▼朝日杯FS2020出走馬の半数が自然サイクル日周辺による受胎の可能性がある

いよいよ種付けイベントの本丸に迫っていこう

先日読者さんからいただいた母の良い繁殖サイクル境界周辺についてのコメントを元に、また少し「種付けイベント」について調べてみたくなった。

これまでテシオ理論を分析していく中で、現代では繁殖技術の向上とともに「薬剤」を用いて安定的に、確実性の高い発情を起こし、種付けをすることを知った。

ただこのままでは「自然サイクル」による発情のタイミングを読むことを旨とするテシオ流が使えないどころか、月のサイクルを読むこと自体意味のないことにならないか、という危惧がいつもあった。

私も解説編動画で月のサイクルについて詳しく触れてこなかったのは、その辺がクリアになってからあらためてお話ししたいと思ったからで、視聴者さんのご要望が高いにもかかわらず、テシオの本質を語れないまま今日まで来たことを心苦しく思っている。

ところが先日、母の良い繁殖サイクル境界に関して何気ないコメントをいただいたのを機に、再び種付けイベント、中でも「種付け日そのもの」の検証を始め、前々回のブログ『▼繁殖サイクルの「初期がいい」についてもう少し深く考えてみた』から少し新たな知見を語り出した。今回はさらにその検証編となる。

なお今回は月のサイクルの裏表の検証ではないので、例示する馬たちのサイクルはすべて「表」と仮定する。でないとやっぱり話が進まないのでw

そのかわり、テシオの本質に関わる重要事項を一から語ることになるので、ぜひ何度も熟読いただけたら幸いだ。

前段階として一口メモ

私は獣医師ではないがかつて「獣医師の卵たちと共に学んでいた」学生時代を過ごし、生物学そのものには今でもけっこう興味がある。しかし牛の乳は搾っても、サラブレッドについては何も知らない素人だし、また馬産の現場も知らない。その辺を重々承知された上でお付き合いいただきたい。

まず現代のサラブレッド生産に薬剤がどのように使われているか、私は詳細を知らない。いろいろ教えてくださる方はいたが、専門家からのアドバイスは一度も伺ったことはない。

ところがそんな素人でもJBISのサイトで、種付け日と仔馬が生まれた日を調べ、さらにサラブレッドの発情の基本サイクルを知っておけば、かなり興味深い知見が得られる。これは動物の発情がやっぱりサイクルであること、このうち人間の手でどうにかなる時間はほんの一時期でしかないことの証でもある。

私が今回よりどころとするデータは

①前年のきょうだい誕生日
②1回目の自然サイクル発情日
③実際の種付け日(受胎or不受胎)
④2回目の自然サイクル発情日
⑤実際の種付け日(受胎or不受胎)
……以下繰り返し

これだけだ。そして前回ブログでも話したが、一昨年のPOG赤本に掲載されていた「馬の自然な発情が来る日」は、1回目が兄姉が産まれた日から30日後で、そのあとは3週間間隔で訪れる(これは血とコンプレックスにも記述がある)。この自然サイクル発情と現代の種付け日がどのくらい「ズレているか、ズレていないのか」を見ることで、名馬生産における「狙うべき種付け日」を予測しようというのだ。

そしてこの日にちのズレこそが、薬剤による発情期間の短縮(7〜10日ほど)と日付確定作業であり、一般には受胎確率を高める役割も果たすといわれる。

朝日杯FS2020出走の早熟2歳マイラーたちで勝負だ!

今回種付け日の検討対象となるのは、スピードという点で間違いのない「朝日杯FS2020出走馬16頭」の面々。ただ勝ち馬グレナディアガーズ等、外国種付けの馬までは網羅できていないからご了承を。でもクラブ所属馬はたくさんいますよ。

朝日杯FS2020出走馬 種付け予測表(入着順)

