▼【試案】自然サイクル発情をクラブ募集資料にどう活かすか ご質問にお答えして

これはもう絶対採用するしかないが……

動画制作の間も、読者さんからさまざまな気づきコメントが寄せられ、それに早く答えたくて気が気でなかった先週末。やっとYouTubeから解放されたので(でもしっかり動画は作り込んでいますのでご安心を)、いよいよまとめに入ろうと思う。

今後私がこの「自然サイクル発情」をクラブ募集資料にどう活かすか、これにふれる前に、まず寄せられたご質問にお答えしていこう。実はその中に今回私が悩んでいる点が多数含まれているからだ。結局みな同じことを考えているんですわ。

なおここで詳細にお答えするので、いただいたコメントへの個別の長文返信は控えさせていただく。そして相変わらず私は獣医師ではないので、あくまで私見ではあるけれど……

問題の真理を突いたご質問3つ

質問① 不受胎後2回目以降の発情について

Q いわゆる現代王道風の薬剤を使った種付けで受胎しなかった場合、その後の自然発情日には全く影響しないものなのでしょうか?遅くなったり逆に早くなったり。

A これについては、今回の検討の発端となった1.19の過去記事

▼繁殖サイクルの「初期がいい」についてもう少し深く考えてみた

を今一度ご覧いただきたい。そこにデアリングタクトとの比較で、いまライオンRHにいる全妹、デアリングバードの19の種付け経過も示している。この19年産駒は、初回の種付けを薬剤で失敗した後、2回目自然日をスキップし、3回目の自然サイクル日で受胎している。

私はこれにすごくビックリして、新たな知見が得られたと書いたのだが、つまりこれは薬剤で1回目を失敗しても、放っておくと自然な発情サイクル日で「種付けができるくらいの」十分な発情が来るということを示している。

だからやっぱり人間が薬剤を使うにしても、馬の発情サイクルのほんの少しの時間しか支配できないのだなと感じた記憶がある。

もちろんホルモンをいじっている以上、全ての牝馬がその後のシーズン中順調に発情を取り戻すとまでは考えにくい。そこはすごくナイーヴな世界だろうから、早まったり遅れたりは当然あるだろう。ただ中にはこのデアリングバードのように、自然サイクル発情日で種付けができた繁殖もいるということだ。

そしてくれぐれも申し上げておくが、私は今回「自然な発情で種付けした」とは一言も言っていないので、そこは今後みなさんがもし外部の方と話をされるときは大いに注意すべきだ。あくまで素人でも計算できる日に種付けしている、それ以上でもそれ以下でもない事実だ。

質問② 有力配合イベントの順序付け

Q これからは以下の3つのパターンに該当する馬達が有力になってくると考えておけば良いのでしょうか?
(1)自然サイクル
(2)前年空胎
(3)初仔

質問③ 初回発情の扱い方

Q (G1出走馬に)初回発情が意外に多い印象ですが、初回発情については「薬剤を使ってない=自然」とは考えられないのでしょうか?

このふたつの疑問には私が直接お答えするのではなく、私が悩んでいた点を聞いていただくことで、どうか一緒にお考えいただきたい。

先週金曜日のブログで「この自然サイクル発情の評価法については私に腹案がある」と申し上げた。まずそれを最初にご披露しておく。

このようなファクターを検討に最大限活かすためには、今年私が制作したファクター表一覧に単に「自然日か薬剤日か」を付け足しても、(初見さん含め)お使いになる方が戸惑うだけで、あまり威力を発揮しないと私は考えている。つまり

月のサイクル ○ 薬剤日
月のサイクル × 自然サイクル日

といきなり書かれていても、大半の方がその扱いと上下関係評価に困ってしまうと思うのだ。

また薬剤とか自然とかいう話自体もやや神経質な扱いが必要なので、発表時には少しオブラートに包みたい。そこで私が考えたのが

月のサイクルとの合体評価法

である。

これは読者さんとのやり取りからヒントを得たもので、例えば今まで月が裏だ裏だと思っていたクラブ馬がまずまず走っていることに疑問を感じていたが、今回の発見からどうもあの馬は自然サイクル発情らしいことがわかったとか、私自身もクロノジェネシスを月の裏評価に固定できずにいたところ、今回自然サイクル発情だということに気づいたとか、とにかく今現在、月の裏評価馬でも走れる救世主ファクター、それが「自然サイクル発情」という評価になりつつある。

ならば、いっそのこと、そのように考えればいいのではないか。

つまり月のサイクルは裏でも、自然サイクル発情なら合算してすこし評価を上げてみるとか、反対に月のサイクルが表でも、2回目の薬剤発情ならそこまで評価はできないとか、そういう月のサイクルとの合体評価が面白いと思うのだ。

