G1サラブレッドCさんの2018年度募集馬は、ディープインパクトが関西優勢で、ルーラーシップが関東優勢なんですよね。
のちほどすべてわかるのですが、ディープインパクトのいい仔が関西に行ってしまった代わりに、ルーラーシップのいい仔がすべて関東に残った形になります。
でもルーラーシップはこの17年から劣性期入り。
全馬、父似の仔でないことに注意が必要です。
リストの見方
まだこれから鍛練を積む1歳馬なので、1頭1頭詳細な血統背景ではなく、最初に全馬スピードサイクル判定による分類を行います。
・スピードサイクルOK →馬体も良ければ推奨
・スピードサイクルぎりOK
・スピードサイクルぎりBAD
・スピードサイクルBAD
・判定不能
の5つに分けます。
OKとBADはそのまま(走る走らない)の意味ですが、ぎりOKとぎりBADは
→その馬の誕生日が母のスピードサイクル境界日ギリギリに位置するので、OKがBADだった、あるいはBADがOKだったという可能性あり
の意味です。
よってどちらかといえば「ぎりOK」の方がコケて失敗する(ショックでかい)可能性が高く、逆に「ぎりBAD」が実はOKで思わぬ幸運をつかめることもあるでしょう。
馬体が良い、牧場評価高いなどの推し材料があれば、積極的に「ぎりBAD」までは狙っていけるかもしれません。
ぎりBADについては、こちらでも「狙えるぎりBADかそうでないか」を積極的にコメントしていきます。
またスピードサイクルOK判定の馬に限って、その馬の適性がわかる優先祖先と基礎体力値をご紹介します。
▼G1サラブレッドC2018 1歳馬診断結果 関東ルーラーシップ編
【OK判定の馬】
4 アンチュラスの17(牡・鹿毛)
【優先祖先】 Round Table(1954)
【基礎体力】 53(平均は50)
【適 性】 芝orダートのマイル〜
美浦・国枝栄厩舎 予定
実馬の写真はスラッとした体型で、母よりは距離の融通も利きそうな気配ですね。
この年からルーラーシップは劣性期に入り、父系の考慮が全く必要ない種牡馬になります。
となるとここまでルーラーシップ自身やその父キンカメの適性で距離延びてこそ、という産駒が多かったのに対して、今度は母馬の距離適性(正確には母系の優先祖先)が産駒の距離適性を決めることになるのです。
母アンチュラスもG1レーシングさんの出身で、マイル前後を中心に活躍した馬でしたが、これは母父のWild Zone(1990)の活性が高かったため。
幸いディープとの活性差が1世代分しかなかったので、母の優先はサンデーにとどまりマイラー適性が高まりましたが、本馬のように劣性期の父を迎えて最大活性のWild Zoneをどんどん遡れという指令が出ると、事態は大きく変わります。
母父Wild Zoneはダートのスプリンターで、この距離適性は父のWild Again(1980)ミニマム期→5代母Gambettaの父My Babu(1945)最大活性、という関係から生じています。
よってアンチュラスの産駒もその遡る世代数によっては母以上のスプリンターになる可能性がありますが、幸い途中のRound Tableがぎり中性期で拾えるため、それ以上は遺伝の範囲が及びませんので、本馬はマイル〜という判断にしました。(千八がピッタリの感じ)
しかしもし本馬に気性の問題などがあれば、適性を千二あたりに短縮できる素地も残っているでしょう。
Round Tableは芝ダート兼用の名馬であり、本馬は形こそ芝馬っぽく見えますが、パワーの必要な馬場もこなせるオールラウンダーの予感がしています。
5 トップセラーの17(牝・鹿毛)
【優先祖先】 Irish Lass(牝・1962)
【基礎体力】 66(平均は50)
【適 性】 芝のクラシック
美浦・和田正一郎厩舎 予定
本馬の距離適性も父ではなく、あの日本の名馬の優先祖先に源を発しています。
この母系がいずれも距離を難なくこなせるのは、世代によって理由は少しずつ違えど、その根底には4代父Assert(1979)の活性の高さがあります。
母トップセラーこそ母父のスペシャルウィークが優先でしたが、2代母プロモーション以降は4代父Assertの先祖を探る作業が必要です。
本馬はルーラーシップのミニマム期種付けによりAssertとの活性差が広がり、Assertよりさらに母系2世代上のIrish Lassという馬にたどり着きます。
Irish Lassは仏のミネルヴ賞を制した牝馬。
当時の詳細は不明ですが、現在のミネルヴ賞は3歳牝馬限定の芝2500Mで行われるG3重賞ですので、似たようなステイヤー領域の競走であったろうと推察できます。
そしてこのIrish Lassの優先祖先こそがあの名ステイヤー・ライスシャワーの優先祖先でもあるイタリアの名馬Niccolo Dell’Arca(1938)なのです。
物の本によると、Niccolo Dell’Arca(日本読みではニッコロデラルカ)は通算成績15戦14勝のイタリアダービー馬で、右回り得意なイタリアンステイヤーというのが特徴のようです。(米国系だと基本左回りが得意)
さすがに本馬自体が8代も前のNiccolo Dell’Arcaが優先だとは言えないのですが、少なくとも6代前Irish Lassには茫々とNiccolo Dell’Arcaの(優性期の)血が流れていることになります。
本馬は顔の大流星に両前肢のソックスがなんともチャーミングな牝馬ですが、きっと母系のどこかに本馬とよく似た祖先がいるのではないか、そんな気がしています。(父似じゃあないよね)
【ぎりOK判定の馬】
6 オリエントチャームの17 ぎりOK8日
母オリエントチャームは兄ゴールドアリュールと3つ違いの全妹ですが、その間に父サンデーが優性期に入りましたので、母は偉大な兄よりサンデーの影響が無視できない馬に変化しました。
今回ミニマム期のルーラーシップが父に来たことで、再び母系のどこかに優先を求めることになりますが、間に母を加えてGアリュールより1世代多く経過したため、Vaguely Noble(1965・MAX活性)〜ヴイエナ(1957)という栗毛路線は消滅しています。
本馬はおそらく2代母ニキーヤの父ヌレイエフが優先になるのではないかと思われます。
【ぎりBAD判定の馬】
7 クリスティロマンスの17 母ぎりBAD9日
2代母スターリーロマンスはフジキセキの全妹で、母クリスティロマンスはそのMAX活性産駒です。
本馬は残念ながら父母ともにミニマム期の産駒。
普通ならここで馬の良さは半減しますが、もともと基礎体力が鬼のように高い母系なので、ある程度まではカバーできています。
優先はシアトルスルーの父Bold Reasoningあたりでしょう。
他のルーラー産駒より部分部分で筋肉の発達が目につき、パワー型なのは間違いありません。
母は3勝馬で一概にBADとも言えず、取捨が悩ましい1頭です。
次回はG1サラブレッドC関東エピファネイアやディープブリランテの産駒たちをご紹介します。
お楽しみに。