準OPを勝ったばかりのピチピチ(死語)上がり馬が多数出走
土曜に行われるG1裏開催のダートハンデ戦、マーチS。
ダート界は年齢による能力減退が緩やかで、いくつになっても着を拾えるし、いくつになっても気が向けば激走できる環境にある。
裏を返せば、若駒世代がいきなりOPに飛び込んで結果を出すのはちょっと難しいわけで、ルヴァンスレーヴが3歳秋に「天下統一」を果たしたのは、彼の規格外の破壊力を証明する結果になった。
なのだが、今年のマーチSはちょっと様相が違う。
明け4歳馬が6頭出走、うち3頭は前走で準OPを勝ってきたばかりの上がり馬。
この時期に準OPを勝って昇級する馬がこうもポンポンと出るのだから、4歳勢の層の厚さは一目瞭然だ。
中でも今年の飛躍が見込まれる勝ち上がり3頭について、さっそく血統表を見ていこう。(今回はちょい長くて申し訳ない!)
筋金入りの栗毛血脈 アルドーレ
前走・納屋橋Sで1番人気に応えて快勝したアルドーレ(牡4・父オルフェーヴル・昆貢厩舎)。
【 優先祖先 】
父も母も栗毛一族であるが、
父 オルフェーヴル 活性値6
母父 フレンチデピュティ 活性値5
3代父 Crafty Prospector 活性値8(MAX)
4代父 Blushing Groom 活性値5
よってアルドーレは母似産駒で、優先は2代母のブラッシングプリンセス(1996・栗毛)ということになる。
3つ上の兄にギャラクシーSを勝ったアキトクレッセント(牡7・父ウォーエンブレム)がおり、兄の場合は父ウォーエンブレムの活性値が4なので、優先はさらにCrafty Prospectorの母系へさかのぼるが、弟はそこまで面倒な血統ではない。
Crafty Prospectorを境にして、それより優先祖先が古い兄はマイル色が強くなり、新しい弟は中距離色が強くなる。Crafty Prospectorも10ハロンを軽くこなす中距離馬だった。
【 基礎体力 】
4代母 Cool Mood(1966) 1.25
3代母 Princess Laika(1980) 1.75
2代母 ブラッシングプリンセス(1996) 0.25
母 ティックルピンク(2006) ★2.0
1.25+1.75+0.25+2.0=5.25 → ★66
母ティックルピンクは自身こそ祖母からあまり体力を受け継げなかったが、仔のアルドールにはギリギリMAX活性を伝えているようだ。
【 将来の展望 】
兄アキトクレッセントは2歳時から高い能力こそ示していたものの、基礎体力は並みの並み程度でしかなく、連戦の後はきまって大敗する馬だった。
幸い途中に1年近い休養があったおかげで、基礎体力に年齢の上積みを加えることができ、OPまで出世したように見える。
一方の弟はここまで至って順調に出世できている(8戦4勝)ので、基礎体力がものをいうのはこれからということになろう。
ダートOPに距離千八以上の舞台が少ないので、千八だと軽い馬場でスピード負けする(本人は重も得意)こともあるだろうが、良馬場で距離二千以上(加えて左回り)の条件が揃ったら、ちょっと大きく狙ってみたい馬だ。
地方競馬の距離二千以上ならさらに鬼のような存在になる可能性も。
母晩年の傑作となるか ロードゴラッソ
ロードゴラッソ(牡4・父ハーツクライ・藤岡健一厩舎)はロードHCさんのクラブ馬なので、名牝サッカーマムの繁殖サイクルが気になるところだが…。
Willow Dare 57.4.29 4.13〜6.13
Cherry Willow 72.5.9 き○ 4.23〜6.23
Cherry Jubilee 82.3.17 ぐ× 3.3〜5.3
Traverse City 90.4.22 ぐ× 4.6〜6.6
サッカーマム 00.3.20 ぐ(×) 3.3〜5.3
ロードエスクード 05.3.17 き○
レディルージュ 06.3.13 ぐ○
レディナデシコ 07.4.18 き×
ラパージュ 09.4.18 き×
リラコサージュ 10.4.17 ぐ×
ロードフォワード 11.3.31 き○
ルアンジュ 12.3.12 ぐ○
ラグランジュ 13.4.11 き×
ロードレジスタ 14.5.28 ぐ×
ロードゴラッソ 15.5.16 き×
いかがだろうか、母サッカーマムの偉大さがよくわかるテーブルだ。
この中でも走ったと言える馬は
レディルージュ
リラコサージュ
ロードフォワード
ロードゴラッソ
だろうが、サイクルにしっかり合致していると言えるのはリラコサージュとロードフォワードのみ。ここが判定の難しいところ。