そこで、ご質問の趣旨が活きてくる。

すべての配合イベントを順位付けしよう

(1)自然サイクル
(2)前年空胎
(3)初仔
(4)初回発情

いただいた2つのご質問を合わせ、まずこれら配合イベントの「順位付け」をしておかなければならない。何が最上位で何が低評価なのか。

現時点での私の評価順位はこんな感じだ。

(1)前年空胎
(2)自然サイクル
(3)薬剤1回目
(4)初仔
(5)初回発情
(6)1回目薬剤 2回目自然
……(標準)……
(7)1、2回目薬剤
……

ちょっとイベント数を足してみたが、キモとなるのは空胎後産駒の最上位化、次いで自然サイクル、そして初回発情の大幅な評価値アップである。

今回G1出走馬を調べていくと、やはり無視できないのが「初回発情」付け馬だった(そう!私もおんなじことを考えていた!)。私が初回発情付け馬を少し敬遠していたのは、おととしの赤本特集からで、JRAスタッフの話として平均的に見て成績が芳しくないことと、母体にも負担をかける生産法であることが記載されていたからだ。

しかし今回の調査で、この初回発情は人間が予想しうる数少ない自然発情のタイミングであることが、やはり大きいのではないかと感じるようになった。もちろん本番の種付けには薬剤を使うのだろうが(何も使わない種付けって今はほぼないんじゃないかな)、いずれにしてもタイミングとしてはこれ以上ないわかり切った「自然サイクル」であることは間違いない。

そこで今回思い切って評価を改め、いきなりの標準以上にランクアップさせたというわけだ。この辺は今後もさじ加減が必要で、私としてはこれ以上の高評価はしたくないと思っている。

そして空胎後>自然サイクルの順位も固定したい。空胎後というのは配合そのものの不具合を吹き飛ばすレベルのリセット作用が感じられるので、これは神が与えたもうた最後の福音ファクターとしておこう。初仔も効果は同様だが、初仔は馬体のサイズがどうしても引っかかるので、しっかり目視での確認が必要だ。

しかしイベントごとの評価値差はわずかなもので、そんなに大きな差があるとまでは考えていない。

さあそして、これを月のサイクルと合体させるのだ。

ABC判定で生まれ変わった 新生「月の評価」

これが今回の私の腹案である。

評価名称は仮に「月の評価」としておく。これで月のサイクル単体の評価をやめる。月のサイクルが表で空胎後+αの要因がある馬を頂点のS+評価とし、あとは順にA〜C評価までが標準以上、表はほとんどがB以上、D以下が標準以下になる。月のサイクル裏の評価値をアップする反面、思い切って月のサイクルが表でも薬剤で2回以上種付けしている馬はD評価にしてみた。これ以下があればE評価でいいだろう。

「+α」の要因については、実はまだ1度もみなさんにお話ししていない。もちろん血とコンプレックスには記述があり、おととしのクラブ評価(ブログ記事の時代)には「配合スパイス」として加えていたものだが、この配合スパイスがある馬は適宜、S以下も「A+」などの表現でお知らせしようと思う。このスパイスは自然サイクル発情と仲がいいはずなので、またお話しすることもあろう。

しばらくこの表をパブリックビューイング?として公開するので、評価のさじ加減や気になる点、ご意見ご感想ご質問どしどしお待ちしています。修正を加えながらまた見ていただき、春までには評価値を固定させ、クラブ募集資料に採用します。

こうして読者さんと、より良い配合評価について話し合えることにいつも感謝しています。現在他にも、空胎後祖先の効果範囲などの研究が始まりそうなので、基礎体力等の項目ももっと改善される余地があるかもしれません。今年の春がまた楽しみになってきましたね。

▼【試案】自然サイクル発情をクラブ募集資料にどう活かすか ご質問にお答えして」への9件のフィードバック

  1. キャロットクラブの現役馬をさらっと調べてましたが、自然サイクル出身馬はやはり少ないですね‥

    空胎後よりもレアです絶対。
    (でもやっぱり空胎パワーは本当に凄い)

    それでも3歳馬のエフフォーリア(2戦2勝)は自然サイクル②に該当します。

    同じく3歳馬のモントライゼも自然サイクル②に該当?

    となると自然サイクル②の評価をもう少しあげてもいいのかなと個人的には思います。

    AとかA −とか。

    それから月の評価は大きなウェイトを占めてもいいんじゃないかと個人的には考えています。
    (7割、8割くらい)

    ここを軸として他のファクターを後付けしていく感じで。

    もちろん基礎体力も大事になるんですけど、ノーザン系のクラブは数を使わない傾向にあるので(酷いと3ヶ月に1回の年4回)、基礎体力が豊富でも宝の持ち腐れなのでは?と最近思うようになってきました。

    全くの無駄とは言いませんしあるに越したことはないのでしょうが、以前よりも固執してないですし、そこそこあればいいかなぁくらいの感じです。

    入会してるクラブによっても変わってきそうですし、そこは本当に個人差ですよね。

    1. いかにもクラブ会員さんらしいご意見ですね。参考になります。
      私もさっそくシルクHCさんを調査中です。ちょっと時間かかるかな。

      朝日杯FS編でも述べましたが、モントライゼは確かに自然②の範囲内と考えておきたいです。
      ただ空胎後よりレアケースとは……。

      ノーザン系生産の天下が続く限り、自然サイクルは希少であり続けるから狙ってみたいが、そもそも候補馬がいないという……
      うーん、クラブ会員さんの悩ましいところですね。

