▼重賞勝ち馬10年分の種付けイベント調査 途中経過とそのおもしろさ 2.1

調査の目的と方法について

以前お話しした「重賞勝ち馬10年分の種付けイベント調査」が、少しずつではあるが現在も進んでいる。

これは、過去の重賞勝ち馬たちとその母の種付けイベントから、なにか一般の馬とは違う際立った特徴がないか調べているもので、もちろん今後のクラブ募集馬やセール馬の選考に使いたいと思ってのことだ。

中でも昨年暮れに宿題となった「牝系爆発」のデータだけでも先行して集めたいと思い、まずは牝馬の調査を始めたまではいいが、その後「調査の前提」としてちょっと気になることがあり、今はいったん道を戻っている。

この辺は少し前のブログでもお話しした。私が気にしているのは、重賞勝ち馬たちだけを見ていると道を誤ることがあるだろうという点だ。

こういう調査は、良い馬たちだけの母集団で結論を語っても意味がない。そんじょそこらの一般馬とはっきり区別できることが大切で「こうなれば高確率で大物の相がある」というパターンがほしいわけだ。

そのため、重賞勝ち馬の調査と並行して「一般の競走馬」のデータも比較対象として必要になるが、この「一般」という基準作りがまた難しい。

サラブレッドは基本どの仔もエリートである

暮れのブログでは「中央の芝1勝馬」なら一般馬基準と呼んでいいかなと書いたが、中央で1勝する馬ははっきり言って全馬「エリート」である。この辺は「中央のダート1勝馬」に条件を変えてみたところで、あまり変わらない。

それは実際にこのような調査をしてみればわかる。何を隠そう中央の「1勝馬」たちは母馬のイベントが優秀で、どこからでもOP馬が産まれる土壌はある。しかしこと自分の種付けイベントになるとピンからキリまである感じで、どちらかというと「母の土壌を活かしていない」配合でこのクラスにいるのかも、という気がする。

また種付けイベントが超いい馬が出てくると、今度は月のサイクルが裏だったり…やはり総合的な観点で馬を評価することが大切だと改めて知らされる。やっぱり月のサイクル重要かも。

ちなみにまだサンプル数は少ないが、中央1勝馬の月のサイクル「表率」は、いまのところ約35%。ちょっと低いのかな。でも過去に表率が4割くらいのクラブ世代はごまんとあったし(むしろ平均)、ダート馬だからと言って裏一色というわけでもないし、また芝馬が全部表というわけでもない。

だから単純な1ファクターとして月のサイクルだけに惚れて推すのは危険だが、種付けイベントとの合算ならば両者がかみ合った方がいいという話だ。

そうそう、中央1勝馬の基準だが、芝の1勝馬は1600〜1800の勝ち馬、ダートは1800の勝ち馬としている。千二や二四適性はまた別のファクターが働くし、スピードの有無も比較しづらい。そしてこの条件だと「地方馬」との比較もしやすいのだ。

仕方がないから大井の仔たちとも比較してみた

「こりゃ中央の1勝馬と比べてもラチがあかんぞ」と感じたドルメロは、仕方なく地方競馬の馬たちまで調査範囲を広げるハメに。だってそこまでしないと有意な差が見られないんだもん。本当に中央入りした仔はみんな優秀なんですって。

こうなりゃとことん条件を落としてみよう、そう考えて今度は「大井競馬のC2クラスを勝てないで引退した馬」を多数ピックアップしてみた。条件はダート1600戦の出走馬たちだ。大井の下級条件は1200か1600しかないからね。

で、ここまで来ると困ることがひとつ。今度はなんとGoogleで「JBIS 馬名」と検索しても、その仔の情報が出てこないという仕様。だれもこんな検索はしないから当然と言えば当然だが、これがデータベースとは違う検索エンジンSEOの哀しさか。

仕方がないから一番有名な「父の名」からまず産駒一覧を出し、次に世代検索で探すという煩雑さ。おお、もっと下級条件馬にも愛の手を。

という感じで、今は地方馬のデータを倍の時間かけてシコシコ集めているのが現状だ。しかし幸運なことに、ここまでしてやっと「もしこんな種付けイベント馬が中央にいたらオレは指名するな」という馬の条件がおぼろげに見えてきたのである。

シルクの2歳時勝ち上がり馬で試算してみた

残念ながらまだサンプル数が少なくて、その結論は申し上げる段階にないが、ちょっと試しに昨年のシルク2歳時(現3歳)勝ち上がり済みの馬がどうなっていたか、コッソリ調べてみた。

シルク2歳時勝ち上がり表(2022年1月現在・賞金順・1次募集馬のみ)

