今年はハーツの当たり年か?
ここまでディープインパクトからジャスタウェイまで今年の2歳馬を見てきましたが、下調べの段階から今年一番面白そうだったのがこれからご紹介するハーツクライ産駒たちです。
スピード、体力面で良いと思える馬そのものが多いことに加え、自身も最後の活性MAX期に近づいていますので、ハーツの特性がストレートに出る傾向にあり、適性が読みやすいことも要因に挙げられます。
ですから他の種牡馬なら挙がったかもしれない候補についても、軽くふれるだけに留まるケースもあります。
なるべくたくさんのよい馬を紹介したいので、その辺はどうぞご了承ください。
母に対する本当の繁殖評価はこの馬をもって測れるはず
▼ダイヤモンドレラの16 (競走名:アダマース)番号108
牡2・尾関知人厩舎予定
父 ハーツクライ
母父 ロックオブジブラルタル
1月17日生まれ 鹿毛
さまざまな要因があって、今までは北米芝G1を勝った母の良さが出てきませんでしたが、この馬なら母の評判を少しは回復してくれるのではないかと見ます。
【診断結果】
・優先祖先 父の父 サンデーサイレンス
・馬場、距離適性 芝のマイル〜中距離
・基礎体力値 69(平均50)
・スピード 良好
・頭脳 普通
・総合 ★★★(満点は5つ)
3つ上に米国産ながら仏や豪で芝を走ったSpectroscope(父Medaglia d’Oro・豪G3勝ち)という兄がおり、決してスペックが低い母ではありませんが、繁殖のサイクルには逆らうことができません。
2代母 Tap Your Feet 98年2月6日生まれ
(1月20日から3月20日良好)
・母 ダイヤモンドレラ 04年3月23日生まれ ×
(3月7日から5月7日良好)
・・Spectroscope 13年2月14日生まれ ○
・・サトノシュテルン 14年2月11日生まれ ○
・・(ディープ牝馬) 15年1月19日生まれ ×
・・本馬 アダマース 16年1月17日生まれ ×
兄と本馬以外はいずれもサイクルを外れており、母にしてみれば待望の「表年」産駒となります。
加えて兄の優先祖先であるMedaglia d’Oro(1999)は、米国産なのでダートの王道を歩みましたが、父自身はRoyal Vale(1948)という芝も走った英国産馬の影響を強く受けており、産駒には仏で芝を走ったG1馬もいます。
つまり芝適性がある種牡馬を優性期に配合すれば、おのずと母ダイヤモンドレラの芝適性までがアシストしてくれるというわけです。
本馬の優先祖先はサンデーまでさかのぼりますので、ハーツ産駒としては早めに距離限界がくるかもしれません。
が、基礎体力も豊富、デインヒルにより母系のNorthern Dancerクロスが1本消えていることなども加味すると、折り合い次第では距離をこなしてもいいでしょう。
尾関厩舎は非根幹距離の使い方がうまいので、千八や二二(気性×なら千四)などでよく稼ぐ仔になる気がします。
今年の目玉の1頭 種牡馬になるため生まれてきた馬?
▼マジックストームの16 (競走名:バイキングクラップ)番号109
牡2・堀宣行厩舎予定
父 ハーツクライ
母父 Storm Cat
2月7日生まれ 鹿毛
巷では「種牡馬になるため」堀厩舎に入ったという噂が飛び交うクラスで、POGでもとにかくものすごい人気馬のようです。
【診断結果】
・優先祖先 父の父 サンデーサイレンス
・馬場、距離適性 芝の中距離
・基礎体力値 78(平均50)
・スピード 良好
・頭脳 普通
・総合 ★★★★(満点は5つ)
名繁殖牝馬・マジックストームの忘れ形見となった本馬ですが、まずここまでのきょうだいの繁殖サイクルを見てみると、
母マジックストーム 99年2月3日生まれ
(1月17日から3月17日良好)
Storms Past 5勝(04年3月4日生まれ) ×
Our Select 1勝 (06年3月16日生まれ) ×
エスケープマジック 5勝(08年5月7日生まれ) ○
ラキシス 5勝 (10年1月31日生まれ) ○
サトノアラジン 8勝(11年2月16日生まれ) (×)
サトノケンシロウ 4勝現役(13年3月3日生まれ) ×
フローレスマジック 2勝現役(14年4月15日生まれ) (○)
本馬 バイキングクラップ (16年2月7日生まれ) ○
初仔ボーナスのStorms Pastが逆サイクルである以外は、ほとんどが説明のつくサイクルで回っていることがわかります。
安田記念を勝ったサトノアラジン(父ディープ)は、ごく初期のサイクルに当たったため(と見れば)、きょうだいで一番スピードタイプに出た可能性があります。
本馬バイキングクラップは、SアラジンやラキシスらG1ウィナーよりはやや遅めの種付け時期なので、サイクルは間違っていないものの、グイグイ一辺倒で押すまでのスピードレベルには至っていないかもしれません。
しかしそれを補うと見られるのが、本馬の基礎体力面です。
2代母Foppy Dancerと母マジックストームはいずれも本馬にMAXの体力を伝えており、3代で2回のMAX期という名馬の条件を満たします。
基礎体力78は近年の日本ダービー馬でいうと、ディープブリランテ(88)、マカヒキ(81)、ワンアンドオンリー(78)、レイデオロ(78)らに匹敵する値で、順調に鍛練を積み、連戦や遠征をものともしない頑強さにつながります。
また近7年中6年で、4代中1度はMAX期活性を受けた馬、がダービー馬になっています。
体力値自体は低いものの、今年のワグネリアンや13年のキズナもそうでした。
もちろんこのまま同世代の頂点に立っておかしくない逸材ではありますが、あえて弱点らしい弱点を探せば、
▼優先祖先が距離伸びてあまり良くないサンデー
▼母系のStormCatと父系のLyphardはかなり強いNorthernDancerクロスの代表
くらいでしょうか。
とくに青鹿毛と鹿毛の違いこそあれど、流星と右後一白の様子などはサンデーにうりふたつ(ハーツは左後一白)なので、二千までは鬼のように強く、あとは相手次第というのが、距離適性に関する今の私の見解です。
いずれにしろ、これは「評判倒れ」にはならないでしょうね。
一口250万円もそう高い買い物とは思いません。
そう言っている口元が自然に震えますが…。
おまけとして、もうすぐトップテン圏内のようなハーツ産駒もいるので、1頭ご紹介しておきます。
▼ソベラニアの16 (競走名:シュヴァルツリーゼ)番号110
超評判馬Bクラップと同馬主、同種牡馬、同厩舎所属という、なにか素直に割り切れない感がする(厩舎くらい別にしても…)この馬も、スピード面で見て悪いところはありません。
ただ基礎体力に欠けるのが一番の心配で、大物同期生の陰に隠れながらジワジワ力を蓄えてほしいですね。
釣られて「早い時期から動かそう」なんて思うときっと失敗します。
古馬になってからいいところがあります。
さて次回はキャロットクラブさんのハーツクライ産駒をご紹介します。