▼高松宮記念2019 モズスーパーフレアの優位が動かないこれだけの血統背景

この時期なぜか毎年モズ推しになる奇妙なご縁

今年の高松宮記念における出走馬の配合レベル比較はこのモズスーパーフレア(牝4・父Speightstown・音無厩舎)1強なのだが、実は昨年も冠号モズの馬モズアスコットを2月の阪急杯からイチオシしてG1安田記念で美酒を味わった経緯がある。

モズつまり株式会社キャピタル・システムさんの馬には、ときにビックリするほど高レベルの配合馬がおり、しかもそのほとんどが外国産馬

きっと米国を中心に各地のブローカーとも繋がりが密に保たれていい情報が集まるか、あるいはセリですぐにピンとくるほどの目利きがいらっしゃるかのどちらかだと思うが…。

ただこのモズスーパーフレアだけはたとえ自分のような素人がセリや牧場で出会ったとしても、買い忘れることのない血統馬であると断言できる。

そのくらい現時点では配合レベルが1枚も2枚も抜けている。(穴党もシュンとなるくらいのデキの良さ!)

OK判定の方法をちょっとだけ解説

▼モズスーパーフレア 母系繁殖サイクル一覧

Nowmepache 1964
 Bid Gal 79.5.3 4.17〜6.17
  Miss Bold Appeal 90.5.1 き○ 4.15〜6.15
   Jersey Girl 95.3.16 き○ 3.2〜5.2
    Jersey Town 06.3.2 き○(シガーマイル勝ち)
  Roses At Sunset 96.3.26 き○ 3.9〜5.9
   Christies Treasure 04.1.14 ぐ× 12.28〜2.28
    Sacristy 09.2.18 き(○)
    モズスーパーフレア 15.4.1 き○

最近コメントに「OK判定のしくみがよくわからない」と寄せられたので、今回のモズスーパーフレアで基礎を少しだけ解説してみる。(ちょっと長くなるので注意!)

そもそも走る馬は

▼母の「最良の繁殖期」に種付けされなくてはならない

という絶対条件がある。

これが何も言わなくても行われているのが自然界であり、サラブレッドの生産はこれを理解しながら人間が最良の時期を見計らって種付けしてあげる必要がある。

牝馬は生まれるとすぐに繁殖サイクルが発動するわけではなく、そこに2週間のタイムラグが発生する。

たとえばモズスーパーフレアの母・Christies Treasureなら1月14日生まれなので、サイクルは14日後の1月28日からスタートするのだが、期間はこの日を中間日とした2か月間になる(ややこしい)。

牝馬の繁殖期間は約2か月(生まれた直後は1か月)。よってChristies Treasureなら1月28日から2月28日までが最初の「良い繁殖期」となり、次の2か月間は「悪い繁殖期」に移る。


それを繰り返しながら

母1月14日生まれ 14日のタイムラグ
1月28日〜2月28日 ○
2月28日〜4月28日 ×
4月28日〜6月28日 ○ →何年か後にモズの種付けされた時期
6月28日〜8月28日 ×
※8月28日〜12月28日 ○
12月28日〜翌2月28日 ×
2月28日〜4月28日 ○
4月28日〜6月28日 × →誕生日の同じ全兄弟が走らない理由
……

※注:最後の4か月間は「反転」時期になり、昨年の良いサイクル時期が悪い時期に逆転する。

母Christies Treasureは最初の年(当歳)をこのようなサイクルで過ごし、1歳時は全く逆のサイクルで過ごす。

モズスーパーフレアの誕生日は4月1日だから、前年の種付けは5月1日あたり(サラブレッドの妊娠期間は11か月)。

もし5月1日が母の繁殖サイクルの○に属していれば「OK」といえるし、ギリギリ間際なら「ぎりOK」とか「ぎりBAD」とかしか言えないというわけだ。

さらにモズスーパーフレアのように、この2か月サイクルの前半で受胎したと思われる馬は、特に評価が上がる(ここが本当の最良期)。


詳細は省くが、今は自然界で草食動物が肉食動物の追撃から逃れる術のひとつ、とだけ書いておく。

さて今一度モズスーパーフレアのファミリー表を見てほしいのだが、誕生日の後ろに「き○」とか「ぐ×」とかメモしてある。

これは母と仔の年齢差が「奇数間隔の年に良い繁殖期に入った」「偶数間隔の年には避けられた」という意味で、何代にもわたって走る馬を輩出するファミリーは、絶対にこのサイクルが途切れることがない