グレナディアガーズ 外国
ステラヴェローチェ 
 17.2.10 ビットクラッシャー生
 17.3.4 バゴ種付け(薬剤?)
 17.3.12 1回目チャンス(↑=早めたの意)
※これが最も現代風王道の種付けプラン。
1回目チャンスを薬剤で早めて1回で仕留める。
ノースヒルズなどの主流。
レッドベルオーブ
 17.4.6 レッドベルジュール生
 17.5.1 ディープ種付け(薬剤?自然?)
 17.5.6 1回目チャンス
※こういう間隔が一番判断難しいが、これはサイクルの揺れ具合から見ても薬剤、自然両方の可能性がある。
バスラットレオン 初仔
ブルースピリット 外国
ロードマックス
 17.4.7 メリディアン生
 17.4.18 初回発情 ディープ種付け
ドゥラモンド
 17.1.25 オーサムゲイル生
 17.2.25 ドゥラメンテ種付け(=1回目自然チャンス2.24)
カイザーノヴァ
母ステラリード 07.3.3生 2.17〜4.17
 17.1.18 パラスアテナ生
 17.2.17 1回目チャンス
 17.3.10 2回目チャンス
 17.3.29 モーリス種付け(=3回目自然チャンス 3.31)
※本馬は1回目の自然チャンスだと、母の良いサイクルに入らなかった可能性がある。
ホウオウアマゾン
 17.2.19 フレジエ生
 17.3.12 キンカメ種付け(薬剤?)
 17.3.21 1回目チャンス(↑)
モントライゼ
母ムーングロウ 09.4.4生 3.18〜5.18
 17.2.17 ハルプモント生
 17.3.10 キズナ種付け(薬剤?)→不受胎
 17.3.19 1回目チャンス(↑)
 17.4.9 2回目チャンス
 17.4.30 3回目チャンス
 17.5.5 ダイワメジャー種付け(自然?)
 17.5.21 4回目チャンス
※本馬も判断が難しい。
1回目チャンス(薬剤)を逃したのは怪我の功名で、母の良いサイクルに入れたが、肝心のダイワメジャー種付け日はおそらく自然サイクルの揺れ範囲と考えたい。
スーパーホープ 初回発情
ジュンブルースカイ 初仔
ショックアクション 外国
アスコルターレ
 17.3.19 アストンクリントン生
 17.4.15 モーリス種付け(=1回目自然チャンス4.18)不受胎
 17.5.5 ドゥラメンテ種付け(=2回目自然チャンス5.9)
ビゾンテノブファロ
 17.3.15 ラプソディーベガ生
 17.4.9 プリサイスエンド種付け(薬剤?自然?)
 17.4.14 1回目チャンス
テーオーダヴィンチ
 17.1.28 サトノラファール生
 17.2.26 ダイワメジャー種付け(=1回目自然チャンス2.27)

朝日杯FS2020出走馬たちの結果と考察

さてこのデータから、何が読み取れるか。

お断りしておくが、これはあくまで種付け日と自然発情サイクル日との重なり具合を見たもので、「自然発情で種付けしている」と言いたいのではない。

そうではなく、たとえ自然発情を主力とするサラブレッド生産ではなくとも、自然に計算できるサイクル上で実際に種付けされている馬がこうしてG1に駒を進め、しかも半数を占めている現状があるということだ。たとえ薬剤を用いた馬産が8割でも9割だとしても、なぜかこのような出生の経緯を持つ馬たちが半数を占めるとは……。

そして私たちはこのカラクリを、入手可能なデータからいつでも読み取れる。

この自然サイクルに、現代の王道である「1回目チャンスを薬剤で仕留める」法を加えた2通りが、いちおう種付け日データとして「A」評価を与えられるものだろう。自然サイクルには「A+」を与えてもいいけれど。

そしてやはり2歳でここまで来られる馬たちは、種付け日データが整然としている。ラッキーとは言え、2回種付けにさえ意味があった馬もいるし。

また今回「空胎後」産駒が1頭もいなかったが、「空胎後」産駒はこのようなデータや配合の不備を吹き飛ばす力があると見ているので、ちょっと別に考えておきたい。

さて次回ブログでは、歴代の日本ダービー馬たちを同じ手法で見ていく。

▼朝日杯FS2020出走馬の半数が自然サイクル日周辺による受胎の可能性がある」への3件のフィードバック

  1. 今回空胎明け産駒がいなかったのは、それだけレアな存在の証明かなとも思います。

    今回の件で種付け日を見ていると空胎パワーの凄さをまざまざと見せつけられました。

    統計取ったわけではないですが印象として。

    初仔や空胎明け産駒は自然発情かどうか調べようがありませんが、おっしゃるように空胎はそんなこと関係なく破壊力半端ないです。

  2. やー難しくてデータ貯めていくのが楽しみですね。これ極めたらやばいですよね。公表してよいんですか?私にだけそっと教えて下さい⁇笑い。

    1. まだそこまで決定的なデータではないかな〜。
      大丈夫、このブログはほとんど読まれていませんし、こんな考え方が標準になったら一口クラブさんがかわいそうw

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