▼配合プランはこんな感じで作成しています 10.12

いよいよ配合の秋がやってきました

珍しくブログの連投だが、今日は来春に初めての種付けを控える牝馬のための配合プランを作ったお話をしていこう。つい先日某オーナーからゴーサインがいただけたので、珍しく?図解等を含めながら、普段ドルメロがどんな感じでプレゼンテーションしているのか見ていただこう。

1頭の繁殖牝馬に夢を託するということ

各オーナー方々は毎年秋も深まる頃、繁殖牝馬の配合プランを依頼される。え?秋なの?と思われるかもしれないが、11月ともなれば各スタリオンが種牡馬ラインナップと種付け料を設定する。すると人気種牡馬からどんどん予約が埋まり、瞬く間にBookFullとなる。だから狙っている種牡馬がいるならなおさらその動向に合わせて牧場さんにもお願いをしなければならない。

配合というものはオーナー、生産者にとって一瞬の夢を見る舞台だ。もちろん実際にはもっと厳しい現実はあるものの、配合を練る段階ではみな思いっきり夢を見る。またそうでないと単なる作業になるし、数が多いとかえって苦痛に感じる、とある方から伺ったこともある。

ドルメロ理論はさまざまな制約に縛られているのが幸いして、配合を考えるのがとても楽しい。馬体のイメージ作業よりは時間軸の計算で種牡馬候補をはめ込む、まさに最後のワンピースを探す旅なので、ハマったときにはスゴい快感だし、逆にそれを満たす候補が全くいないことも多い。

満を持してあの牝馬が登場

さて今回ご紹介する母馬は、オーナーにお願いして引退からじっくり1年間お休みしてもらった馬だ。もちろん昨年も十分種付けはできたが、来春がちょうどMAX活性期に当たっていたので、そこで勝負しましょうということになっていた。先に言うとやはりこの決断は正解だったと思う。でないと時間的に予想以上に厳しい道のりが待っていた気がするからだ。

この馬仮に「S」とすると、Sは数奇な運命で現オーナーに引き取られ、現役時代はあるメモリアルイベントに関わった元中央所属の活躍馬だ。オーナーの期待もひとしおで、今回ご予算も高めに設定、来春の一瞬のチャンスを一発で仕留めるビッグプランをご所望されている。

先日オーナーから「そろそろこの母の配合を頼むよ」とご連絡があった際、オーナーから面白いご提案があった。「いっそ、ゼロ活性を試したらどうかなと思うんだ。ひらめきだけどね」

私が配合を見るようになってひしひしと感じるのは、現代においてどうあがいてもインブリードから逃れられない繁殖牝馬が圧倒的に多いことだ。何より今はサンデーサイレンスの血がどこかに入った母ばかりで、それを逃れようとすると今度はミスプロかキンカメが待っているといった具合。競走馬として完結した配合が繁殖に適しているとは限らないのだ。

電話の向こうでフフフと微笑むオーナーの声を聞きながら「なるほど、それも一理あるな」と今度は私がピンときた。せっかくオーナーからご提案があったのだから、今度は私がとことん可能性を調べる番だ。私はこの時点で8割方、母Sにゼロ活性配合を試し、まずはアウトブリード&母似優先を確定させてしまおうと考えた。

ゼロ活性配合を試していい母の条件

というのはSという母自体が母系の形を継いで活躍した母似の馬だったからだ。オーナーにはもう1頭配合を依頼されている牝馬「K」がいるが、このK産駒は残念ながら母似では活躍できなかったので、昨年から一生懸命父似の父優先馬を作ろうと画策している。クロスだけ考えればKにもゼロ活性を試したいものの、そこは安易に母似馬で妥協することはできない。

いっぽうSが継いでいる母系の形は、古い時代こそRiverman〜Never Bend〜Lalun系だったが、いまは代替わりし今度生まれるSの子は、母似ならMiswaki〜Mr. Prospectorの形を継ぐことになる。人気種牡馬モズアスコットと同様の芝ダート兼用適性と言ってもいい。とても使いやすい。

競走で活躍した繁殖が配合で複数クロス発生に悩むとき、母の形が優秀な祖先であるならば、ゼロ活性は現状打破の切り札になり得る。ただそれを実際の人間が一から企画するのは(たとえテシオ理論を知っていても)至難の業だ。

自分でも間違えそうな?複雑種付けプラン

というわけで今回のゼロ活性種付けプランを図で示してみよう。

繁殖「S」のゼロ活性配合プラン

数字は一部変えてあるが、プラン自体はそのまま載せている。

まず基本骨子は母の月のサイクル(赤い弧)。これが表であることが第一条件で、23年春はこの「赤い弧の中に入らない期間に」種付けしたい。つまりSは「き×」の母なのである。

次に母の真のMAX活性を重ねる。S自身の種付け日は5月20日で、そこから4週間が真のMAX活性だから期間は6月17日まで(紫の弧)。以降は母のゼロ活性だ。この二つが重なるわずか10日あまり(黄色の期間)。これが23年春に本当に試してみたい種付けの期間になる(第二期)。

ただおわかりのように、このわずか10日間という狭い時期に良い発情が来る確約はひとつもない。しかも受胎しなければそのまま23年は流れてノーチャンス、晩春だからゼロ活性種牡馬の選択肢は限りなくあるけれど、春から何もせずにこれをじっと待つのは全く現実的でない。

