▼大阪杯2021 2頭の牝馬は2強を脅かすのか グランアレグリア レイパパレ

動画作ろうと思ったけどいまいち乗り気になれなかった……

このところ競馬界では逸材の惜しまれるお別れが続き、私も連続して緊急追悼動画を出させてもらったが、そこでちょっと2本張り切っちゃったせいか、さあいざ月曜定期動画として今週大阪杯を出そうとしたら、「まあコントレイルとサリオスいるし……」という感じで、どうも乗り気になれなかった。

だって、考えれば考えるほどこの2頭の牙城を崩すって相当なものだよ。展開利があればギベオンのようなこともあるだろうが、もともと私はあえてそこを突くのではなく、今回は注目の参戦となる2頭の牝馬についてお届けするつもりでいた。

でもせっかく途中まで考えたことだから、ブログにはちゃんとまとめておこうと思う。

まずは無敗のレイパパレから

レース展開的には、初手で2強の前にいるであろうこのレイパパレの動きが最重要。

そこでさっそく先行馬の能力指標として、いつものとおりラップ分析をしてみた。

・チャレンジC 持続幅1.7秒
 373〜344
・大原S 
 358〜350 持続幅1.4秒
・糸魚川特別
 358〜334 持続幅1.9秒
・1勝C
 351〜351 持続幅1.5秒
・新馬
 358〜358 中だるみ④13.2 幅2.1秒 

これがレイパパレ全5戦のレースラップ。もちろん持続適性得意なのは言うまでもなく、こういうスピード先行馬の典型でもあるが、さりとてそこまで優秀な持続適性かというと、ちょっと黙ってしまう。(新馬中だるみ型から距離が保つのはわかるけど)

だいたい優秀な持続適性はレースラップの幅が1.2秒程度に収まりかつ持続で逃げ切っていれば、これはもう重賞クラスといってよい。名馬のG1レースなどにちょくちょく現れるラップ型だ。そしてラップ幅が1.6秒ならごく平均、2秒を超える幅は同じ持続でも新潟のような緩みのある持続コースで現れることが多い。

さてレイパパレのラップを見ると、一番優秀だったのは秋華賞当日の大原S。やっぱりあの走りはインパクト大で、もし次走のチャレンジCでそれ以上の持続力を見せてくれれば、ここ大阪杯でも……と思ったが、まだそこまでの力はない様子。G1で一気に覚醒の可能性もあるが、なにしろ相手が最強なので、前実績はもっとほしいところだ。

グランアレグリアが距離こなすかを見るための「よい先例」

最優秀短距離馬が二千のG1をこなすかどうか見るために、参考としてまずこの馬を紹介しておこう。マジックキャッスルである。

▼マジックキャッスル 千二〜千四〜千六〜二千OK
 母ソーマジック優先〜祖母スーア(伊芝マイル)〜Fairy King

20紫苑S 稍重2.02.1④ (4角9番手)
363〜359 ④12.8 中だるみ〜持続1.4秒
4角先頭マルターズディオサ①

20秋華賞 稍重2.00.8② (4角13番手)
349〜364 ⑥12.7 中だるみ1.9秒
2、3番手総崩れ 逃げたマルターズディオサ⑦強い 阪神C2着!

21愛知杯 良1.58.7① (4角8番手)
343〜364 ⑦12.6 中〜消耗2.4秒(2F目10.2!)

………………

クイーンC 良1.34.0 (4角13番手)
343〜363 ⑦12.7 消耗1.7秒
4角2番手 ミヤマザクラ強い

ファンタジーS 良1.20.9② (4角9番手)
337〜351 持続1.3秒
レシステンシア 4角2番手押し切り強い

サフラン賞 良1.34.3② (4角2番手)
353〜343 ④12.4 中だるみ〜持続1.2秒
マルターズディオサ①4角4番手

新馬戦 良1.10.3① (4角3番手)
352〜351 持続2.0秒

マジックキャッスルは秋華賞の時に特注馬として紹介し、その後愛知杯にも勝った。しかし元はといえば新馬の千二からスタートし、徐々に距離延びて真価を発揮した馬として私の記憶に残っている。

