いよいよ2歳馬診断の長い旅に出る
今回から有力クラブを中心に、2歳馬たちの血統診断を行っていく。
まずは獲得賞金でトップを走る「サンデーサラブレッドクラブ」の2歳馬たちから見ていこう。
初回は「芦毛のディープ産駒」2頭をピックアップしてみた。
▼ナイトマジックの16(牡2・木村哲也厩舎予定) 番号102
父 ディープインパクト
母父 Sholokhov
5月7日生まれ 芦毛
ディープなのに芦毛。
最初は迷いますよね。キミは何者なんだ、と。
でもさすがにこういう馬までディープの才能をキッチリ継ぐと考えるファンはいないでしょう。
彼の本性を詳しく見ていきます。
【診断結果】
・優先祖先 Kalaglow(1978)
・馬場、距離適性 芝のクラシック
・基礎体力値 50(平均50)
・スピード 疑問
・頭脳 普通
・総合 ★(満点は5つ)
優先祖先のKalaglowは、エクリプスS(10F)とキングジョージ(12F)を勝った芦毛馬。
この馬の最大活性期(9歳時)に生まれたのが3代母のNoveka(1987・3戦3勝)です。
Kalaglow自身も父のKalamoun(1970)の影響が強い馬で、このゼダーン〜グレイソヴリンの系統は、日本にもトニーピンなどで定着しています。
ゼダーンはグレイソヴリン17歳時の産駒で、ネアルコの弊害がありません。
よってノーザンダンサー系を多く持つ牝馬との配合にも容易に対応できるんですね。
基礎体力は、母の最小活性期に当たっているので、ごく平均。
一番の問題は、やはりスピード面です。
祖母も母も現役時に活躍した馬なので、よいスピードを継いだ牝馬だと仮定すると、この馬は残念ながらよい発情期を逃してしまったようです。
優先祖先の距離適性を考えると、ぜひスピード面での後押しが欲しかったのですが…。
頭脳面は、ごく普通とみます。
代々の配合系統だけなら、むしろ良好と言えるレベル。
気になるのはクロス面で、母系のNorthern Dancerは薄いのですが、実はディープ側のNorthern Dancerはかなり濃いまま残っています。
ディープ産駒を見るときに一番やっかいなのが、このNorthern Dancerクロスです。
精神面で繊細すぎるディープ産駒は、一度このクロスの影響を疑った方がいいでしょう。
なお余談ですが、本馬のひとつ下の全弟(父ディープ・2017生まれ)は青鹿毛に出て優先祖先が変わり、しかもいい発情に当たった可能性があります。
このまま母馬の人気が下がるようなら、来年この仔だけでもダメもとで指名してみる価値はありそうです。
ポテンシャルは相当あるはずですから。
まずは一度どこかのセールで、実馬の立ち姿を見てみたいですね。
兄はコスパを考えても、高評価は与えられません。
▼ザズーの2016(牡2・高野友和厩舎予定) 番号147
父 ディープインパクト
母父 タピット
1月31日生まれ 芦毛
こちらの芦毛ディープ産駒は、米国の香りが強いようです。
果たして適性はダートか芝か…。
【診断結果】
・優先祖先 母父タピット(2001)
・馬場、距離適性 ダートのマイル
・基礎体力値 81(平均50)
・スピード 良好
・頭脳 やや繊細
・総合 ★★★(満点は5つ)
ひとつ上の全姉・アルーシャ(牝3・藤沢和雄厩舎)も芦毛で、今年のクイーンCではテトラドラクマの3着するなど、芝でもやれるところを見せているのですが、あちらの優先祖先はタピットではなく、Mr. Greeley(1992)の系統である可能性が高いです。
ただしタピットは距離に融通が利く産駒が多いので、たとえ本馬がダート馬だったとしても、スプリントから千八くらいまで縦横無尽に走れる馬主孝行に成長するかもしれません。
なにしろ基礎体力が理想的な高さ。
加えて3代母からよい発情期の配合を重ねてきているので、スピード面でもかなりの上積みが予想されます。
スピードに関してあまり恩恵がなかったと思われる姉でさえあの走りっぷりですから、これは期待できそうです。
唯一の弱点は、精神面かもしれません。
代々の配合には同系色こそありませんが、母系に2本、そしてディープに1本あるNorthern Dancerクロスは生きており、これがどこまで影響するかで本馬の出世具合が左右されそうです。
なにしろ総額1億円、一口250万円の高馬ですし、3歳春からダートのマイルで活躍されてもなあ、と思われるでしょうが、順調に夏を越したらなんぼでも地方G1から賞金をくわえて戻ってくるはず。
そう割り切れれば、むしろいい買い物になる可能性さえあります。
コスパと芝適性の低さを鑑み、★は辛めに採点しましたが、自分のテリトリーで意外な大活躍があっても驚けません。