      しかし出走が3か月に1回はヒドい!(でもありうるな)
      以前条件が整ったら私も一口、と思っていましたが、こうして外野から皆さんを応援する方がずっと気が楽ということかぁ。
      確かに「出走重視系」のクラブなら、ぜったい基礎体力なくちゃね。
      基礎体力がスピードに結びつかないのが残念なところです。

  2. ドルメロさん、こんばんは。
    早々に質問に回答頂き、ありがとうございます。

    これまで私自身はあまり初回発情の産駒の評価は低く見ていたのですが、種牡馬になるような馬の中にも初回発情のタイミングもありますし、あるクラブは初回発情のタイミングの募集馬が多く、成績には注目しています。
    初回発情の評価が低いのはドルメロさんの影響が強い(笑)のはもちろんですが、Horse House TVというYouTubeのチャンネルで、競走馬の出産の動画を見たのも1つきっかけになっています。
    出産後の母馬の体調、種牡馬のその時の体調によるところが大きいように思えて、その管理まではこちらからはなかなか見えない点でもありますので…
    ここに母馬、種牡馬の基礎体力が関わったりする事もあるのかな?と思ったり、思わなかったりの段階です。

    私としては月の評価のウェイトはあくまでドルメロさんのコンテンツを買われる方、それぞれの判断で良いのではないかと感じていますが、いかがでしょうか?
    個人的には基礎体力、優先祖先、アウトブリード、月のサイクルの順で重視しています。月のサイクルはあくまで最終的な一押しとして効いてくる要素ではないかという思いも強くなりました。

    今回の評価法になったときにどう見え方が変わるのか、今はゆっくりチェックする時間がなかなか取れないので、もう少し自分でも見始めた後で何かあればまたコメントをさせて頂きます。

    1. ピーヤさん、こんばんは。
      どうもこんな大騒ぎになってしまいましたが、またゆっくり事態を消化していただけたらと思います。

      おっしゃるとおり月の評価のウェイトは、購入者さんがそれぞれ判断していただければいいと思います。
      今年までは動画にしていたため、いちおう私の意見も添える必要がありましたが、今年からは一覧表内ではオススメ馬の推薦もしなくていいわけですし。
      注目馬は別冊のテキストコンテンツ発表でもいいのでね。

      月の評価が「サイクルと配合イベント」の両取りになるため、考慮ウェイトが高まる反面、裏評価が上がることで、ピーヤさんのように基礎的なデータから順に考えても同じ良駒にたどり着く可能性が高くなるでしょうね。私も常々、基礎体力だけは譲れないと思っています。

      1. いえいえ、このような大騒ぎならば大歓迎です(笑)
        またここ1週間のドルメロさんのブログも振り返りながら、じっくりと考えたいと思います。

        次回シルクさんの4歳馬達、いわゆるサリオスの世代の結果も楽しみに待っています。

  3. ありがとうございます。

    あとは空胎後でも2回目や3回目の種付けでようやく受胎したケースもありますし、そこはやはり評価を下げるということになりますかね。

    それからスパイス馬!

    前にシンハライトがそうだとおっしゃっていましたよね。

    たまに思い出すこともありますけど、どういうファクターなのか考えも全く‥

    また楽しみにしております。

    1. そうですね、空胎後の②回目というのは唯一評価が下がるケースかな。
      これも実例をたくさん見て決めたいですね。空胎後は2回付ける牧場が多いのでね。

  4. ありがとうございました。

    いくつか質問させて下さい。

    この評価表はあくまでも「月の評価表」であって例えばクラブ馬の総合評価とはまた違ってくるのでしょうか?(基礎体力やクロスの有無、優先祖先など他にもファクターは色々とあるので)

    それとも「月の評価」を大きな軸としてそれに付属するような形での評価となるのでしょうか?

    それから自然サイクル①というのは、時期は関係なく(30日後でもその後の3週間後でも)1回目の種付けで受胎したという意味でしょうか?

    この場合必ずしも30日後が一番良いということではないと考えればいいですか?

    自然サイクル②というのは1回目がどうあれ(薬剤だとしても)2回目の種付けを自然サイクルで受胎したという意味でしょうか?

    1. 自然サイクル①は、時期関係なくシーズン①回目の種付けで受胎したことを表します。
      何かしら母体の準備が整わずに、初回チャンスをスキップする可能性もあるでしょう。
      必ずしも30日後が一番良いとは限らないと思っています。(好印象ではあるけれど)

      自然サイクル②は、①回目の種付け状況にはこだわりません。
      あくまで②回目が自然日だったかに焦点を当てます。でももう少し評価下げてもいいかな。

      そしてまた、わにさんに先を越されてしまいましたが、総合評価のうち何割をこの「月の評価」が占めるのか、これこそが次の課題です。
      ここでお答えする前に、自分自身過去のクラブ募集馬で少し検証してみます。

      皆さんのクラブと被らないよう、近くシルクHCさんの4歳馬を例に、今残っている現役馬のデータを採ってみます。

      私としては「裏をひっくり返している以上」月の評価が7割を占めてもいいのではないかと思っていますが、そんなに甘くないでしょうね……。

ピーヤ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です