結果】
・優先祖先 アドマイヤムーン〜ポリツク(1969)
・馬場、距離適性 ダートor芝の短距離〜
・基礎体力値 50(平均50)
・頭脳 普通
・総合 ★★(満点は5つ)
今回の紹介馬中、まだ芝を走れる可能性を残している1頭です。
母父アドマイヤムーンはご存じの通り、自身の成績と全く違うタイプの産駒を出す種牡馬で、それはある意味仕方のないことでもあります。
というのは、
▼アドマイヤムーンは4代前まですべて「劣性期」の種牡馬しかつけられていない変わった馬
だからです。
これだけの名馬で、血統的主張がないというのも本当に珍しいこと。
従ってアドマイヤムーンは祖先の母方から母方へと血をたどることになります。
すると5代前にMortefontaine(読み:モルテフォンテーヌ・1969)という母が現れ、この馬の父がやっと優性期の種牡馬ポリツクに当たります。
モルテフォンテーヌ自身は現役時1勝しかできませんでしたが、血統的には名スプリンターPolyfoto(1962)の全妹という背景があります。
彼女の父ポリツクもまたスプリンターで、のちに日本に輸入されましたが、あまりいい成績は残せませんでした。
アドマイヤムーンがなぜか優秀なスプリンターばかり輩出するのかは、これらモルテフォンテーヌ一族の影響が強いからでしょうか。
もう少し自身の種牡馬活性が上がってくると、再び芝の中距離馬を出すこともありそうですよ。
4代母 シヤダイフエザー 73年2月20日生
3代母 ダイナカール 80年5月10日生 ○
2代母 カーリーエンジェル 90年6月1日生 ×
母 ルナレガーロ 10年2月4日生 (×)
本馬 17年1月31日生 ○
ここまで、アドマイヤムーンにドリームジャーニーをつけても、そんなに距離は保たないよ、というお話でした。
実馬は歩様がスムーズで、芝も十分イケそうですが、ペース的にダートの短距離も向くだろうと思います。
一番わかりやすいダート牝馬も侮れない基礎体力
▼No.203 ブロンコーネの17
17年3月2日生まれ 牝 栗毛
父 ヘニーヒューズ
母父 ブライアンズタイム
【診断結果】
・優先祖先 父の父 ヘネシー(1993)
・馬場、距離適性 ダートの短距離〜
・基礎体力値 69(平均50)
・頭脳 普通
・総合 ★★(満点は5つ)
牝系は千代田牧場ゆかりのビクトリアクラウン(1979・エリ女王杯勝ち)にさかのぼる名門ですが、いよいよ本馬で短距離ダート界に産駒デビューとなりそうです。
4代母 ワールドハヤブサ 67年3月30日生
3代母 ビクトリアクラウン 79年3月28日生 ○
2代母 ミセスビクトリア 95年4月26日生 (○)
母 ブロンコーネ 03年3月27日生 ○
本馬 17年3月2日生 ○
母は3歳春のフローラSで2着となり、オークスへも駒を進めた芝馬。中距離が専門でした。
繁殖入りしてからは毎年中距離馬がつけられ、ちょっと産駒のスピード不足が目についたので、この年のヘニーヒューズはいい選択だったと思います。(ゼンノロブロイ4年連続よりは)
ただ妹はまたゴールドシップへと先祖返りしましたので、唯一ファミリーに残された「突然変異の可能性」が本馬であるといえます。
基礎体力も相当。こういう馬を大井のB1、B2あたりにおいておくと、夏に見に行くのが楽しいでしょうね(しつこいな。B2に何かあるのか?)。
実馬の歩様はまさにダート馬のそれ。
健康で長い現役生活を送ってほしいです。
ダート馬候補ではNo.1!本セール2頭目の目玉が登場
▼No.106 シラユキの17
17年2月21日生まれ 牡 芦毛
父 スマートファルコン
母父 クロフネ
【診断結果】
・優先祖先 母父 クロフネ
・馬場、距離適性 ダートのマイル
・基礎体力値 84(平均50)
・頭脳 普通
・総合 ★★★(満点は5つ)
本セールでダート用の産駒を1頭選ぶなら、本馬で決まりです。
4代中、母父のクロフネ以外に優性期種牡馬はおらず、すぐにクロフネの仔だとわかります。
3代母トキオリアリティーは、アイルラヴァゲイン、リアルインパクト、ネオリアリズムら一流馬を長い間輩出した現代の名牝の1頭。
また競走馬としては活躍できずも、サイクルの合った繁殖牝馬を多数出しているのが特徴で、本馬の2代母、母もそれに該当します。
3代母 トキオリアリティー 94年5月25日生
アイルラヴァゲイン 02年4月5日生 (○)
リアルインパクト 08年5月14日生 ○
ネオリアリズム 11年3月22日生 ×
2代母 アドマイヤフッキー 03年4月1日生 ×
母 シラユキ 12年1月23日生 ×
本馬 17年2月21日生 ×
本馬の強調点は、その名牝トキオリアリティー自身が2代母にMAX活性を与えたこと、そして2代母も母にMAX活性を与えたこと、これに尽きます。
このMAX活性2回の恩恵で、基礎体力は驚異の84!