モズの2代母・Roses At Sunsetは3月26日生まれ。
良い繁殖期は3月26日+14日=4月9日を中心日とした2か月間だから、3月9日から5月9日。

母・Christies Treasureは1月14日生まれなので、前年の2月14日頃に種付けされたとすれば、このサイクルから外れている。


しかしこのファミリーは親子年齢差が奇数間隔の年にこのサイクルに入ればいいので、偶数間隔の年には外れていた方がよい

よって母も「ぐ×」で合格というわけだ。

モズスーパーフレアのファミリーはとくにきれいなサイクルを描いており(ぎり判定がほとんどないき○ぐ×)、これなら私でも血統表を解析するだけで現地で「ズバリ買いましょう」と言える(古いな)。

ダメ押しで基礎体力も調べてみた

Nowmepache 1964生
Bid Gal 79.5.3生
Roses At Sunset 96.3.26生
Christies Treasure 04.1.14生
モズスーパーフレア 15.4.1生

1.5+★2.0+1.75+0.5=5.75 →★72

母から直接受け継いだ体力こそ物足りないものの、3代母Bid Galから2代母Roses At SunsetにしっかりMAX活性が受け継がれ、体質は強靱の部類に入るといってよい。

そして遅ればせながら優先祖先とクロスのお話

これまで語ってきたとおり、モズの配合の素晴らしさは繁殖サイクルの美しさが一番なのだが、実は

▼モズスーパーフレアは父Speightstownのゼロ活性産駒

であることも覚えておかれるとよい。

これによって、モズに発生しているおびただしいクロスの全てが一瞬で無効扱いとなる。(Speightstownは2月1日生、モズの種付け日は父16歳時の5月1日あたりなので)

そのため繁殖入り後モズのこどもたちはBold RulerRaise a Nativeといったクロスも6代目に下がるので、影響がより小さくなる。

相変わらずNorthern Dancerだけは高活性のまま残り、注意が必要だが、それは血統表を見ればだれもが気づくことなので心配はいらないし、モズはいい母馬になる素質がある。

最後に優先祖先をたどると、4代父Bold Bidderにゼロ活性&MAX活性どちらの可能性も残されているので確定はできないが、モズの栗毛が自然と出る経路は3代父Valid Appeal(1972)の母系と見られるので、5代前のScotch Verdict(1960)やその母Glen Arvis(1947・いずれも栗毛の牝馬)が優先候補に挙がる。

いずれにしろ、父Speightstownの形を継いだ娘ではなく、距離適性もValid Appeal同様、スプリントに近いマイラーのようだ。

【 結論 】モズスーパーフレアは、競走馬としても、繁殖としても一流の資質あり

大事に使われてきたのでまだ伸びしろもあるだろうし、今なら距離も7ハロンくらいまでならこなして不思議ない感じがする。
それより馬場の好き嫌いがありそうで、今後はその方が気になる。

昨年のファルコンS前に「大穴」として推した頃には、こんなすごい馬に出世するとは夢にも思わなかったが…。

※今回からWPのバージョンが上がって編集のインターフェイスが変わり、うまく段落と段落の間に大きな間隔を取ることができないので、ちょっと記事が込み入って読みにくいかもしれません(とくにスマホ等で)。また練習しておきますね。前の方がよかったな…。

▼高松宮記念2019 モズスーパーフレアの優位が動かないこれだけの血統背景」への2件のフィードバック

  1. 判定についてのご丁寧な解説ありがとうございました。奇数偶然のところがよく理解できていなかったのですが、最後の4カ月間は反転時期になるというカラクリがあったんですね。納得しました。

    すみません。1つ質問させて下さい。

    「しかしこのファミリーは親子年齢差が奇数間隔の年にこのサイクルに入ればいいので、偶数間隔の年には外れていた方がよい。」

    これはそもそもどうやって決定してるのですか?逆(偶然○奇数×)の場合もあるわけでして…それを知る為には何代も遡って調べる必要があるということでしょうか?遡っても綺麗なサイクルじゃない場合はどうするのでしょうか?

    理解力がなくて申し訳ありません。
    ご教示くださいますようお願いいたします。

    1. わにさん、こんにちは。
      いつもコメントありがとうございます。

      あれだけの記事で、ここまでたどりつくのはすばらしい理解力だと思います。

      とてもいいところを付いていますので、お返事は次回のブログ上でお答えしたいと思います。

      今後ともどうぞよろしく。

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