しかしよく見ると、レディルージュとロードゴラッソのはみ出し具合はどちらも2週間ほど早生まれだった可能性を示唆しており、この早生まれ特性が母サッカーマムの「妊娠中のいつもの癖」だったとも考えられる。
さて話を戻して、ロードゴラッソの優先祖先を探すと、
【 優先祖先 】
父 ハーツクライ 活性値5+α
母父 Kingmambo 活性値1(ミニマム)
3代父 Halo 活性値4
4代父 Coastal 活性値5
タッチの差でハーツクライが最も高活性となり、優先も父ハーツクライ自身になる。
父は鹿毛だがロードゴラッソは真っ黒な青毛馬。
流星と左後肢の一白は父譲りだが、加えて右脚にも白が加わった。
見るからにサンデー系の仔だな、とわかる出で立ちだ。
ハーツ産駒だからデビュー当時のように時計のかかる芝は大の得意だったが、上のクラスでは芝二千で2分を切るようなタイムを要求されたため、足踏みをするようになったのだろう。
実際のレース映像を見たが、確かにかき込みの強い走法で、ダートは鬼っぽい印象。
重なら今でも芝を走れるくらいの軽さも感じる。
【 基礎体力 】
4代母 Cherry Willow 0.25
3代母 Cherry Jubilee 1.75
2代母 Traverse City 0.25
母 サッカーマム 1.5
1.5+0.25+1.75+0.25=3.75 → 47
この系統の産駒の成否は、母サッカーマム自身からどれだけ体力をもらえるかにかかっている。
母系4代のうちミニマム期にあたる母が2頭もいるので、子孫は基本的に虚弱の部類。
レディルージュやロードゴラッソはまだ母が高活性の時の産駒で助かっているが、もっと走っていいはずだったリラコサージュ(父ブライアンズタイム)は母もミニマム期!の虚弱体質なので、基礎体力は合計でわずかに31。
早期勝負型の典型で、3歳秋の秋華賞以後は鳴かず飛ばずだった。
ロードフォワード(基礎体力34)もキャリア50戦以上の強者に見えるが、成績として本当に良かったのは4歳まで。
以後は年を重ねて無理せずそこそこ走れる体になり、スピードを要求されない地方でまた勝った、というだけだ。
ゆえに末っ子ロードゴラッソも体力はよくて平均まで。
クラブの意向もあろうが、あまりに調子こいて使い込むとそれっきり、というシーンも出てこよう。
スピードさえあれば芝向きだった? エイシンセラード
こちらは6戦4勝と、アルドーレよりさらにスピード出世となる牝馬のエイシンセラード(牝4・父カネヒキリ・今野貞一厩舎)。
【 優先祖先 】
父 カネヒキリ 活性値4
母父 ファルブラヴ 活性値8(MAX)
3代父 Supremo 活性値4
4代父 Master Derby 活性値7
エイシンセラードも栗毛馬であるが、これは父カネヒキリではなく母から来たもので、優先はファルブラヴの母の母・Little Nana(1975・栗毛)になる。
ファルブラヴの母系は筋金入りの芝ステイヤー血統で、Little Nanaもリステッドのフランソワアンドレ賞を勝ち、その後障害にもチャレンジしたバリバリの欧州スタミナ派だ。
ファルブラヴこそ父のFairy King(1982)が高活性だったため、そこまでステイヤーにならず、母のGift of the Night(1990・マイラー)が優先止まりだったが、エイシンセラードは日本だと芝のスピードが足らずに現在ダートを走っている可能性がある。
稍重で2勝するも、砂の深い大井ではサッパリ(重賞といえども)だったところにも、その片鱗がうかがえないだろうか。
エイシンセラードの実際のレース映像を見てみると、確かにパンパンの良馬場芝向きのフットワークとは言いがたいが、重苦しさはさほど感じない。
むしろあの前肢のかき込みようだと、ちょうどJCに来るような欧州馬を彷彿とさせるものがある。
【 基礎体力 】
4代母 Salt In My Stew(1983) 1.0
3代母 Above the Salt(1988) ゼロ
2代母 ワイオミングガール(1997) 0.25
母 エーシンアマゾーン(2007) 1.75
残念ながら2代母はわずかの差でゼロ活性。
1.75+0.25+1.0=3.0 → 38
リラコサージュほどではないが、オープンの競走馬としてはこちらもギリギリの水準。早期勝負型の可能性もある。
休み明けは鉄板だが、今回のローテ中2週はちと気にかかる。
【 結論 】
上がり馬3頭の中ではアルドーレの配合が2枚は上。もっと出世していいダート界の若きホープ
馬柱ではみんな同じ境遇に見えても、よくよく血統表を調べると月とすっぽんほど中身が違う馬が集まっている。それが競馬なのである。