そこで考えたのが、第二の選択とはなるが真のMAX活性にはこだわらずにチャンスを広げる手段、第一期の種付け(青の期間)である。先に訪れる母の月のサイクルを避けた2月から3月なら時間だけはかなり取れそう。

しかし今度は第一期種付け中にゼロ活性になる種馬が少なすぎる。たとえば1月20日に生まれた種牡馬がいたとして、遅めの種付け予想日は2月20日、そこから真のMAX活性4週間を過ぎ、ようやく父がゼロ活性になるのは3月20日。母の月のサイクルが暗転してしまうのが4月5日だから、結局こっちも2週間そこそこの時間しか取れない。

それでも1回のチャンスが2回に広がることの方が大きな進歩。さっそく該当する早生まれの父を探してみたところ、なんとも運命的な種牡馬候補が2頭現れた。

ルヴァンスレーヴとあの馬が父馬候補に

1頭目は社台スタリオンのルヴァンスレーヴである。いやよりによって社台の超人気種牡馬かよ!って声が聞こえてきそうだが、これでも私たちにとっては救いの神。プレゼンまで散々迷ったあげく、他にいないんだから推すしかない!と強気に交渉。配合条件の厳しさはオーナーもご承知だから、快諾していただけたし、予算的にも大丈夫だったし、あとは予約さえできればぜひ試してみたいまさに夢の配合である。

しかし天下の社台スタリオンのこと。何があるかはわからないので、もう少しリーズナブルに、かつ機動的に種付けが融通できそうな候補も探しておく必要がある。そこで第二の候補に挙がったのが、今年アロースタッドにインしたステルヴィオである。

ステルヴィオ、と聞いて「え、引退後は乗馬になるんじゃなかったの?」と思ったアナタ、そうなんです。彼は乗馬になることが決まっていたにもかかわらず、噂を聞きつけたアロースタッドが種牡馬にしようと今年6月に引き取っていたんです。これぞ牝馬Sのために用意されていたシンデレラロードなのではないか!?(落ち着け)

彼は初年度ということもあって種付け自体も何もかもが未知数だけど、コスパは断然こっちの方がいいし、スピード因子的にはこちらの方が自然にC型指向になるのもいい。まあルヴァンスレーヴの遺伝子T型も牝馬Sに関しては悪い条件ではないけれど。

この2頭はいずれも自分の種付け日が2月11日で、ゼロ活性開始日が3月12日。これならワンチャンスではあるが第一期内の種付けに持ち込めそう。ということでこのたび、Sに関する来春の種付けプランが正式に決定したわけです。

まだまだドキドキは止まらない

ここからは自然体に任せてS母さんに頑張ってもらうしかない。自然サイクルでの種付けだし、不受胎なら2ヶ月のお休みに入って、6月の第二期に備え、種牡馬も今一度選択しなければならない。なにしろ過去にはすでに他馬で不受胎や流産も経験しているので、種が留まる難しさも知っている。しかしこうして不思議な縁があったからには、どちらかの父にパワーをいただきたいもの。よろしくお願いしますよ!

今回のご依頼では、他にも「この前買ってほしいと頼まれた牝馬の診断を」というお話があった。地方で2つばかり勝っている変わった馬名の3歳馬だが、このたび移籍が決まり、縁のあったオーナーにお声がかかったご様子。しかし名前だけでなく、この子の血統構成がまたすごく面白い。思わず「私ならもう牧場に帰して配合を考える」とお返事したら「移籍先の厩舎スタッフが張り切っちゃってるから、さすがにそれは可哀想でできんわw」と苦笑い。しばらくは現役続行となった…

ええ、それでもいいじゃないですか。こんな様子で、ドルメロは相変わらず楽しくやらせてもらっています。来春はいろんなことが起こりそうだが、柔軟に流れに任せてみるのも大事。最後は人間の力が及ばないところで動いているのだから、ありのままを受け止めようと思っています。

▼配合プランはこんな感じで作成しています 10.12」への2件のフィードバック

  1. ドルメロチャンネルで知りましたが、ダイワレジェンドの20のシリアルノヴェルが新馬勝ちしたんですね。

    募集時はそこそこ真剣に検討していましたが、結局はスルーしてしまって‥

    まあ結構人気していましたので、新規の私には出資は難しかったかもしれませんが。

    あの時は血統とMAX活性に惹かれましたが、MAX活性にそこまで拘らない今ならあそこまでの検討はしないかもしれませんね。

    それにしても全く人気なかったんですね。

    馬券的中おめでとうございます!

    P.S.
    ストリンジェンドが2歳未勝利を勝ってくれました。勝利時の特別な高揚感は何度味わってもいいものです。

    1. わにさん、そうなんですよ。
      当日まで出走すら知らなかったのですが、ひょっとしてこの仔は?と思い、確認しました。
      ド派手なデビューになりましたが、まだ本当の力は付いていない様子。
      1勝Cで少し揉まれることでしょう。

      ストリンジェンド、未勝利脱出おめでとうございます。
      2歳からよく使える子で、会員さんとしては楽しい馬に当たりましたね。
      今後も主にダート戦なのかな。ダート馬でも地方には夢のあるレースが目白押しになりましたので、楽しみですね。

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