▼いま世界で一番アツいミラクル7歳牝馬・ウィンクスの血統表を徹底解剖してみる

豪の歴史的名牝が今シーズンも絶好調!

いま豪州の競馬ファンは、200年に1度の競馬ヒストリーを目の当たりにしているところ。

なんと御年7歳という牝馬が先日のG1レースでまたまた勝ち、豪の最多連勝記録と平地G1最多勝記録を更新中だというのだ。

そういう馬がいるってことは去年あたりから知ってはいたが、最初はG1を勝ちまくっているとは知らず、どこかで「オージーローカル競馬の連勝記録ってことかな?」という思いもあったが、ぶ、ぶわっかもーん!

…正真正銘の王道G1ウィナー・Winxさまのお通りだい!

それにしたって、7歳牝馬が牡馬混合のG1戦線でものっしのっし幅をきかすって、一体どういうこと?

なにより、その女帝アマゾネスさんはどんな血統背景の持ち主なのか、調べてみたくなるじゃないですか!

 

何はともあれまずは表を見ながら

Winx(豪・牝7) 2011年9月14日生まれ

父 Street Cry(1998)
母の父 Al Akbar (1990)
通算成績38戦32勝
現在28連勝中 平地G1通算21勝

簡易血統表を見ていただいてまず気がつくことは、2代母Vegas Magic(1985)の継承体力を示すピンクのバーが、がら空きだということ。

そう、つまり2代母は「ゼロ活性」馬なのだ。

これだけの名馬の中にゼロ活性が含まれていること自体驚きを隠せないが…いやここでちょっと待って欲しい。

 

ウィンクスのこんこんと湧き出すパワーの源がこれだ

Vegas 1969
Vegas Street 1976★
Vegas Magic 85.8.1
Vegas Showgirl 02.10.6★ 9.20〜11.20
Winx 11.9.14

基礎体力=69★★

これが代々の牝系の誕生日なのだが、もう一歩踏み込むとそもそもウィンクスの母系は

▼3代前からずっとMAX活性年(9歳or17歳)に種付けされた牝馬ばかりで構成されている

ことがおわかりだろうか。

そして3回のうち2回は見事にMAX活性を子孫に伝えることに成功したのだが、残念ながら2代母だけは17歳と約3か月が経過してからの種付けであり、計算上はゼロ活性となる。

 

実は細かい計算をする前にもう、ウィンクスの血統的秘密が一目瞭然となった瞬間に体が少し震えた。

「ウソだろ? 3世代連続のMAX活性馬がこの世に存在したなんて!」

確かに今までもウィンクス以上に基礎体力の高いG1馬や、2回のMAX活性を受けているG1馬(ワグネリアンなど)には散々出合ってきたが、いよいよこれこそMAX活性3回継承が人類に見せてくれた創造主の奇跡なのか…と思わず手が止まったものだ。

(その後1回はゼロ活性とわかってヘナヘナヘナ…あぁ情けない)

 

しかしそうは言ってもウィンクスは、全くの偶然配合が3度重なってできたお宝ではない。

詳細な牝系のやりとり(移動や購買含め)はわからないが、どこに行ってもその土地の生産者が高い繁殖技術を持ち、蓄積したノウハウを注ぎ込んた結果の結晶だ。

 

細かいところまで手が届いたアウトブリードの見本

さて少し冷静にウィンクスの血統細部を見ていくと、最初にまず

▼5代までに父馬のクロスがひとつもない

準アウトブリード馬(名牝Natalmaのクロスはあり)だということに気がつく。

もちろん父のStreet Cry(1998)は堂々の優性期(中間期)であり、この馬の誕生に一役買っていることは確かだが、ことウィンクスの形そのものを決めた優先祖先はといえば、簡易表の青い活性バーが一番長く伸びた3代父のVoodoo Rhythm(1977)までさかのぼる。

そしてVoodoo Rhythmに一番影響を与えている父馬はご存じ大種牡馬Northern Dancer(1961)であることから、ウィンクスの最も得意な距離適性は中距離あたりだということもわかる。

また代々つけられた種牡馬の活性値が、MAX年を8(8年サイクルの8)とすると

Street Cry 4
Al Akbar 3
Voodoo Rhythm 7
Sovereign Edition 5
(青いバーの長さと一緒)

と全て異なる値であることから、ウィンクスの頭脳がかなり明晰であることも容易に想像がつく。

さらにさらに4代種牡馬の大きな系統を見ると

Street Cry ミスプロ系
Al Akbar プリンスローズ系
Voodoo Rhythm Northern Dancer系
Sovereign Edition グレイソヴリン系

ウィンクスの血統そのものは新しいと言えないばかりか、むしろ代々の母馬の年齢含めて古めかしいと言った方が合っている。

21世紀に入って母父にプリンスローズ系メジロパーマーなどが直系といえばそのマイナーぶりがおわかりか)を持ってくるほど機転が利く生産者は限られるだろうが、あえてそれをすることで現代競馬の象徴であるNorthern Dancerミスプロとの配合に新しい風を吹き込んでいるのだ。

こうしてみると、ウィンクスは誰ともわからない4代前の生産者が作った1頭の牝馬から「ただ正しいことを愚直に紡いできた」結果生まれた、神からの贈り物であることがわかる。

 

最後に蛇足ではあるが、ウィンクスの繁殖牝馬としての期待を展望すると、

▼もちろん能力的な担保が十分にある

▼2回のMAX活性が消えない体力面での貯金

はよいものの、

▼自身が配合の完成形であるため、血統自体に珍しさはない

▼今度はNorthern Dancerやミスプロとのクロスが避けられそうもない

▼自身の年齢がもう7歳なので、最初のMAX活性年まで間がない

▼競走で十分走った牝馬の活躍馬は晩年期待、がセオリー

ということで、少し気長に待っていた方が吉、のような気がする。

くれぐれもみなさん慌てずに、ね。

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