種牡馬を見る上で絶対に欠かせない「最大活性」とは
POG大会や共同馬主クラブ出資において、間違いのない馬選択をするには、まず種牡馬のことをよく知らなければならない。
今年の2歳馬は2016年に生まれた馬たちであり、種付けは2015年に行われたことになる。
この2015年に、種牡馬としての「最大活性期」を迎えたのが、以下に記す「99年組」と「07年組」の種牡馬たち(産駒数の多い馬だけを抜粋)だ。
【99年組】 第2期
ロックオブジブラルタル
ゴールドアリュール(3月3日生)※ラストクロップ
シンボリクリスエス(1月21日生)
タニノギムレット
【07年組】 第1期
ベーカバド
ケープブランコ
ヴィクトワールピサ(3月31日生)
エイシンフラッシュ(3月27日生)
ダノンシャンティ(4月28日生)
ルーラーシップ(5月15日生)
ワークフォース(3月14日生)※現在はアイルランド繋養
モンテロッソ
どうして最大活性になるかは後日また動画で説明するとして、ここでは
→馬の生体サイクルが8年ごとにMAXになるから
とだけ申し上げておく。
この種牡馬の最大活性期をどう扱うかで、ホントに走る馬が入手できるかに大きく関わってくる。
最大活性期の産駒たちはどうなるの?
最大活性期を迎えた種牡馬たちが種付けをすると、ほとんどの産駒は「父そのものが優先祖先」の馬となる。
またそうでなければ、野生動物が命がけでハーレムの長を目指す理由はなくなってしまう。
この時期の産駒は
▼姿形が父方の祖先いずれかにそっくり
▼父の得意科目がそのまま仔の得意科目に
▼血統表はあまり深く見なくてよい
という特徴がある。
つまり、血統を知らなくても気どらずに「この仔は父のヴィクトワールピサで間違いない!」などと声高に叫んでいいわけだ。
だが困ったことに何でも例外はある
仕方がないので、例外についてもお話ししよう。
例外はおそらく世代全体数の1割にも満たない馬だと思われるが、実はこの「例外」こそ、血統の奥深さを演出している「真理」でもある。
この最大活性期産駒を指名する上で最も注意すべきは「いつ種付けをしたか」というその1点である。
誕生日ではない。種付けをした日だ。
馬の妊娠期間は約11か月なので多少のズレはあろうが、種付け日は誕生日の11か月前と見てよい。もちろん、早産や遅生まれを考慮していないので、正確ではない。
またもし牧場見学等で、お目当ての馬(の母)を誕生前から見ていて、出産予定日も知っているという人は、後々までちゃんと覚えていた方がよい。
最大活性期の種牡馬については
▼その(予想)種付け日が、種牡馬の誕生日の2か月後を過ぎると、種牡馬の活性は0になる
ゼロ、つまり遺伝的要素が何もないことになるのだ。
もちろん父系のインブリードも無効だし、それ以前の祖先の存在そのものが消えるといってよい。
たとえばシンボリクリスエスは1月21日生まれなので、2か月後の3月21日頃までに種付けされた産駒は「最大活性」を受け継ぐが、それ以後に種付けされた産駒は「0の活性」でしかない。
ゼロとMAXが紙一重で決められる歳なのだ。
ゼロとは種付けをしながら、父の種が付いていないも同様ということ。
何とも不思議な自然の摂理であり、人間が立ち入ることのできない領域の話である。
いまはPOGが一番楽しい時期
POG指名馬の常連である種牡馬たちといえば、キンカメ、ハーツ、そしてディープらだろうが、実は彼らもこれから第2の種牡馬最大活性期を迎える(もちろん1回目は9歳時に済ませている)。
ということは簡単に言うと、POGで「父のような活躍をして欲しいな」と思って指名するとその通りに走ったり、父によく似た姿の馬を選ぶことがたやすくなるということ。
ファンなら選ぶ馬が多くて迷い、この上なく楽しいひとときだろう。
ただ1点だけご忠告しておくと、
▼種付け頭数が720頭を超えた種牡馬の産駒(とくに牡)は、極端にボス性が失われる
といわれている。
第1の優性期にバンバン種付け済みの人気種牡馬が、第2期を迎えてなおバンバン勝つ馬を輩出できるか、といえばそれは別問題。
父にはよく似ているけど競走にいくとなぜか最後甘くなる、そんな馬が増えてもおかしくない。
今年盛りの種牡馬に見る「旬」と「没落」
ハービンジャー(2006)という種牡馬がいる。
鳴り物入りで欧州からスタッドインした彼も、当初はスピード不足がささやかれ、種付け頭数も年々減少気味だった。
しかし自身の活性が上がってきたここ1、2年は、ディアドラ(秋華賞)、ペルシアンナイト(マイルCS)、モズカッチャン(エリザベス女王杯)ら次々とG1馬を輩出。
彼ら2013年種付け組は全118頭で、アーニングインデックスが一気に2.09にジャンプアップ!
そして今年、大物3歳・ブラストワンピース(2014年組)が日本ダービー出走を控えている。
数字を見ておわかりかと思うが、実はこのブラストワンピース、8年サイクルの頂点で種付けされた、まさに代表産駒になってしかるべき馬なのだ。
しかし今、我が世の春を謳歌するハービンジャーも、残念ながら活性期は終了。
ここから先数年は「自分にまったく縁もゆかりもない特徴を持った」産駒が増えてくるだろう。
加えてハービンジャーは、ブラスト世代の2014年までに706頭に種付けを済ませ、次の2015年分を足すと一気に約900頭にまで増えるので、野生でいうところの「限界値720頭」を超えている。
今年ブラストが勝てなければ、ハービンジャー産駒の日本ダービー制覇は金輪際ないだろう。
ボス性がないとは、哀しいまでに先頭に立てない馬たちの、目に見えない血の呪縛なのである。