▼POG赤本2019はこう読め!(8) 注目マル外馬126頭をテシオ理論で徹底解説 〜マル外編と赤本特集のまとめ〜

最終回 グラスワンダーやエルコンドルパサーの再来はあるのか

内国産全盛の時代にあって、スケールのデカいマル外馬がクラシック戦線に名乗りを挙げるケースは本当に少なくなった。

あの時代と違って、今では日本ダービーにもマル外が出られる枠があるというのに…これも日本の種牡馬の優秀さからくる現象なのか。(それとも単に英国ダービーの方が格式が高いというのか)

だからPOGでマル外を指名することにどれほどのアドバンテージがあるのかは不明だが、サンデー系種牡馬産駒のレッドオーシャンに飛び込むよりは、不毛地帯かもしれぬマル外ブルーオーシャンにいちるの望みを託すというのも、ギャンブル、ゲームとしては十分に成立していると思う。

▼個人所有馬系で基礎体力抜群のマル外馬リスト

ゴールデングローブの17 →ぎりOK10日 ★78 1か月半
Wellの17 →ぎりBAD1日 69 3週間
R Heat Lightningの17 →ぎりBAD0日 81 9日
Surround Soundの17 →OK ★66
Togetherの17 →OK ★63

これらはすべて母がMAX活性期を迎えた丈夫な産駒であり、とくにゴールデングローブの17はクラシックディスタンス適性という観点から見ておもしろい1頭である。

【 繁殖サイクル 】

Tulle 1950
 Courtly Dee 68.3.8 2.22〜4.22
  Embellished 80.5.25 ぐ(×) 5.8〜7.8
   Seattle Dawn 86.3.12 ぐ× 2.26〜4.26
    ゴールドサンライズ 93.2.22 き○ 2.8〜4.8
     ゴールデングローブ 08.4.29 き(○) 4.13〜6.13
      ベストピクチャー 16.3.17 ぐ○
      ★ゴールデングローブの17 17.5.3 き○
 

遠くにワンアンドオンリー(日本ダービー勝ち)やダークシャドウ(大阪杯勝ち)の名が見えるCourtly Dee(1968)系のファミリーだが、平均して走るというよりはどこかでポンと大物を出す傾向にある。

ゴールデングローブShamardal(仏ダービー、2000ギニー勝ち)産駒ながら日本の馬場によくフィットした馬で、欧州系特有の広いコースでの瞬発力勝負を好み、重賞でも入着を果たした。

本馬は母の2番仔で、全姉ベストピクチャーはまだ未勝利、姉との誕生日の差が約1か月半あることから、少なくとも本馬は姉が生まれた後最初の発情をパスした産駒になる(詳しくは後ほど)。

【 優先祖先 】

ゴールデングローブ(芝中距離 → Grey Dawnが最も強い活性)

【 残存クロス 】

▼ミスプロ
父系 1.5×0.5×1.25×1.5=1.406…

母系 1.25×2=2.5
   1.5×1.75=2.625

母にも増してミスプロが強まり、ちょっと弊害が心配。

【 結論 】クラシック戴冠には厳しいかもしれないが、気分を害さずに成長すればどこかで重賞のひとつくらいは

ここからは今回の赤本特集の総決算だ。

赤本まとめ その1 新たな繁殖リズムファクターの話

赤本特集から採用した「ひとつ前の産駒との誕生日の日にち差」というファクターは、赤本146Pにある「繁殖の基礎知識から深イイ話まで」というちょっと専門的な記事に由来するものだ。

獣医等の専門家の間では

▼産駒誕生後、最初の発情(10日前後でやってくる)での交配とそれをスキップした後での交配では受胎率に大きな差が見られる

というのが一致した見識になっている(JRAでも)。

これは私も(そして物の本でも)知るところであったが、現在ではさらに一歩踏み込んで

▼受胎率だけではなく、産駒の成績そのものにも大きな影響を及ぼす

といわれている。

つまり産後間もない母馬の胎内ダメージが修復完了しないままだと、種付けをしても受胎率が悪いし、生まれてきた仔の能力にも影響があるよ、ということだ。

牝馬が仔を産む機械でない以上、これはごく当たり前のことであり、にもかかわらずこのような視点を持つ生産者は小数なのが現状のようだ。

そしてこれは私たち素人にも、馬の誕生日からある程度判断できる。

たとえば…
アーモンドアイは直近の姉パンデリング(1月26日)よりもひと月半ほど遅い3月10日の生まれ。

ということは姉が生まれてゆうに2か月は母の胎内が空いていたことになり、フサイチパンドラ級の繁殖にしてはまれなケースに感じる。

またオルフェーヴルは直近の兄ジャポニズム(1月21日)よりも約4か月遅い5月14日の生まれ。

近年の日本ダービー馬ではオルフェの空胎期間が最長だが、実は過去10年のダービー馬を見ても前年の兄や姉より誕生日が早まった馬はマカヒキ1頭しかおらず、あとはすべて誕生日が遅い(うち3頭は1か月以上も後)。