というか、もともと距離をこなす資質はあったと思われるので、そのスピードが表で優秀だったと言い換えることもできよう。

さてマジックキャッスルの千二〜マイル戦までの挙動で気になるところはあるだろうか。レース自体は少しきつめのラップ経験が多く、4角はいつも8、9番手で回るのが定位置の「漁夫の利型」。つまりマイルまでだとエンジンのかかりが遅いところを突かれる展開になりやすい、だから本当は距離が千八以上あるとレースがしやすい馬だったのかも。

さあそこでグランアレグリアだ

新馬戦 良1.33.6① 4角2番手
360〜336 持続1.5秒

サウジアラビアRC 良1.34.0① 4角2番手
368〜341 持続2.0秒

18朝日杯FS 良1.34.3③ 4角2番手
353〜344 持続1.8秒

19NHKマイルC 良1.32.7 4着降着 4角6番手
339〜346 持続1.6秒(12.0⑤、⑧)

………………………

19阪神C 良1.19.4① 4角8番手
339〜342 持続1.8秒

20高松宮記念 重1.08.7② 4角12番手
342〜345 持続1.3秒

20安田記念 稍重1.31.6① 4角7番手
342〜343 持続1.2秒

20スプリンターズS 良1.08.3 4角15番手
328〜355 消耗⑥2.0秒

20マイルCS 良1.32.0① 4角5番手
349〜335 持続1.5秒

これを見ると、グランアレグリアは3歳時と古馬時とで明らかにレースの組み立てが変わってきた。3歳時はとにかく有り余るスピードを抑えきれず、気分を害するとそこまでという感が強かったが、ひと息入れた3歳暮れの阪神Cでは(道中の番手もそうだが)その強さの次元が変わってきた。

そして20高松宮記念では「持続1.2秒」という短距離G1では珍しい、到底届かない流れを1頭だけ別次元の競馬を見せての勝ちに等しい2着。そして次戦の安田記念では、これまた「持続1.2秒」という優秀ラップを7番手からアーモンドアイ以下を置き去りにする芸当を見せての完勝。

そして秋のマイルCSではスローに近い持続1.5秒をきちんと5番手で折り合い、直線では進路を探しながらの堂々抜け出しという安定感。馬がどこで何をすればいいか完全に理解した証拠である。

さらにいえば、その前の20スプリンターズSでルメールも慌てた4角15番手こそが、今のグランアレグリアの精神状態を如実に物語る。つまり馬自身は少しも慌てていないから、真の適性が出始めているのだ。それは藤澤先生も感じておられるようで「(グランアレグリアは)全然千二向きじゃない」とコメされているとおりだ。

結論 グランアレグリアは距離自体はこなす

この状況を私なりに整理すると、まずグランアレグリアは懸念された遺伝子型C/C型ではなく、マイラーのC/T型だろうということ。そしてスピードの出し入れもわかってきた今なら、距離二千自体は保つ。保つのだが、他馬とのスピード比較で道中の位置取りが自然に前目になる。これを距離不安で嫌がる(抑える)と、ちょうど菊花賞のコントレイルのような窮屈な競馬を強いられる。それをどこまで我慢できるか、だ。

まあ彼女の素顔は前進気勢旺盛なお嬢様だから、これまた二千が適距離ではない。しかしちょっと過去を探してみればわかるが、昨今千二千六が主戦場の名マイラーが初の二千にG1の舞台を選ぶケースは皆無(C/T型確定していたモーリスともまた違うな)であり、そのチャレンジ精神には大きな拍手を届けたい。

(参考までに80年代のバンブーメモリー、ダイイチルビー、ヤマニンゼファー、ニシノフラワーなどは、二千以上で走った後の千二G1連対。グランアレグリアとは順番が逆)

たとえ結果が2強の後の3着でも、彼女がまったく見せずに終わったかもしれない「別の顔」を拝める幸せを、今からひとり味わっているオジサンである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です