加えて母シラユキの良い発情期(3月6日から5月6日)の初期に種付けされたと想定できるので、スピードも十分。
ただファミリーは決して早熟ではないので「成長待ち」の期間もあるでしょうが、これだけ心強い背景がそろえば開花を待ってみたい気がします。
クロス面で気になるサンデーの3×4は、父系のゴールドアリュールがサンデーの中性期産駒であること、スマートファルコンが劣性期であること、母系のフジキセキも2代母Aフッキーに半分しか活性を伝えていないことを考え合わせると、どうも最低限のリスクに収まりそうです。
狙えフェブラリーS!が合い言葉かな?
夢はつきませんね。
もうすぐトップテン圏内の馬たち全集
ここからは、あと少しで推薦を逃した馬たちを一気にご紹介します。
まずはディープインパクト産駒から。
▼No.33 サファリミスの17 牝 黒鹿毛
優先祖先は亜国産のNot for Sale(1994)。
いま南米産の繁殖牝馬が増えている中、この大種牡馬の名前は覚えておくといいでしょう。
母も代表産駒に名を連ねます。
▼No.71 ノヴァホークの17 牡 青鹿毛
母父ホークウイングからミスプロの影響が強い馬。
距離はあまり保たないし、ダート馬かも。
▼No.175 ナイトマジックの17 牡 青鹿毛
優先祖先がサンデーと読みやすい血統ではあるものの、スピード面であまり期待できず。
次にキンシャサノキセキ産駒から。
▼No.17 ヴァイスハイトの17 牡 鹿毛
母父アドマイヤベガ〜トニービン〜ナスルーラの影響が強い馬。
そのままスピードが出れば体力はあるので、いい馬になる。
▼No.202 メジロカトリーヌの17 牝 鹿毛
キンシャサの母ケルトシャーンが優先。将来をあまり想像できず。
▼No.218 シェリュスドパリの17 牡 黒鹿毛
これもケルトシャーンが優先。体力もちょっと足りない感じ。
残りは1頭ずつ。
ハービンジャー産駒から
▼No.28 ロザリウムの17 牝 栗毛
この馬自身が優先祖先をどこにも持たない「アドマイヤムーン」型の産駒。
栗毛に出ていることから、バラ一族の4代母ローザネイあたりの影響が強いと見るが…。
スピードは十分良いものが出ている。
ブラックタイド産駒から
▼No.38 ファイナルスコアの17 牡 青鹿毛
キタサンブラックはブラックタイドの劣性期産駒で、母系の良いところが出たが、この馬はブラックタイドが優先祖先。
よって父やサンデーの姿・形を継いでいる。
ヘニーヒューズ産駒から
▼No.171 メジロプレストの17 牝 鹿毛
母父メジロライアンからメジロサンマンの祖先が強い。
ダートの中距離馬かもしれないし、または芝のステイヤーかもしれない。ちょっと父とは異なる馬に出そう。
そして最後にネオユニヴァース産駒から
▼No.201 ワードパワーの17 牡 鹿毛
まったく父のネオユニヴァースと考えていい馬。
母がゼロ活性に当たってしまい、少し体力値に欠けるのが難点。
今後の予定について
これにて1歳馬最速診断は終了。
当歳馬については、デュラメンテなど新種牡馬の産駒をまずご紹介し、それでセール当日を迎えたいと思っています。
全馬紹介は、セール後に間に合わせていきます。
そしてセール終了後は、新馬戦の予想をしながら、おこづかい稼ぎも考えています。
セールと同じく「これだ!」と思う馬が出たら、実際に買ってみようという企画です。
まあいい馬はよく知られていて、配当は微々たるものでしょうけど。
これからもどうぞお楽しみに。