△母シャトーブランシュ イクイノックス 自然①+4 4.3
○サマーハ コラリン 初仔 4.4
…ファシネートダイア シンティレーション 初回発情 2.11
◎ルシルク イルチルコ 空胎後 2.10
…リアアントニア リアグラシア 自然①+1 3.12 6日早
…ユキチャン ハイアムズビーチ 空胎後 2.10
…ジュピターズジャズ ジャズブルース 空胎後 自然②+2 4.11
…イスパニダ コリエンテス 初仔 4.12 自然②−2
…フェイトカラー カミニートデルレイ ー① 2.20 3日早
○ウィルパワー ラキエータ 自然①±0 3.5 4日早
○ランニングボブキャッツ リンクスルーファス 自然①+9? 3.23
○サマーハ ラスール 初回発情 3.21
◎トレジャーステイト ピースオブエイト 初仔 2.11 4日早
◎サロミナ サリエラ 自然①−1 3.3 6日早 
…ショウナンパンドラ パンドレア 自然②+1 3.29 4日早
…ウェイヴェルアベニュー アストロフィライト 自然①+2 4.19
…シーイズトウショウ フリートオブフット ー① 5.15
◎メリーウィドウ ヴァランシエンヌ ー① 5.15
○ハイドバウンド サンカルパ ー① 3.6

この世代は無料で情報提供した最後の世代で、左端に当時の私の評価「◎○△…」も付けている。今までもよく「過去のデータの当たり具合はどうなんですか?」と聞かれることはあった。しかし当時の私としては、全然それを評価できる域に達していなかったからこそ皆さんに無料で見ていただいたわけで、今のデータとは重みが全く違う。

またこの年は動画も見た上で評価したので、その点を踏まえて気楽にお付き合いいただきたいが、何より出世頭イクイノックスに印がついていてちょっとホッとしているw

◎○馬もけっこう2歳で勝ち上がってくれたし、世代一番のお気に入りだったイルチルコも元気に走っている。

さてこのデータをいま新たな研究段階にいる私が見ると、たとえイクイノックスであっても「新S評価」までは至らないかなと感じる。それどころか、この中でいま「S評価」できる馬は、おそらくたった1頭だと思う。ヒントは「◎」馬ではない仔。

おかげさまで今は全然違う目でこの一覧表を見ることができるし、もし今年の募集馬に「S評価」がいたら、それはけっこう期待されてもいい。

ということは今年ほとんどのクラブ募集馬は良くて「A評価」止まりだろうと思う。それが地方馬まで見たときに気がつく「S評価ポイント」の存在であり、その年の重賞勝ち馬でも4、5頭いればいい方で、しかもそれがG1勝ちや複数重賞勝ち馬に多く見られるというのだから、期待は高まる。

春までに10年分の種付けイベント調査、地方馬調査が完了すれば、もう少しはっきりしたことがわかるだろう。自然サイクル以外の馬もどうにかしたい。しかしこれらを一遍に今年のデータに詳細まで落とし込むかは微妙なところ。何も言わずに「S〜E評価」を変更してみようかなど(いじわるだな)、いろいろ考えている。

ちなみにこのシルクで勝ち上がった自然派以外の仔を調べたら、また新しい薬剤サイクルの扱いがわかるかもしれないね。

でもやっぱり2年前とは自分の視点が全然違うんだなぁ。新鮮な驚きと、配合の奥深さを感じずにはいられない。

▼重賞勝ち馬10年分の種付けイベント調査 途中経過とそのおもしろさ 2.1」への3件のフィードバック

  1. お久しぶりです。
    ドルメロさんがお元気そうでなによりです。
    さて、ちょうど雪の下のカマキリの卵といいますか、某大手牧場の未勝利馬(3戦以上)牡馬300頭、牝馬300頭、賞金上位300頭の自然サイクル、母馬の自然サイクルを調べている途中なのですが、だいぶ面白い事がわかってきたので、ドルメロさんには感謝にしてもたりないくらいです。
    今年は母系爆発に自分なりのスパイスを加えて挑みたいと思います。

    1. ガロまるさん、お久しぶりです。
      あはは、いよいよ雪の下のカマキリ卵、探してみましたか!

      私とガロまるさんの理論は違うかもしれませんが、この調査結果に何かあることは間違いないと思うんですよね。
      「自然派」のひとつの到達点が見つかりそうな、何かがね。

      ガロまるさんに負けないよう、これから私も春までも励みます。
      そうそう、ちょうど次回動画で少しだけガロまるさんの話を盛らせてwいただくので、どうぞご了承ください。

      1. どうぞお使い下さい笑
        昨年自然サイクルを知ってから、未勝利馬も調べないと真実はわからないだろうと思ってコツコツ調べていたので、雪の下のカマキリの卵の話はうんうんと納得して拝見させていただきました。
        ベースはある程度できていたのですが、より詳細なデータがほしくて未勝利馬をさらに追加したのと、母馬900頭ぶんの自然サイクルの調査と、楽しいながらも流石に大変で、ドルメロさんの日々の苦労に頭が下がりました。
        ドルメロさんの調査結果もとても楽しみにしてるので、お身体に気をつけて頑張って下さい。

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