ここの理論は計算に次ぐ計算かと思いきや
この頃多くの方に本ブログをご覧頂いているようなので、今回は少し基本的な血統のお話をしておきたいと思います。
たとえば私が今日は2歳馬の血統リストを20頭見ようと思ったら、時間にしてどうしても2時間はかかります。
いい馬が多いともう少しかかることもあります。
それはひとえに自分の用いる理論が「計算ずく」で成り立つ理論だから。
まず競走馬の根本である「スピードがあるのかないのか」を見て、そこから走る馬だけ深入りするスタイルなので、他に回り道がありません。
自分は好きでやっていることなのでいいんですけど、これを人に語るのは至難の業です。
理論が埋もれないようにゆくゆくは動画も作りたいですが、果たしてうまく説明できるかどうか…。
こう書くと「血統ってそんなに難しいの?」と思われるでしょうが、そんなことはありません。
実際、計算自体は暗算ですし、またいつもいうように私の結論は詰まるところ「表か裏か」に凝縮されますので、小数点第何位までも数字を追うようなことはありません(あ、ちょっとはあるか…)。
とはいえ、最近は私も「楽できるところは楽したい」と思うようになりまして、今は血統表を見た瞬間「不合格」にするケースもあります。
今日はそんな気持ちから生まれた、実践的超簡単な「チラ見血統判断法」をお話しします。
一部いつもの説明と重複するかもしれませんが、どうぞお付き合いください。
一目見て敬遠する 実母が活性ミニマム期の産駒
馬の活性値は8年のサイクルで1周しています。
よって実母が活性ミニマム期かどうかは、産駒と母の生まれ年を計算するだけでわかります。
今年の2歳ならすべて2016年生まれですから、2007年が標準のMAX期(9歳=種付け時8歳)、2006年が標準のミニマム期(10歳=種付け時9歳)です。
つまり母が10歳の時の産駒(場合によっては11歳も)は、よっぽどすごい他のファクターでもないかぎり、書類選考で落選です。
多くの馬の血統表を見てきた印象では、やはり母MAX期の恩恵はすごいなと感じます。
たとえば今年のダービー馬ワグネリアンを語る上で、絶対に逃してはならないファクターこそが、彼が母ミスアンコールのMAX活性期産駒であったことです。
実はこの理論を学び始めた頃、ワグネリアンの体力は47〜と表記していました。
それは当時まだ2代母ブロードアピールの体力値がゼロかMAXかが判断できなかったからです。
G1馬としては47という体力値は平均以下で、今後複数のG1を勝つには上積みがほしかったのですが、その後2代母ブロードアピールもMAX期産駒だったことがわかり、基礎体力は一気に72へと上昇。
体格は小さな馬ですが、ワグネリアンの体力面の優秀さが改めてクローズアップされたのです。
今年の3歳では、血統表に2回のMAX活性有りという、これほどのインパクトがある馬は他におらず、あの春1冠間違いなしといわれたダノンプレミアムさえ、血統上で見るとワグネリアンには及びもつかない存在でした。
一目見て敬遠する 父がミニマム期の産駒
種牡馬の劣性期は4年にわたって続きますが、中でもミニマム期の1年に種付けされた産駒は、好き好んで推奨しないことにしています。
今年の2歳なら、母馬同様2006年生まれの種牡馬、ということになります。
これまでにもお話ししたとおり、劣性期の種牡馬を種付けすると、母馬の先祖をたどって優先祖先が決まります。
つまりどんなに短距離馬の父からでも天皇賞春を走る馬が出て、どんなに重厚なステイヤー血統からもスプリンターが出ることがあります。
ご存じキタサンブラックの母父がサクラバクシンオーであることも、これに少し関係があります。
POGでも、共同クラブでも、血統で種牡馬を見る人は「父のような産駒を応援したい」と思って1票?を投じるわけですから、これだとなにか裏切られた気がしませんか。
私も劣性期産駒はより中性に近い2年間だけを検討対象にし、父ミニマム期とゼロ活性産駒は書類審査落ち、にしています。
一目見て敬遠する 活躍馬の翌年の高馬(いわゆる歳仔)
私は詳細に競走馬の裏表を判断できる術を持ちますので、きわどい時期に生まれた産駒も指名できますが、血統をサラッと見る人がまず避けるべき地雷物件がこれです。
私の血統理論の根本はサイクル説であり、良いサイクルで受胎した翌年の同サイクルは悪いサイクルに反転するとわかっているので、歳仔には細心の注意を払います。
基本、成功する歳仔の誕生日は、互いに遠く離れているものです。
もちろん牧場では早生まれや遅生まれのアクシデントはつきものですので、誕生日だけでは即断できませんが、活躍馬の歳仔にあたる弟や妹の指名には、それ相応の(コストと)リスクがあることを覚えておきましょう。
逆にこのリズムさえ合えば、どんな没落牝系からもある日名馬がポッと出てきます。
一目見て敬遠する 競走でよく走った牝馬の初仔
どんなに円満寿引退した牝馬でも、競走で力の限り走りを重ねた実力馬の初仔は手出し無用です。
種牡馬もそうですが、牝は牡以上に「繁殖としての準備段階」が必要とされる種です。
これが競走馬時代に始まってしまうと「体が絞れない」とか「走る気が起きない」などの症状でわかるのですが、現役を走りきって牧場に帰った牝馬は、とうてい母馬としての準備段階が十分ではありません。
海外でもG1をいくつも勝ったような牝馬から数年は走る馬が出ず、歳をとってあきらめていたら、15歳の時に名馬を出したなど、その手の話はいくらでも尽きません。
今は能力の限界まで現役を務める牝馬が少なくなりましたので、昔のようにひどくはないと思いますが、輸入海外G1牝馬の中にはこのような「埋もれた名牝系」がたくさんいます。
みんなが忘れるくらい歳をとったら一発狙う、がセオリーですね。