ということは、

▼兄姉誕生後の初回発情をパスして種付けされて生まれる(初仔、空胎除く)のが最近の日本ダービー馬

なのだ。

でも今の現場はみんなそうなんでしょ?と思い、今回の検証で調べていくと、驚いたことにアーモンドアイやオルフェーヴルのような長期空胎を経て生まれた馬自体があまり見つからないことがわかった。

さらにこれとOK判定が重なる馬といったらもう…求めるスーパーホースに出会える確率は現在の何分の一にまで落ち込むのが目に見えている。

サラブレッドは確かに経済動物ではあるが、自然のサイクルに逆らってまで良い仔を産むはずはない。

だからこれから始まるクラブ馬判定でも、ご紹介する馬数は少なくなるだろうが、これら厳しい条件に当てはまる厳選馬だけをお届けしたいと思っている。

赤本まとめ その2 ★に新評価基準を導入

厳しい条件といえば、今回から★の基準も変更した。

La Bambuca 1976
 La Baraca 90.8.24 8.7〜10.7
  ★La Balada 99.7.8 き× 6.22〜8.22
   Liriope 05.7.2 ぐ○
   バラダセール 08.9.18 き× 9.2〜11.2 1.2〜3.2
    ★サトノフラッグ 17.2.26 き×

契機となったのはバラダセールの17(サトノフラッグ)に関して。

今までは★★という計算で一律に表記していたが、実はよく見ると母バラダセールは南半球産のため、誕生月の9月から種付け時の翌年3月までわずか半年しか経過していないことになる。

活性値が1年をかけて連続的に上昇するという説を採るのであれば、種付け時の母の活性値は★8ではなく、ちょうど7.5程度という計算が正しい。

もちろん今までも同じ北半球なら2か月程度のズレは容認してきたが、ここで南半球産馬との整合性を取るために、あえて北半球でも

▼母の誕生日を越えて種付けされたMAX活性でなければあえて★はつけない

という条件を加えることにした。

だから新基準でいくとバラダセールの17は★64が正しいし、今後北半球でも★に該当する馬は相当減るのではないかと思う。

そこで昨年のダービー馬ワグネリアンのサイクルをもう一度見ると

Alluring Girl 80.5.20 ぐ× 5.3〜7.3
 Valid Allure 85.4.13 き○ 3.27〜5.27
  ★ブロードアピール 94.4.13 き○ 3.27〜5.27
   ミスアンコール 06.3.29 ぐ(×) 3.12〜5.12
    ★ワグネリアン 15.2.10 き(○)

祖母ブロードアピールこそ真の★に該当するが、ワグネリアン自身の種付けは母の誕生日よりも先に行われた(ように見える)。

しかしワグネリアンの判定はぎりBAD2日なので、もし彼が本当にG1を勝つような馬であれば、真の種付け日は3月10日よりもっと後、3月20日でも、3月30日つまり母の誕生日後でもつじつまが合う計算になる。

これらを総合すれば、ワグネリアンは従来通りの★★でもよいし、また厳密に★ひとつでもよい、といえるだろう。

そこは柔軟に対応していこうと思う。
もちろん、基礎体力は従来通りMAX値でいいことにする。

以上、赤本特集から変更された2点についての解説を終え、まとめとする。
いよいよ春競馬も佳境に入りますね。(おわり)

▼POG赤本2019はこう読め!(8) 注目マル外馬126頭をテシオ理論で徹底解説 〜マル外編と赤本特集のまとめ〜」への2件のフィードバック

  1. 大変おもしろかったです。
    リクエストに、答えていただきありがとうございました。

    引き続き後日のクラブ馬編も楽しみにしています。

    1. ガロマルさん、いつもありがとうございます。

      王道を読みながら、ディープインパクト産駒などの王道解説ができず、心苦しく思っています。

      そこは昨年よりさらに精度を増した?クラブ馬解説にて埋め合わせできれば幸いです。

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